様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第850回目となる今回は、JOINS株式会社 執行役員/CPOの中垣 智晴(なかがき・ともはる)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
JOINS株式会社は「社長以外全員が業務委託」という珍しい特徴を持つ会社。中垣さんは週3日の業務委託として働きながら、その他複数の企業とも業務委託として関わっているフリーランスです。
今回は、中垣さんの経歴をお伺いしながら、現在のキャリアを形成するに至った考え方に迫ります。
週3業務委託で執行役員。会社のビジョンを体現する働き方
ーまずは、簡単に自己紹介をお願いします。
中垣 智晴(なかがき・ともはる)と申します。現在は業務委託として複数の企業で勤務するフリーランスです。JOINS株式会社での業務がメインで、執行役員兼CPO(Chief Product Officer)を務めています。ここでの勤務時間は、週5フルタイムではなく週3程度。他にも不動産事業や社団法人等に携わっています。
ー業務委託で執行役員とは、かなりユニークな働き方ですね。
そうですね。僕だけではなく全員が業務委託で働いている点はかなり珍しいと思います。
JOINS株式会社は、地方の中小企業と都市の副業/兼業人材のマッチングサービスを提供しています。人手不足で困っている中小企業が地方には多くある一方、都市には「移住は難しいけれど、週や月に数回ならば地方中小企業の支援をしたい」と考える方が多いんですよね。
「働くことをもっとしなやかにし、好きな土地で暮らす豊かな人を増やす」というビジョンがあり、全員がそれを体現している状態です。
リーダータイプではないにも関わらず、キャプテンに就任
ー現在のキャリアに至るまでの経歴をお伺いします。中垣さんはどのような学生生活を送っていたのでしょうか?
友達グループに所属するのが好きではなく、広く浅く複数のグループを渡り歩いていました。目立つわけでもすごく目立たないわけでもない、どっちつかずの学生でしたね。
転機は、中学校で野球部のキャプテンを任されたこと。リーダータイプではなかったですし実力も劣っている方だったので、指名を受けた時は驚きました。
実際にやってみると、チームをまとめるなどの仕事はそれなりにこなせましたが、キャプテン業への苦手意識は消えませんでした。僕は責任感が強い方なので、「ずっとチームの顔としてしっかりしないと」と思いすぎて疲れてしまったんです。
向いていないと思い続けながらも、高校の野球部でもキャプテン、大学でもサークルの部長を務めました。
ー向いていないと感じながらも、何度もリーダーポジションに就いていたのはなぜなのでしょうか?
僕はバカ真面目で、何事にもしっかり取り組みたいタイプです。そのような性格を周囲が評価してくれたからだと思っています。
部活の練習中に「ちゃんとやろうぜ」と声かけをしたり、誰よりも多く素振りの練習をしたりしていたところ、僕をキャプテンに推薦する声が聞こえてくるようになって。苦手なのにも関わらず、自らの行動がキャプテンの役割を引き寄せていたようです……。
経済成長で幸せになれるか?一冊の本で価値観が確立
ー部活動やサークル活動以外の部分もお伺いできればと思います。大学時代に学んでいたことを教えてください。
もともとの志望専攻は観光学でした。日本史の講師である父の影響で幼い頃から全国の史跡を巡っていたので、旅行や観光に興味があったんです。その後、観光による地域振興へと興味が移っていきました。
研究のため複数の地域を回り、資本と幸福についてもやもやと考えるようになりました。都市から移住した地域おこし協力隊は輝いていて、すごく楽しそうに地域の魅力を語ってくれたんです。一方で、昔からその地に住んでいる人々は普通に生活を営んでいて、“地域の魅力”なんて大層なものは気にもかけず、井戸端会議で楽しそうに談笑していました。
「観光や地域おこしによって地域を良くできる」という考えが揺らぎました。外部から人を呼び込むことや地域の経済力の向上は、彼らの幸福には直結しないのではないか。学びを深めるうちに、もやもやを抱えるようになりました。
ーその後、抱えていたもやもやは解消できたのでしょうか?
完全に解消できたわけではありませんが、突破口は見つかりました。
大学3年生の頃に本を読むようになり、山崎亮さん・藻谷浩介さんの『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?』をブックオフでたまたま見つけて。タイトルを見ただけで、「これだ!」と思いました。
この本と出会ったことでもやもやが確信に変わりましたね。現在の思考や思想につながる大きなきっかけでした。
ー大学卒業後の進路も、地域に関係する領域で選択されたのでしょうか?
明確な軸ではなかったですが、なんとなくの方向性としてはそうですね。
当初は、大学院に進学しようと考えていました。学生という肩書きを持っていれば、地域の懐に入りやすいと思っていたのです。
最終的には研究そのものに興味を持てず、就職を選びました。友人に誘われた就活イベントで話した数社のうち1社に入社を決めたので、就活はほとんどしませんでしたね。
ー深く思考する印象を受ける中垣さんですが、就職活動においてはあまり迷わずに意思決定されたのですね。
直感で決めましたね(笑)。
入社したのは、複数のインターネットメディアを運営する株式会社リブセンス。当時お話した方が、都市と地域のつながりに関わりたいという僕の話を真摯に聞いた上で、地域で活動している方を紹介してくれて。「この人のいる会社なら大丈夫だろう」という感覚に従いました。
当時、地域おこしや人の幸せについて、考えれば考えるほどよく分からなくなっていたのもあります。解決するべきことも分からないのに未来を描くことは難しいですよね。ロジカルな意思決定は僕にはできませんでした。