農家はクリエイティブだ。AINA FARM 萩 竜太朗から見た農業の世界とは

食・農を通じて、未来の世代に希望を

ー確信が持てない中でも常に前向きに進まれている萩さんですが、何か意識していることはありますか?

まず、常にスポンジのようにあろうとしています。疑うことよりも日々学ぶ姿勢でいることが大切だと思いますね。見方を変えたら優柔不断と思われるかもしれませんが、コアとなる軸は変えず、手段を柔軟に変えていく必要があるなと。

その姿勢に対して「今の若者は」と揶揄されることもありますが、自分の経歴に固執せず、状況に合わせて柔軟に手段を変えていけるのが僕ら若い世代の強みだと思っています。たくさんある情報の中から何を自分に落とし込むかを考えられればいいですよね。

この考えは、農業を通じて自然と向き合っているからこそ身につけられていることかもしれないです。正直、正解がないことへの不安はありますが、それでも日々の変化に適応していくしかないなと(笑)。

ー確かに、留学や訪日外国人の案内も「正解がなく、柔軟さが求められる環境」という点で農業と似通っている気がします。また、行動するうえで大切にしている軸やこだわりはありますか?

ひとつは、学ぶ姿勢をやめないことですね。

あとは、日本には他国と比べていまだに冷笑主義がありますが、それを気にせずに「自信を持ってやって、どんどん発信しよう」とは思っています。

ー最後に、萩さんの今後のビジョンを教えてください!

まず、今の規模で生産性を上げていきたいです。僕が行っている環境再生型の有機農業(不耕起栽培や草生栽培)のデメリットに「生産性が低い」ことが挙げられ、やはり大規模農家に比べると収量も落ちてしまいます。

しかし今後人口がさらに増加する中、このペースで生産していると食料供給が追い付かなくなるんですよね……。その背景もありますし、生産性を上げると収益化にも繋がり、家族を安定して養っていけるようになるので頑張りたいです。自給自足だけでは終わらせたくありません

実は今、食育にも興味があって。大きなところは自分ひとりの力では変えられないので、まずは目に見える小さなコミュニティから微力でも携われたらと思っています。

暗いニュースが続く昨今ですが、未来の世代に希望を与えたいですね。自分が培ってきたことや経験をシェアし、何かひとつでも糧にできるものがあれば嬉しいですし、同時に農業がおしゃれでかっこいいというイメージを持っていただけるようになればいいなと。

ー「農家」という仕事は本当にクリエイティブで多様ですね!お話を伺う前後でイメージがガラッと変わりました!

その言葉がありがたいですね……!僕がということではなく、農家さんたちはみなさん本当にクリエイティブですし、この「農家」という職業自体がクリエイティブだなと。

まず0→1を自分でして、自分が作ったものを販売できるのは世の中になかなかないですし、種・野菜・食品を自ら作り、それらをどう見せ、広告を打ち、販売するのか。全部自分の力量にかかっているんですよね。

この一連の流れを模索するのは非常におもしろく、これほどやりがいがあるものは他にないんじゃないかと思うくらい、「農家」という仕事はクリエイティブさが求められている気がします。

そして僕自身、これからも「環境に負荷をかけない、逆にプラスの影響を与えるにはどうすればいいか」を常に考えながら食と農に関わっていきたいです。

ー本日は素晴らしいお話をありがとうございました!萩さんの今後の更なるご活躍を楽しみにしています!

取材:山崎貴大(Twitter
執筆:庄司友里(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter