様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第957回目となる今回は、飯島夢(いいじま・ゆめ)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
社内社外問わずクリエイター・コピーライターとして幅広く活動されている飯島さん。現在の仕事を天職と思えるようになったきっかけは「思い込み」からだったそうです。そんな飯島さんの半生を、人生の転機を中心にお話いただきました。
社内と社外の活動の共通項は「先にいる人の反応や動きを想像する」こと
ーまずは自己紹介をお願いします。
飯島夢と申します。Septeni Japan株式会社で、コピーライターやクリエイティブディレクターとして、デジタル領域を中心とする仕事に携わっています。
社外でも多くの自主プロジェクトなどを経験しながら活動中です。本日はよろしくお願いします。
ー社内と社外の仕事内容について詳しく教えてください。
社内ではバナーやLP、 ブランドのEC展開をサポートするなど、デジタルを中心に幅広く仕事をしています。当社では、副業がOKなので、社外でも自分がやる意義があると思えるものであれば、積極的にトライしています。例えば、エンタメ系の舞台の宣伝をお手伝いしたり、知り合いの会社のタグラインやステートメント開発なども。
ー社内と社外での活動では、どんなところに面白さを感じていますか?
社内と社外での活動の中で、共通項を見つけ、相乗効果をもたせられるところです。意外にも根本的な考え方は同じだと思います。例えば、オンラインでもオフラインでも、その先にいる人の反応や動きを想像するところは変わらないですね。
自分が没頭できるかを軸に、哲学を専攻する
ーここから飯島さんの人生の転機を伺います。まず、上智大学の哲学科に進学されたのはなぜですか?
文系理系と線引きされてない学問を学びたいと思っていたからです。当時、文系や理系で分類されることに疑問を感じていました。
文系の学問でも数学的な考え方を必要とする場面はあるし、理系の学問でも読解力が必要なときがある。それなのに文系か理系かで分けられるのが、すごく嫌だったんです。
ー飯島さんが感じた哲学の魅力を教えてください。
哲学は「学問の根幹」とも言われていて、記号学や論理学など理系よりの側面や、文献を読み対話をしていくような、皆さんが想像する文系よりの側面もあったりします。文系と理系で区別されてない場所に思えたんですよね。
あと哲学には、さまざまな可能性があると感じていました。高校生のころ、とても尊敬していた数学の先生が哲学科の出身だったんです。「哲学を学んでからでも、数学の先生になれるんだ!」と衝撃を受けました。
ー実際に哲学科に入学されてイメージ通りでしたか?
ほとんどイメージ通りでした。ですが、ひたすら文献を読むというより、対話の時間が多いのは意外でした。「哲学対話」と呼ばれる、読んだ文献についての意見を交わす授業がたくさんあって。「哲学科ってこんなにコミュニケーションとるんだ!」と驚きました。
ー哲学科で学び、ご自身にどんな変化を感じられましたか?
文献の解釈をするために必要なグッと集中して考える力や答えの無い問いの前に対峙して、耐える忍耐力が身につきました。あとは、自分なりの解釈を相手にちゃんと伝える力もつきましたね。考える力と伝える力どちらもつき、哲学科を専攻してよかったなと思います。
ー大学生活を「学ぶ面」からすごく楽しまれている印象を受けました。
今後に役に立つかどうかで学部を選んでないからでしょうか。純粋に娯楽として楽しいと思える学問を選んでいました。
役に立つと思って、やりたくないことを選ぶと、結構しんどくなっちゃうと思うんです。いつか「なんでこんなことやってるんだっけ」ってなってしまう気がして。好きなことや熱中できることであれば、続けられる。「続けられる」ということが、才能であり、やる理由にもなるので、これらを軸に選んでみるとまた違うのかなと思います。
広告代理店に入社、営業職からクリエイティブ職へ挑戦
ーなぜ広告代理店に入社したのですか?
小さい頃から、クラシックバレエを習っていたのですが、広告の企画は、クラシックバレエと似ていて、面白いなと思ったからです。クラシックバレエのポーズや動作には、綺麗に見せるいくつかのパターンがあります 。パターンを守ることで、美しさが引き出せます。
その一方でどんなものに触れてきたか/何を美しいと思えるかが個性として踊りに表れる側面もあって。型と個性が重なってよいものが出来上がっている。実は広告も同じなんじゃないかと思って。
ー広告の企画のどのような部分がクラシックバレエと似ていると思ったのですか?
うまく自分の視点や経験が混ざり合ったときに、いい作品ができるところです。広告の企画にもだいたいの型があって、 先人たちがいろんな企画を実施してきています。ある程度、順序立てて考えていくと、面白いものや魅力的なものが出来上がるルートが用意されています。
ですが、決まった型を守るだけなら、自分がやる意味はないし、自分らしい企画とも言えないと思うんです。
ー入社後最初のキャリアは営業職からスタートしたそうですね。
営業部門に配属され、2 年半ぐらい働きました。営業の仕事はすごくやりがいがありました。そのまま営業を続ける道もあったと思います。
ーなぜ異動を決意したのですか?
理由は2つありました。
一つ目は、自分の将来について考えたことです。営業は、自分に向いていたと思います。ただこれは、自分が描きたい未来なのか、続けていける好きなことなのかと心の中で模索する自分もいました。
もう一つはある方に、「 戦略は正しいけど、形になったものがなんか違うよ」と言われたことです。その言葉が心にすごく響いて。
企画はやりたいことを戦略的に考え、それを制作物に落とし込む必要があります。たとえばクリエイティブ職は、企画のなかでデザインやコピーなど形にする工程が発生します。当時のわたしには、形にするスキルがなかったんです。試しに制作してみても、戦略を正しく落とし込めず、出来上がったものが企画の意図と少しズレてしまっていました。
ー鋭い言葉を受けて、どのように感じましたか?
企画を形にする力が足りないと自覚しました。そこで新しいスキルを身につけるきっかけをもらったので、感謝しています。
営業部門からクリエイティブ部門に異動するという新たな選択肢が生まれ、営業の仕事もすごくやりがいがありましたが、迷ったら変化の大きいほうへ。クリエイティブ職にチャレンジしてみようと思いました。