「まずは”ギバー”になれ!澤円が教える20代のキャリアのつくり方」

ユニークな価値観を持つ29歳以下の世代(U-29世代)のためのコミュニティ「U-29.com」が運営する月イチイベント『U-29 Career FES』。

第1回目のゲストは「プレゼンの神」と呼ばれる日本マイクロソフトの澤さんです。

これまで一流のキャリアを築いてきたように見えますが、業界未経験スタートで”ポンコツ”な20代だったそう。それでも心がけていたのは「人に”ギブ”すること」と語る澤さんに20代のキャリアのつくり方を伺いました。

ポンコツ時代から「プレゼンの神」になるまで

ーIT業界のキャリアを歩まれてきた澤さんですが、どのような新人時代を送られていたのでしょうか?

僕は経済学部出身で、未経験でプログラマとしてキャリアをスタートさせました。実はその前に他業種で内定が決まっていましたが「何か違うなぁ」と悩み年末に内定を辞退し、年始から就活を再スタートさせたんです。

ーどうしてエンジニアの道を?

「何になりたいんだろうなぁ」って考えたとき、映画「007」で主人公ジェームズボンドのために武器を開発する”Q役”になりたいって思ったんです。

実際、僕は一流のエンジニアになれた訳ではないですが、IT業界の知識を使ったキャリアを築いてきました。1995年にWindows95が発売されPCが普及ししたとき、3年間のエンジニア経験が活きました。誰もがPC初心者の中、僕は世の中の人が知らないPCのことを知っている側の人間になったんです。運よく、みんなが知らないことを知っている状態になりました。

ーその後、転職もされましたが「プレゼンの神」と呼ばれるまではどのような経緯があったのでしょうか?

社会人5年目にヘッドハンティングでマイクロソフトにITコンサルタントとして転職し、カゴメのシステム構築を偶然担当しました。当時、カゴメで使用していたシステムを僕も前職で扱っていたいたからこその任命だったんです。そのシステムとマイクロソフトのシステムの両方をわかる人間が、当時の社内には僕くらいしかいなかったのでラッキーでした。

そのプロジェクトが、新聞に掲載されるくらいの成功例となりました。その頃から人に何かを伝えることが得意だと自覚するようになったんです。

「迷ったらやってみる」。 20代のキャリアのつくり方

ーご自身の強みに気づいたのはいつ頃なんでしょうか?

ちゃんと実感するようになったのは30代ですね。マイクロソフトでは公式イベントの際にプレゼンに対する参加者のアンケート結果から出された全順位が発表されるのですが、何度も1位に選んでいただいたんです。

各界のトップの人たちの話は、地頭がいいが故に他の人にとってわかりづらいこともありますが、自分がIT未経験で右も左もわからなかったからこそ、説明力がつきました。皆にわかりやすいように喋れるんですよね。

ー引き寄せの法則とも言いますが、カゴメのプロジェクトの任務など、どうやったらその偶然を引き寄せられるのでしょうか?

やる、やらないで迷ったらやることですね。20代、30代は体力があるので病気にならない程度に無理をしておくのはいいと思います(笑)。

「やりたいことがわからない」と嘆く学生もいるけど、何でもいいんです。自分の趣味でも、好きな人がやっていることのマネでもいい。とにかく興味範囲を広げておくことがオススメです。インターネットは僕の知的好奇心を強く刺激するものだったので、ローンでPCを購入していじり倒しながら知識を蓄えていきました。

ー20代からいいキャリアを築いていくコツはありますか?

3分野のキャリアを作ることですね。3点以上の立脚点があると安定します。僕の場合は、IT、プレゼンテーション、マネジメントですが、IT業界のことを知っているからこそ、IT×プレゼンなど掛け算ができるんですよね。

スタートはエンジニアでしたが、一流のITエンジニアとして道を極めるのではなくIT業界のその時々の最新テクノロジーのキーワードに乗っかる形でキャリアを歩んできました。

コンビニのお礼から!小さなことでも”ギブ”せよ

ーキャリアを築く上でも、圓窓など新しく何かを立ち上げる場面でも、周りの人を巻き込む必要があると思うのですが、周りに人が集まる方の特徴は何かありますか?

