様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第791回目となる今回は、髙橋 諒子(たかはし・りょうこ)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
幼少期の頃の将来の夢を叶え、大工として働く髙橋さん。学生時代のエピソードや、現在のお仕事、今後の目標などをお話していただきました。
ものづくりが好きで、職人を目指し始める
ー簡単に自己紹介をお願いいたします。
髙橋 諒子です。神奈川県湯河原町の「株式会社杢巧舎」という工務店で、大工をしています。伝統工法の住宅や古民家改修、材木の製材などに携わっています。
ー学生時代、進路はどう選択されたのでしょうか?
手を動かすのが好きなのと、勉強が苦手で(笑)。母から勧められ、ものづくりの高校に進学しました。3年間ひたすら木を触って、寮生活を送るのが楽しそうだったんですよね。
それまでは大工の夢も漠然としていたので、とりあえず設計を学んでみようかと考えていたのですが、この高校を知って、職人の道へ進もうと決めました。
家具や絵を描く実習が1週間の半分以上ある特殊な高校で、いろいろなものを創造できて楽しかったですね。
ー寮生活だったんですね。
はい。北海道で1番人口が少ない、700人くらいしかいない村にあって、村おこしのために作られた高校だったんです。住民票を村に移して、村の人と生活していました。寮生活も自分達で自治する、寮生会という団体があって。共同生活のルールをみんなで話し合いながら決めていきましたね。
わたしはもともと人と関わるのが好きで、常識や「当たり前」という言葉が好きではありませんでした。暗黙の了解に従うことには違和感を持っていて、変えたいという思いもあったので、副寮長になって、ルールの改正を頑張っていましたね。この副寮長と、学業の両立は難しかったです。
2年生になると、村の人のためにものを作るプレゼンをして、ものづくりをして、実際に使ってもらうまでの一連に取り組む授業がありました。村の人とのコミュニケーションには、寮生活で培った力も生かされましたね。この授業がきっかけで、人と近い距離でコミュニケーションをとって、人のためになるものを作れる大工になりたいと感じました。
ー高校卒業後はどうされたのでしょうか?
大工の修行期間は10年と言われていたので、就職は早いほうがいいと思い、就職先を探していました。見ず知らずの大工さんに連絡して、現場見学をさせてもらったこともありました。
いろいろと見ていましたが、進路を決める上で、働く覚悟がまだできないと感じました。当時は、家具造りや設計なども自分でやってみたい気持ちがあったので、とりあえず資格を取れる学校に行こうと思い、4年制の専門学校を志望しました。
専門学校に入った後は、設計の間取りを考えたりデザインしたりしました。図面を書くことが多くて、わたしは考える仕事より、手を動かす方が合っていると感じました。他にも建築の歴史の面白さや木組みの面白さを教えてくれた先生がいたことから伝統工法の大工に興味を持ち始めました。
親方との出会いで、わたしの進路が決まった
ーそこからの進路はどのように決めたのでしょうか。
20歳のとき、はじめての一人旅に出て、大工としての修行先を探しに行きました。今の会社もこのときに見学に行ったんです。
北海道を出て、滋賀や静岡の工務店など、4社くらいを回りました。
印象に残っているのは、テレビ番組で取り上げられたこともある女性の大工さんに会えたことですね。観光案内してもらったり、修行の大変さを教えていただきました。その会社の親方に「大工に師事するなら親方で選びなさい、ついていきたいと思える人を直感で選びなさい」と言われたんです。この言葉がきっかけで、今の会社を選びました。
今の会社の親方は「男も女も関係ない」と言ってくれて、女性が大工になるのは珍しいと思っていたわたしも安心できたんです。親方は厳しい面もありつつ、お茶目な面もある方ですね。お客さんのことを常に考えつつ、自分のやりたいことを曲げずに持っている、素敵な方です。
ー大学は中退されたのでしょうか?
専門学校3年生のときのインターンシップで今の会社に入って、実際に作業させてもらいました。わたしとしては、このまま大学生活を送って、卒業して働こうと思っていたのですが、インターンシップが終わった後、親方に「このまま大学をやめて働けば?」と誘われたんです。
当時は二級建築士の合格発表待ちで、持ち帰って答えを出させて欲しいと頼みました。その後、二級建築士に無事合格して、大工には学歴も必要ないですし、やりたいことも見つかっているので辞める決断をしました。
葛藤も周りからの反対も特になかったですね。親からもあっさりと「いいんじゃない?」と言われて拍子抜けしました(笑)。自分に正直に生きていいんだなと思いましたね。
ー実際に働き初めてどうでしたか?
就職して半年は、親方の家に住み込みで働いていました。親方と衣食住を共にしていて、ずっと気を張っている感じでしたね。尊敬している人がずっと身近にいて、「勉強し続けなきゃ」という気持ちになりました。
でも、大工になって3年目で自信がなくなりました。特にきっかけがあったわけではないのですが、不器用だったり、男性と同じ作業をしなくてはと思い腰を痛めたりと、体が思い通りに動かなかったんです。
わたしが好きな作業が、みんなで重い材料を持ち上げて家の骨組みをつくる「建て方」というもので。腰を痛めたせいで何も作業ができず、男社会の中で、自分の力のなさや、自分にできることは何もないことに落ち込みました。これから先続けていけるのかなと不安になりましたね。
自分がやっている仕事がいまいち未来につながらない感じがしていて、将来的には独立したいので、この先何でも1人でできるようになるのか不安でした。
そんな中、親方のお知り合いの大工さんに「同じような時期が僕にもあったよ。最近わかるようになってきた、色々とつながってきたよ」と言われて、何事にも全力で向き合おうと思いましたね。