様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第134回目のゲストは、株式会社cotree(コトリー) COO・CN(note)O 平山和樹さんです。
ご自身がオーバーワークで体調を崩したことをきっかけに、メンタルヘルスケアの必要性を痛感。「もし友人が同じような境遇に立たされたときのために」と、カウンセリングサービスを仕事にしたいと考えた平山さん。現在は、オンラインカウンセリングサービス「cotree」でプロダクト設計の重役を担いながら、SNSを通じてカウンセリング文化を広めています。実は、事業に参画してまだ2年。短いスパンでPDCAを回し、仕事でもプライベートでも人を巻き込むエネルギーを発揮する平山さんの根源に迫りました。
cotreeで働く、密度の濃い時間
ー本日はよろしくお願いします!まずは、平山さんの自己紹介と、現在のお仕事を教えてください。
平山和樹です。オンラインで受けられるカウンセリングとコーチングのプラットフォームサービス「cotree」を提供する株式会社cotreeのCOOを務めています。cotreeは創業7年目の会社で、現在社員は5名ほど。マーケターやデザイナーのほかに、カウンセラーやコーチ(コーチングをする人)も所属しているところが特徴的です。ここ数年で一気に成長してきました。僕が入社して丸2年が経過したところで、COOとして、事業の意思決定やプロダクトの方針決めなどの役目を担っています。
ー少人数の企業だと、担う役割が変動的なことも多いかと思います。現在に至るまでに、業務の変遷はあったのでしょうか?
最初はマーケターとして動いていました。SEO記事を作成したり、流入数と登録者数を増やす施策を考えたり…。認知拡大するためのマーケティングを担当していたんです。そこから、マーケティング全体を見るようになり、広告運用やSNS運用も始めました。その後、事業をグロースするフェーズにはいったので、離脱率を下げてLTVを伸ばすことに注力していました。そうすると、根本のプロダクトを改善する必要性を感じ、UI・UXの見直しなどに関わるようになりました。
「今のcotreeの魅力はなにか?もっと良くなれる部分はどこか?」それを日々追求していくことで、気付けばプロダクトの意思決定を任されていた、という感じです。
ーcotreeというサービスに、様々な側面から向き合ってきていることが分かりました。ただ、まだ入社されて2年しか経っていないんですよね?
はい。マーケティング全般を見るようになったのが入社して2か月、プロダクトに関わるようになったのが入社して4か月経った頃でした。2年目からは、メンバーのマネジメントもするようになり、徐々にCOOらしい仕事が増えてきたかな、と思います。
ーものすごいスピード感ですね。会社の体質なんでしょうか?
cotreeは、私から見てもとてもピュアな会社だと思います。まだまだ規模としてはちいさい会社なので、社内政治などなく、気を遣うことや忖度を用いることがありません。それは、事業やプロダクトをよくするためのコミュニケーション以外がいらない、ということでもあります。純粋に事業に向き合う時間が長いんです。
8時間働き、8時間みっちりと事業のことを考えられる。働いている間、プロダクトをよくするためのディスカッションや、ビジョンの追及をずっと行っています。密度がかなり濃いんです。これが当たり前となっていますが、社外から見ればスピード感があるように思えるかもしれません。
コンテンツは、作ったからには届けたい
ー平山さんはSNSでの発信も活発ですよね。前からそのような活動はされていたのでしょうか?
いいえ、Twitterでの発信もここ2年ほどです。cotreeに入社する少し前に変化があったのかなと思います。それ以前は、ずっとひとつのことに注力し、休日の境もなくそればかりしていました。
その頃も自分が面白いと感じること、好きだと思うものを選んで集中していましたが、今は、もっと選択肢が増えました。会社としての仕事だけじゃなくて、SNSでの発信活動や、そこを土台にした企画など、様々なことに関わっています。SNSを通じて、友達が増えたんです。僕や、僕がしていることを面白がってくれる人と、いろんな遊びをしている感覚でいます。
GWだけど自粛生活でやることがなく始めた「#ひらやまラジオ」、カメラを買ったことをきっかけに毎日100枚の写真と3か月撮り続ける「#毎日100枚」など、SNS発の様々な企画を、やりながら練っています。大体、思いつきです。が、マーケター気質なので、コンテンツを作ったらきちんと届けたい。はじまりは些細なことでも、しっかりPDCAを回し、届けていきたいと思っています。
ー様々な企画をされていますが、共通して大事にしていることはありますか?