人に何か貢献していることですね。ホリエモン(堀江貴文)さんがいい例で、彼って人にギブすることへのハードルが低く、抽象的な物事を具体化するのが上手いから、周りに人が集まるんですよね。

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』で述べられているのですが、世の中には、ギバー(人に惜しみなく与える人)が15%、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)が15%・マッチャー(損得のバランスを考える人)が70%いると言われています。この中で成功者になり得るのは、ギバーなんですね。

ー成功するギバーと失敗するギバーの違いは何でしょうか?

自己犠牲があるかないかですね。自分を大切にせずに生きる人は、搾取される側になってしまいます。”ギブ”と言うと大げさに聞こえがちですが、「これ美味いんだけど、お前も食う?」って、自分が食べておいしいものを相手にシェアする感覚ですね。

プレゼンって「プレゼント」と同じ語源であるように、聞き手への贈り物なんです。GiveFirstで、まずは見返りを求めず何かを与えることがギバーになり成功するための近道です。

ーギブできる人の特徴はありますか?

小さくてもいいので、具体的なアクションがあるかどうかですね。皆さんは、いつもコンビニのレジで笑顔でお礼を言ってますか?もしくは、電車に乗った時に困っている人がいるかどうか見渡していますか?

僕は店員さんに笑顔で返すことと電車で困っている人がいたら助けることを習慣にしています。電車の降りるベビーカーの方がいたら、先に降りて手伝うんです。それを習慣にしていると、本当に何かにチャレンジしようと思って一歩目を踏み出すとき、躊躇がなくなります。誰かのために貢献することに常に心掛けていますね。

コンビニのお礼も、電車での気遣いも、ぜひ今日から実践してみてください。

△「最初は面倒かもしれませんが、常駐タスク化するので当たり前になってきます」(澤さん)

ー澤さんのそのような習慣は、何かきっかけがあって始めたのでしょうか?

はっきりとは覚えていないですね(笑)。おそらく、ベビーカーの電車の乗り降りを助けてたり、盲人の方をエスコートしたりしてすごく喜んでもらったことが、だんだんに積み重なったんだと思います。僕ってエポックメイキングな1つの大きい原体験がある訳ではなく、膨大な失敗と小さな成功体験の積み重ねが時間をかけて成り立っている人間なんです。小さな積み重ねで今の自分がありますね。

ー仕事でギバーになるためにできることは何かありますか?

「何か手伝おうか?」って聞くことですね。英語だとHow can I help you?ですが、まさにギバーの言葉です。強制的な意味合いが含まれる助け合い精神とは少し異なります。小さくてもいいので、相手に”与える”ことから始めてみてください。

失敗の話に付随しますが、仕事で失敗したとき「何でできないんだ」とWhyを尋ねるマネージャーがいますが、心理的安全性をなくすのであまりよくありません。それよりも、「何が原因だった?」「何が邪魔だった?」「なんか手伝えることある?」ってWhatで聞く方が重要です。

日本ってマネジメント後進国だと僕は思っています。マネジャーのことを管理職と日本では呼びますが、「管理」は英語では「アドミニストレーション」「オペレーション」の方がしっくりきます。つまり、個別のタスクを指してるんですよね。マネジメントの奥深さを表現する日本語の対訳がないと僕は感じています。

1つでもうまく行かないと全部失敗と捉えてしまう減点主義の思考から解放されて、打率3割くらいを狙えば十分です。のちに大きなリターンとして自分に返ってくるので、ぜひ小さな”ギブ”から始めてみてください。

澤さんのキャリアについての話をもっと知りたい方はこちら!著書『あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント

(取材:西村創一朗、写真・デザイン:矢野拓実、文:鳥井美沙)