「字」から自己肯定!筆跡診断士・渡邉宗一郎が挫折の末に見つけたものとは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第631回目となる今回は、筆跡診断士・渡邉宗一郎さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

渡邉さんは「書く」ことに出会い、自分らしさを受け入れられるようになったと言います。自分らしさへの自信を無にするに至った、これまでの挫折と「書く」ことを通じて変化した人生観について伺いました。

「字」から自己実現を考える!筆跡診断士とは

ーはじめに自己紹介をお願いします。

筆跡診断士をしている渡邉宗一郎と申します。

本業は派遣の自動車エンジニアとして車の工場で働きながら、副業で筆跡診断士として活動しています。

ー筆跡診断士とはどのようなお仕事ですか?

字に出ている個性を読み取り、その人が「どのように生きたいか」「どんな人間になりたいか」を字の書き方を通じて体現するお手伝いをしています。

その人のお名前をよく診断するのですが、名前を紙に書いていただくと、そこに「性格のくせ」や「特徴」が出てくるんです。字から見えてくるものには、それまでの習慣や生き方が重なってあらわれています。それを見て「あなたには、こんないいところがありませんか?」「こんなことをやりがちではないですか?」などをお伺いしていくようなお仕事です。

中学時代の挫折を糧に。受験勉強に捧げた3年間

ーどのような学生時代を過ごしていましたか。

受験勉強にのめり込んだ生活を送っていました。

近所に早稲田大学の受験に特化した塾があったのですが、母にそこで勉強してみないかと言われました。

実は中学時代に高校受験に失敗して、滑り止めの高校に入っていたんです。

中学時代も塾に通っていたんですけど、早稲田大学に特化した塾は、生徒の熱量や雰囲気がまったく違いました。

「ここでなら、次は志望校に合格できるかもしれない。」

そう思って高校1年生になる直前で塾へ体験入学し、高校3年間は受験勉強ばかりしていました。2年生の頃からは3年生のクラスに入って勉強させてもらえて、環境にもめぐまれていました。

ー受験時代に辛かったことはありましたか。

僕と同じように、2年生なのに3年生のクラスに混じって受験勉強をしている友達がいました。そいつがめちゃめちゃできるやつで(笑)。

僕も2年生から、3年生のクラスで勉強していたので、正直調子にのっていたんです。なのに同じテストを受けると、僕が3割しかとれなかったテストを、友達は6割もとれていて……。結構ショックを受けました。

受験の成功体験が、今度は挫折に?苦手から目を背け続けた大学時代

ー猛勉強の末、無事に早稲田大学に合格したと伺いました!どのような大学時代でしたか?

大学に入ったら結構遊んで過ごしていました……。マーケティングや会計など、ビジネスに関係することを学ぶ商学部に入学したのですが、受験の反動から全く勉強しなかったんですよ(笑)。

今となっては大学に入学してからが始まりだったと思うのですが、当時は大学名のブランドが手に入ったことに安住してしまいました。

大学2年生になるころには、授業のさぼりぐせもつき始めました。その時期から、ちょこちょこ単位を落とすように。

ー受験後は燃え尽き症候群になる人もいますよね。

受験勉強では、自分が好きな教科だけを受験科目に選択して苦手なこと、やりたくないことを避けていました。僕自身がやりたいと思っていたことをやった結果、大学受験はうまくいった。このように「自分は好きなことじゃないとうまくできない人」だという思いこみができちゃったんです。

歪んだ成功体験をもった結果、「ちょっとでもうまくいかない時は、自分の中から捨てちゃう」思考ができてしまいました。

ー「できないことは避ける」がくせになったのですね。

そのくせが決定的に出たのは、3年生でゼミに所属した時です。

「ゼミでやりたいことがある」というより「やらなくちゃいけないから渋々入った」状態で、あまり興味がないゼミに所属していました。先生の指導やなかなかクリアできない課題が出たときに「なんかやだな」「めんどくさいな」と思うようになり、結局途中でゼミを辞めてしまったんです。

その後就職活動もはじまり、いろんな会社の面接に行きました。やっぱり面接では「大学時代、何をしてきましたか」と聞かれるんです。でも、何も答えられなくて……。

ある時インターンシップの面接で、「実は先日ゼミを辞めちゃって」という話をぽろっとしました。すると面接官から「この先もこのままだったら、君は絶対うまくいかないよ」って言われたんです。

真っ向から人に否定された経験がこれまでなかったこともあり、かなりショックでした。しかし同時に「まさにその通りだ」とも思い、何も言い返せなくて。図星だったので、余計に落ち込みました。帰りの電車の中で泣いたくらいです(笑)。

そこから「自分は駄目な人間なんだ」と強烈に思い込むようになってしまいました。

目を背けるくせが招いた、新卒での退職と起業後の挫折

ー大学卒業後、新卒時代はどのように過ごしましたか。

就職活動は苦労しましたが、何とかご縁があってホテルに入社しました。でも、仕事がうまくできなくて。「今の仕事ができない自分」と「できるようになるための努力」について、心の整理ができませんでした。できてない自分を受け入れずに「自分の得意なことや好きなことをやらなきゃダメなんだ」と思い込んでいたんです。

また、その当時インターネットを使ったビジネスが流行しだしたころでした。ホテルの仕事がうまくいっていないこともあり「周りの人と違って自分が得意なことをしないと、自分は輝けない」という思いが大きくなりました。そしてホテルを辞めて、インターネットのビジネスで起業することにしたのです。

ー起業後のエピソードについて教えてください。

インターネットのビジネスをはじめた時は「サラリーマンでも1億円稼いだ」みたいなキラキラした面だけが見えていました。しかしはじめてみると、やっぱり大変でした。

コピーライティングの分野で起業したのですが、これまでコピーライティングの実績はありません。やはり実績がない中で、お客さんをとることはできなくて……。

何事も学んで実践して、うまくいかない部分は改善しないと身につかない。結果も出ないと思います。でも僕は、「もっと楽な方法はないか」「何とか上手く行く方法はないか」ばかり探していました。結果、借金ばかりが膨れ上がってどうしようもなくなっちゃって。そのときは「何やってるんだろう」と絶望しかありませんでした。

大学3年生ではじまった挫折から、25、26歳まで逃げるくせがぬけなくて。改善しなくてはいけないことを、放置したり目を背けたりするようになっていました。

今でこそ、大変な時こそ自分が伸びる要素があることや、乗り越えるべき壁なんだとわかります。ただ当時の僕はとにかく避けたかったのです。