「僕とあなたでなにをしようか?」という姿勢を大事にしています。僕だけが得をしたり、相手に奉仕したり…そういうのには興味がないんです。共通のビジョンを持って、どんな面白いことができるのか。そういう企みができる場づくりがしたいです。
ー働く上で大事にしていることにも通じているのでしょうか?
働いているうえでも、周りへの目線というのは持っていますね。僕個人と、会社と、社会と、それぞれにとってよいことをする。「三方よし」と言えるような仕事をする、全部大事にすることを妥協しない。僕の周りにいるみんなにとってもいいし、世の中的にも喜ばれるし、僕がやりたいと思っていることを仕事にする。そういう想いを大事にしています。
競争の世界に身を置く
ー平山さんが現在に至るまでの成長の過程を聞かせてほしいです。学生時代はどのように過ごされていましたか?
負けず嫌いの頑張り屋、そんな子どもでした。運動と読書が好きで、物心ついた頃から絵本を読んでいて、中学からはじめた軟式テニスはその後10年も継続していました。スポーツを始めたことで、勝ち負けの世界に染まっていきました。誰よりも練習をし、上達していくのが楽しくって…。振り返れば、あの頃からPDCAを回していくという習慣が身についていたのかもしれません。
ー大学では農学部に進学されたそうですね。現在のお仕事と全く異なる分野なので驚きです。
人間に興味があって、身体やこころのことを勉強したいと思っていたんです。それで、最初は医学部を志望していました。しかし、全く学力が及ばず…。実家が農家だったことや、高校の先輩が多く在学していたことから、茨城大学の農学部へ進学します。
大学でもテニス部に入り、ストイックな生活を3年間続けました。4年になって就活を始めたとき、農学部の進路が銀行、公務員、食品関係のほぼ三択であることを知り、あまりの選択肢の狭さに愕然としたんです。農業研究の道も考えたものの、農業は大体1年スパンで計画が進行するので、PDCAを多くても人生であと40回あまりしか回せません。農学部にはまったり、のんびりした空気が漂っていましたが、僕は「若いうちはもっといろんな経験をしたい」と考え、挑戦し、自分の可能性を拡げる環境としてベンチャー企業を視野に入れ始めました。
ー農学部生がベンチャー企業に。大きな方向転換ですね。
周りにそのような選択をする生徒はひとりもいませんでした。僕がその選択肢にこころ惹かれるようになったのは、『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』という本を読んだことがきっかけです。その本でイノベーションを起すことに対しての魅力を感じ、ビジョンやミッションを掲げて社会をよりよくしようと働きかける会社に関心を抱いたんです。
そして、株式会社クラウドワークスでインターンを始めました。当時、クラウドワークスはまだ15名ほどの会社。お問い合わせフォームから、「どうしても働きたいんです!」という思いの丈を綴った長文のラブコールを送りました。それが現在の副社長の目に留まって面談に進むことが叶い、インターン採用されたんです。当然、茨城在住だったので、朝の6時に家を出て、30分かけて車で駅まで行き、そこから電車で1時間半かけて渋谷のオフィスに…それを週4日の生活。相当忙しかったですね。
ークラウドワークスを選んだのはどうしてですか?
起きている時間の半分は仕事にあてますよね。そう考えると、仕事ってとても重要なものです。なるべくその時間をいいものにしたいと願うのは当然のこと。クラウドワークスは、いつでもどこでも働ける文化を作っていて、仕事を創出している会社。さらに、ビジョンとミッションに惹かれて、ここで働きたいと思うようになりました。
ークラウドワークスではどのような業務を行っていたのでしょうか?
クラウドワークスにはインターンからそのまま就職し、計4年間在籍していました。最初は法人向けの制作進行ディレクター。それが2年ほど続き、その後、Webマーケティング、ディレクションもできる営業、新卒担当のマネージャー、新規事業の立ち上げ…と、半年ごとに業務が変化していきました。
メンタルヘルスケアをもっと手軽にしたい
ー幅広い経験を積むことができ、現在の業務カバー力の高さにつながっているんですね。退職されたのはどうしてですか?
