興味を持ったらまずやってみる!プロソフトテニス選手・船水雄太に聞く一歩踏み出す勇気

世界最強の実業団から、プロ選手として独立を決意

ーNTT西日本で日本リーグ連覇も達成。ソフトテニスに打ち込める最高の環境にいたにもかかわらず、なぜ独立しようと?

NTT西日本在籍中に日本リーグ10連覇を達成した際に、スポーツ業界でも前人未到の偉業を成し遂げたと自負していた成績に対して、世間の興味関心が低すぎると感じたことがきっかけでした。

他のメジャースポーツであれば、世界選手権やアジア大会で勝つとメディアで取り上げられたり、業界の外での発信が強くなったりするのですが、ソフトテニスの場合はそれが全然なくて。この状況ははまずいと感じました。

ソフトテニスをする子供たちに未来を感じてもらえる世界を作らなければいけないと思い、プロ選手として独立して道を切り拓いていこうと決断しました。

ー実業団を離れることに迷いはありませんでしたか?

大手企業でソフトテニスに集中できる環境を手放すことに、周囲からは「一体どうした?」とたくさん聞かれましたし、僕自身も迷いました。

僕は子どもにソフトテニスを教えるのが好きで、「ソフトテニスを長く続けてよ」と話すのですが、子どもたちにソフトテニスを続けてもらうためには、テニスを続けた先の将来に広がりがないといけないと思うんです。

ソフトテニスを頑張ったらテレビに出られるし、さまざまな活動ができて生計を立てられる。ソフトテニスといえば船水と覚えてもらえるように頑張って、子どもたちの目を輝かせ続けられるような活動をしなければという使命感から独立を決めました。

ー独立した当時、プロのソフトテニス選手はいなかったそうですね。

僕が独立する1年前に弟が独立していたものの、ゼロベースからのスタートでした。最初のうちは自分の構想を形にしたり、他業界の関係者やアスリートからアドバイスをいただいたり。アスリート活動をしながらエースマネジメントという会社も立ち上げました。

一歩さえ踏み出せば二歩目は軽い。難しい挑戦を続ける価値

ー船水さんが起業した「エースマネジメント」は、どんな活動を行う会社ですか?

ソフトテニスで人生を豊かにするという企業目標のもと、選手と企業や行政がWin-Winの関係でソフトテニスをビジネスとして盛り上げられる活動をおこなっています。

2020年には日本初となる賞金200万円をかけたソフトテニスの賞金大会を企画し、ソフトテニス選手が対価として報酬を得られる仕組みを作りました。クラウドファンディングでは合計約1000万円の資金調達を実現し、業界に波を起こせたと思っています。

誰もやったことがないゼロの状態から新しいことに挑戦するのが僕たちの使命だと思っています。堅いことをやるだけなら独立した意味がない。僕たちがはじめたことに他の人が追随して、うまくお金が回る仕組みを作りたいです。

ーソフトテニス業界を変える大きな夢を実現できるか、不安になることはないですか?

不安なことばかりです。応援してくれる方はたくさんいますが、業界内での相談相手は少なく孤独を感じます。

一歩を踏み出して突き進んでいると、後ろを振り返るのが怖くなることがあります。でも、あえて逃げられない状況を作ってその道に挑戦してみるのも面白いですよ。

ーなぜ、ハードなほうに向かって頑張れるんですか?

好奇心や使命感に駆られて働くのが楽しいからです。学生時代から、ソフトテニス日本代表になったことで新たな夢が生まれ、次の夢を叶えてもっと大きな夢が生まれてきたので、大きなものに挑戦したくなるのは病気のようなものかも(笑)。野心的で心がひりつく感覚が好きなんです。

20代は難しい経験にこそ価値があると考えゼロをイチに変える挑戦を進めてきて、今ではスポンサーをはじめ色々な人が僕たちの会社の船に一緒に乗ってくれています。

「早く行きたければひとりで行け。遠くまで行きたければみんなで行け」という言葉があるように、向こう10年でのソフトテニス全体の盛り上がりをみんなでシェアしたいからこそ、アスリートと経営者という二足の草鞋を履いて頑張っています。

ー船水さんが、一歩踏み出せる原動力は何ですか?

僕は実業団から独立したときに初めて一歩を踏み出したのですが、とても重たい最初の一歩を踏み出したときに「あれ?あとは軽いぞ」という感覚があったんです。その後はいろいろな挑戦がうまく回っていきました。

20代の挑戦は、人生後半で思うように身体が動かなくなった時の頭の筋肉となって人生後半を豊かにするもの。先入観や思い込みにとらわれず、一歩踏み出して今やれることを全部やったほうがいいと考えています。

ーなかなか一歩踏み出す勇気が出ないU-29世代の読者にアドバイスをいただけますか。

何かやってみようと悩んだときはまず一歩踏み出してほしい。2歩目や3歩目まで進んだときに自分に合っているかを見直せばいいんです。

頭の中で考えたことを行動に移さず、頭の中の構想で終わっている人が意外と多いのではないかと思います。でも、20代の大きなエネルギーを内に秘めたままで終わるのはもったいない。挑戦した人を羨ましがりながら生きることにならないよう、まずは興味あることからチャレンジしてほしいと思っています。

ーありがとうございました!船水さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:和田晶雄(Twitter
執筆:石崎リカ(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter