DOKOSORE創業者・斉藤 開が見つけた働く目的 –「我慢」「格差」をなくしたい –

ユニークなキャリアを歩むU-29世代をお呼びし、これまでの人生の転機についてお話を伺うユニークキャリアラウンジ。今回は、東工大のエンジニア/デザイナーチームで受発注システムなどの業務ツールをフルスクラッチで開発し、ビジネス現場をサポートしている株式会社DOKOSOREの創業者である斉藤 開さんをお招きしました。

これまでのキャリアの歩みと転機を通して得た人との出会いについて、お話を伺いました。

 

会社経営を通して目指すのは、経済格差の解消

–自己紹介をお願いします。

現在、株式会社DOKOSOREを経営しています。役員3名、正社員4名、業務委託先20名程度の会社です。東工大エンジニアとビジネス経験豊富なデザイナーで構成されたチームによるソフトウェア開発支援を行っています。

グループ内には他に2つの会社があり、それぞれ小学校受験を支援するアプリ開発、BARの運営を行っています。

–会社運営におけるこだわりを教えてください。

3年前、会社の経営がうまくいかず、寝込んでしまった時期がありました。自分のこれまでの経験や周りに起きていることについて考えているうちに、世の中の「経済格差」を解消できる方法はないかと考えるようになりました。

「ベーシックインカム」も話題にあがっていますが、その方法では導入後に経済成長意欲を削いでしまうリスクがあります。生産性を生みながら、経済格差を解消できる方法はないか…。考えるうちに行き着いたのが、3つのキーワード「自動化」「マッチング」「未来予測」でした。

自動化とは、単純作業のオートマチック化。マッチングとは、間の業者や媒介をなくして直接繋がれるようにすること。未来予測とは、長期的な戦略を策定する際に必要不可欠な将来への見立てのこと。

正確な未来が予測できれば、良い戦略が策定でき、早い段階から投資や決断ができます。間の業者や媒介が減れば、少ないステークホルダー間でより多くの利益を分け合うことができます。単純作業が減れば、より生産的な仕事に時間を費やすことができたり労働時間自体を削減したりできます。それらを全て効果的に実装できればいいのではないかと考えました。

こうしたことを考えている人は他にもいるでしょう。技術やノウハウも既にあると思います。ただ、十分に実装されていないのが現状です。まずは、当社ができることから始め、「経済格差」の解消に貢献したいと思っています。

–具体的に行っていることはありますか。

従来の会社経営においては、上層部の一部の人たちが株式を持つ形でした。当社では、(当社に関わる)クリエイターや社員が株式を持てるようにします。そうすることで、株式を持った人は長期的なインセンティブを得られるようになります。加えて給与とボーナスもある状態にできれば、個々人がライフプランに合わせた選択を取れる環境を整備できます。

そうした整備を進めるためには、利益を生み出すための事業や組織が必要です。そこで、当社ではワンクリックで利益を生み出せる事業作りに取り組んでいたりクイックに対応できるサイズ(10名以下)の組織運営を行ったりしています。

 

学生時代〜起業の間で影響を受けた出会い

–幼少期について教えてください。

生まれは福岡県北九州市で、その後三重県に引っ越して過ごしました。通っていた小学校、中学校は校庭の裏がすぐ山林になっているような場所で、山の中に秘密基地を作って遊んでいました。山の中で自然薯を一生懸命掘っていたら夜になってしまい、心配した親が警察に通報してしまうなんてこともありました(笑)

授業中や学校内にはゲームを持ち込めないので、自分でゲームを考えて友人と遊ぶようなこともしてました。自分が持っていないゲームで友人が遊んでいるのを見かけた時は、見よう見まねで自作して遊んでいた記憶もあります。当時から無いものは無いと受け入れ、創意工夫する姿勢があったのだと思います。

–中学〜高校生の時期について教えてください。

中学卒業後は高専に進学しました。別の進学校に進む選択肢もあったのですが、1人では受験勉強に身が入らずモヤモヤしていたところ、先生が「高専への推薦枠がある」と声をかけてくれたことがきっかけです。

高専では40人程度のクラスに所属し、広範囲に影響する基礎知識とも言われる「材料工学」を専攻しました。

専攻を決めて入学してくる同世代にはやりたいことや軸がある程度見えている人が多く、接していて面白いなと感じていました。

–印象に残る人はいましたか。

在学中、高専祭の実行委員を担う機会がありました。高専祭実行委員は先輩からの推薦形式なので、自然と面白い人が集まる場になっていました。一学年上の先輩が本部長になったのですが、その人が印象に残っています。

(当時本部長になった人は)高専からの就職事例なし、新卒の採用もほとんどしていない…という状況でスターバックスに入社したような人でした。人間的な魅力があり、思ったことを実現するパワーのある人で。現在も、地元でカフェを経営し、若手やアーティストの支援を行っているそうです。「リーダーって、こういう人のことを言うんだ」と感じたのを覚えています。

–大学編入の経緯を教えてください。

高専在学中、CG制作に取り組んでいました。企業との取引も次第に生まれ、需要があることがわかってきました。

卒業後の進路を考えた際、はじめは三重県内での就職を検討していました。ディズニーランドの近くで働きたいと思い、東京での就職を考えるようになりました。就職先のコネクションを持っている学科長との関係がよくなかったため、就職経由で実現するのは難しいと考え、東京の大学に行こうと思ったのです。

–起業の経緯を教えてください。

東京工業大学に編入し、フリーランスとして働いていたところ、起業のきっかけがありました。

当時取り組んでいたVR制作において、まだ周りが気づいていない部分に着目していて、きっと仕事になると確信がありました。先輩や友人に話し、チームを組んで制作に取り組んでいたところ、「これは、法人としてやっていける」と感じました。その後、チームのメンバーと法人を設立し、資金調達を受けることも決まりました。

そのままうまくいけば…というところでしたが、チームが解散し、調達も断念せざるを得ない状況になってしまいました。会社だけが残り、力が抜け、これからのことをぼーっと考え続ける日々でした。会社経営におけるこだわりや目的を深く考え直した時期にもなりました。

–グループ会社設立の経緯も教えてください。

メンバーが再周結してから、受託開発を請け負いながら新規事業を試しました。「子育てや受験が大変」という声を聞き、現在のグループ会社が運営するサービスを生み出しました。また、「系列会社でビルを持ち、カフェなんか運営できたらいいね」と話していたところ、知り合いから「ビルが空くんだけど…」という連絡を急遽受けまして…。せっかくの機会だと思い、空いたビルでBARを運営する会社も立ち上げました。

3つ会社が存在していますが、それぞれの会社が完全に別のものというよりもコミュニティのようになっています。

 

我慢を前提として働くことをなくしたい

–今後実現したいことはありますか。

会社員として働く友人の話を聞きながら、我慢を前提として働くことをこの世からなくしたいと考えるようになりました。極端な表現かもしれませんが、大学のサークル活動くらいの雰囲気で働ける環境が良いのではないかと思っています。

会社としては、どの業界に対しても利益を与えられるようになることを目指しています。そのために、現在はさまざまな分野で受託開発の実績を残していこうと考え、取り組んでいます。

–同世代の読者へのメッセージがあればお願いします。

もし時間を巻き戻して、もっと若い時代に戻れるとしたら、まずお金を稼ぐことに時間を使います。

少しドライな言い方になりますが、小さな悩み事の一部はお金があることで解決できると思います。手元にある程度のキャッシュがあれば、広い視野でたくさんの経験を得たり時間をかけてやりたいことを考えたりできますよね。

 

取材・執筆=山崎 貴大