単純に、働き過ぎでした。やる気に身体がついてこれなくなってしまったんです。大きな違和感は、自分の気持ちが分からなくなったことでした。楽しい、や、嬉しい、といった感情が湧かなくなったんです。休職期間を経て、退職し、その後の半年間は仕事はなにもしていませんでした。
「まずは生きよう」と思って、ご飯を食べ、睡眠をとり、運動をして…。そういう原始的な行動を繰り返し、すこしずつ生きる気力を取り戻したんです。肉体的に回復をしてから、それまでやりたくてもできなかったことに着手しました。
海外旅行に行ったのがよかったですね。価値観の相対化を体感し、文化が変われば生活も変わるんだと気付いたことで選択肢が拡がりました。日本だと、退職をするとそれまで積み重ねてきたことが全否定されるような感覚を覚えます。しかし、海外へ出たことで「日本という国の、たまたま入社した一社で、たまたまうまくいかなかっただけ」と捉えなおすことができました。そのおかげで、ずいぶんと楽になりましたね。
ーご自身の回復期間をゆっくりと過ごし、そこから再び働き始める間には、どのような変化があったのでしょうか?
改めて、やりたいことを考えていたんですよね。部活時代の仲間や、身近な友人なども、頑張っている人がたくさんいて、見るからにオーバーワークでした。そういう人が困ったときに、なにかできる自分でありたいなと思ったんです。また、僕自身も再発を防止するために知識をつけ、対策を講じる必要性を感じていました。
メンタルヘルスケアの重要性を身をもって知った上で、「もっと手軽にカウンセリングが受けられるサービスがあればいいのに」と調べます。しかし、なかなかよいものに出会えず、「ないなら作ろう」と思い至りました。
ー最初はご自身でサービス作りをすることを視野に入れていたんですね。
まずはセラピストやカウンセラーの勉強をすることを考えました。しかし、その立場だと提供する数に限界があります。せっかくWebマーケティングのスキルを持っているのだし、1から臨床の勉強するよりも、既にある経験を活かして、必要なプロダクトをグロースするほうが適任だと思いました。
そんなときにcotreeを知りました。僕のやりたいことを抽象化すると、cotreeの事業と重なったんですよね。運営している人たちを信頼できるなと感じたこともあって、入社を決めます。
ー環境の変化はありましたか?
スポーツをしているときや、前職で働いていたときは、勝ち負けの世界にいて、闘争心を燃やす必要がありました。いまは全く異なりますね。ひとりひとりがひとつの役職を担っていて、ひとりだけだと完結しない仕事をしています。みんなで同じプロダクトのことを考える。それゆえ、同じ方向を向けているな、と実感できていますし、これこそ仲間でありチームだなとも思えています。
この感覚は、働いてきた2年間で大事にしてきた価値観のひとつですね。会社だけではなく、友人とも、こういう関係性が作れれば嬉しいです。
カウンセリングやコーチングの枠を拡げる
ー現在、精力的に活動している平山さん。今後の展望を教えてください。
プライベートではアドレスホッパーとして生活をしているんです。拠点をもっと増やしたいなと考えています。オンラインで働くことが加速したので、なおさら、場所に囚われずに全国各地に帰る場所を設けたいです。
cotreeとしては、使用してくれたユーザーさんの声を伝播させていくために「cotreeお茶会」などの活動をしています。カウンセリングやコーチングは、ユーザーの使用感がすべて。僕らの解釈を入れない形で、ユーザーさんからユーザーさんへ、感想が伝わる流れが生まれれば理想的だと考えています。
そのさきで、ブランドとして、カウンセリングやコーチングという枠が拡大するような存在になりたいです。偏見を持たれている方もいらっしゃると思いますが、そんな方にも「cotreeだったら使おうかな」と選ばれる存在になってほしい。そのためにも、cotreeのチームとしてのブランディングに注力していきます。
ー平山さん、そしてcotreeの、社会や周りの人々へのポジティブな影響を今後も見守りたいと思います。本日はありがとうございました!
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取材:高尾有沙(Facebook/note/Twitter)
執筆・編集:野里のどか(ブログ/Twitter)
デザイン:五十嵐有沙(Twitter)