よい悪いではなく、ただ自分の人生を感じて受け入れる
ー生と死に対する意味付けを疑い、このままでいいのかと感じたということですね
はい、そうです。自分とベトナムの人たちを比べて「私って恵まれてるな」と思うのも失礼だなと思いました。恵まれてるとは限らないし、比較するのは違いますよね。
この人たちのため何かをしようというのもエゴな気がする、でも何もしないのも違う。葛藤の中で、「今、命がここにある」という事実だけが唯一の平等だと感じました。自分の人生を全うすることしか私にはできない。「生きる意味とは自分であること、以上」と少しずつ思えるようになりました。
「自分とは何か?」という問いに対しては「私が感じているものが自分を自分たらしめるものだ」という結論に至りました。それならば私が感じるものは大事にしないといけないなと思いましたね。
ー新しい価値観が生まれてからは、どんなことも受け入れられるようになりましたか?
受け入れられない状態があってもよいということを、受け入れられるようになったと思います。
小さい頃に体調が悪くなったことも、ただ体の反応として出ただけで、ポジティブなことでもネガティブなことでもないということに気づきました。感じること自体は受け入れていいし、肯定していいものだなと。
ーお話を聞くと多くの自問が出てきましたが、答えを見つけるためのポイントはありますか?
人とよく話すことと、抽象的な回答を持っていそうな人に相談したりすることですね。
そのような人たちに相談すると、自分の思考では至らなかった観点からコメントをもらえることがありました。例えば「世界を存分に感じたいし、味わいたい一方で、カビとか怖いもの・嫌なものがあるんです、どうしたらいいと思いますか?」とデザインスクールの先生に相談しました。
その時の回答は「すべてのものを美しいと思う誰かがいることに思いを馳せてみる」です。
「山内さんが嫌いだと思ってるものでも、世の中には「美」として捉える人もいるから、必ずしもすべてを自分の中に吸収して受け入れる必要はない」とコメントをもらい、そういう観点もあるんだなと思えました。
物事を考える軸として「よい」「悪い」ではなく、美しいと表現することもいいなと思いました。
自分と向き合い感じた中心部にある“オレンジ”
ーベトナムのほかには大きな出会いや経験はありましたか?
インドに2回訪問したことです。
1回目は一人旅でいきました。生きるエネルギーが溢れる場所だと強く感じました。普段の生活だと情報が溢れていて、たくさん考えることがあるけど、インドの人たちは精神・生命に近いエネルギーで強くシンプルに動いてるなと。
「いろいろ考えていたけど、深く考えなくていいか。ただ生きるだけだな」と思えましたね。
ー生命力を溢れさせるためにはどんなことをしたらいいと思いますか?
1番身近な生命であり、自然である自分の肉体を存分に味わって、感じて、観察して、受け入れることかなと個人的に思っています。
今のこの自分で生きている感覚や「足ちょっと痛いかも」「今日元気かも」など、肉体・自分に意識を向けて客観視することができたら、生命力を味わいながら生きる感覚に近づくのかなと思っています。
ー2回目にインドにいこうと思われたのはなぜですか?
1回目で惹かれてしまったという理由とヨガを学びたかったからです。せっかくならインドでヨガインストラクターの資格を取ってみようと思い立ちました。
1ヵ月間、朝の6時半から夜の8時半まで瞑想やポーズ、座学を繰り返す生活。瞑想も多く、落ち着いて自分と向き合う時間を過ごせました。
ー自分と向き合うことで、何か得られましたか?
感覚的なものがありました。体の中心部にマンゴーのようなオレンジ色の球体がある感覚です。本当にあるわけではないけど、あたたかいものがある。
言語化すると「自分の両親とか周りの人とか、いろんな人に愛情を注がれて育った」「だからこの先、全部裏切られるようなことがあったとしても、もう折れない」「この先何があっても私には温かい場所があるし、帰ってこれる場所がある」というあたたかい気持ちです。
ーその感覚の気づきがグラフィックレコーディングの”その人らしさの色”の部分に通じますか?
そうだと思います。あえて言葉をつけるなら「温かい・愛・幸せ」だけど総称してオレンジ色。「マンゴーみたいな」「太陽みたいな」オレンジです。そういった言語化できない領域に触れたいと思いますし、感情や思いを絵にしてこれからも寄り添っていきたいなと強く思っています。
ーこれからもぜひ続けてほしいです。
はい。あともう一つやってみたいことにグラフィックコーチングの活動があります。概念を広めて、自分も活動をしていきたいです。子どもや経営層の方を中心に、より言語化できない領域に寄り添っていきたいです。
前に進むために直感と理性は対立するものではない
ーこれからどんな未来がきてほしいですか?
就職する時に考えていたことと同じですが、自分の周りや自分が存在を承認されるような環境・社会が作られたらうれしいなと思っています。
どんな感情もどんな人もまずは受け入れられる。その上でやってよいこと、悪いことが判断される世界になってほしいです。みんなが帰ってこれる場所・空間、人や繋がりがあったらよいなと思います。私は少なくともそういう人でありたいです。
ー今悩まれている人にあかりさんからアドバイスをお願いします
「直感や今感じるものに目を向けて、もっと大事にしてもいいんじゃないかな?」という問いかけをアドバイスの代わりに送りたいです。
ー理性的に考えてしまう人も多いと思うのですが、直感を大事にできる方法はありますか?
直感と理性で、それぞれが持っている正解が違う場合はありますよね。私は理由がないことのほうが強いと思っています。
論理的に「こういう条件があるからいい」に対して、直感的に「何も理由はないけどいい」。条件はひっくり返せるけど、理由がないものはひっくり返せないですよね。無条件でよいと思うもののほうがよいに決まっていると思いませんか?
直感と理性は対峙するものではなく、役割が違うと思っています。何かをやりたいと思う決断をするのは直感で、決断したことを具体的にどう実現していくかを考えるのが理性の役割です。
「役割が違うから分担を適切にしてあげたら、両方の力を使って自分の考えている方向に進めるからとてもいいよね」と思います。
ーありがとうございました!あかりさんの今後のご活躍を応援しております!
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取材:緒形航(Facebook)
執筆:みぞた(Twitter)
編集:松村彪吾(Twitter)
デザイン:安田遥(Twitter)