弱さを知ることで生きやすくなる。スナック水中ママ・坂根千里の強がりをほどく生き方

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第726回目となる今回は、「スナック水中」のママ・坂根 千里(さかね・ちさと)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

人に頼るのが苦手で悩んでいた坂根さん。同じ悩みを抱える方に寄り添うために、「スナック水中」を営業しています。バリキャリ志向からスナックのママを目指した経緯やスナックの魅力を伺いました。

鎧を外したコミュニケーションがスナックの魅力

ー自己紹介をお願いします。

坂根千里と申します。今年4月、東京の国立に「スナック水中」をオープンしました。コンセプトは「強がりな女性のためにも届けられる場所」を目指しています。本日はよろしくお願いいたします。

ー坂根さんは、スナックをどのような場所だと考えられてますか?

身につけた鎧を外して、まわりの人と許し合いながら飲める酒場だと考えています。ガールズバーやキャバクラより、安価でお酒が飲める社交場ですね。

ー坂根さんが感じるスナックの魅力が知りたいです。

スナックの魅力は、ありえないコミュニケーションが生まれるところだと思います。

自分の隣に赤の他人がいたら、普通は距離を置く方が多いと思いますが、私が初めてスナックに行ったときは、急に隣の席の人から話しかけられたんです。さらに知らない歌を歌わされました。

いきなり人に壁を壊されて、自分にとってフレッシュな経験でした。

ー坂根さんはどのような人との関わり方をされていたのでしょうか?

もともと人と距離をとってコミュニケーションをとるタイプでした。人を傷付けたくないので、殻に閉じこもって自分を守っていました。

だからこそ、人に頼ったり甘えたりすることは、壁の壊し合いだと思っています。

強姦未遂を経験して、「負けたくない」気持ちが芽生える

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ー17歳で最初の転機が訪れたそうですね。

夏祭りの帰りに、強姦未遂に遭いました。自分の中に深く残っている経験です。

力尽くで襲ってきた男性に、必死に抵抗しましたが、なかなか力が及びませんでした。生まれながらの性差や個体差、意思に反してどうにもならないことがあると実感しました。

「女性」であることに敏感になり、「女性だから」という理由で負けたくないと思うようになった出来事です。

ー被害に遭われてから、どのように過ごされてたのですか?

高校生活では、男の子は国公立の難関大学を目指す一方で、女の子は私立の中堅大学で相応だと考えている環境にいました。自分の色眼鏡で見ている部分もあるかもしれません。

私はその環境下で、男の子に「負けたくない」と変な意地を張ったり、強い承認欲求を抱いていました。

良く言えば「負けたくない」、悪く言えば「人に弱みを見せることは、少し怖いな」と思ってましたね。

退屈な大学生活を抜け出し、地方で生き方の多様性を知る

ー「負けたくない」気持ちが、19歳での転機につながったそうですね。

1年の浪人を経て、一橋大学に合格しました。自分が憧れてた大学に行けることになり、期待がめちゃくちゃ高まりました。

浪人中はずっと部屋に閉じこもって勉強していたので、大学では社会に関わりながらさまざまな経験ができるだろうと、わくわくしていたんです。

ですが実際に大学に行くと、そんなことはありませんでした。教室で勉強する時間も多く、友達も窮屈な大学生活に迎合している感じがしました。

ー大学生活が窮屈だと感じた反動で、次の行動に移されたそうですね。

地域創生に興味があり、夏休みに地方へ行きました。いろいろな働き方や仕事をしている人たちに出会い、たくさんの生き方やキャリアがあると知りました

大学に居心地のよさを感じなかったのは、おかしいことではなかったと初めて思えました。

大学に通いながら色んな人に出会える宿をつくれば、ずっと楽しく過ごせると思いました。次第に、自分で宿を運営しようという気持ちが高まりました。

ー地方で働き方や生き方が素敵だと感じた方はいますか?

奄美大島の加計呂麻島にいる「チカちゃん」という女性です。一言で表すと、ヒッピーっぽい子でした。

彼女は色んな場所に住みながら、自分にどの場所が合うのかを考えて生活していました。世界一周をして辿り着いたのが、奄美大島だったそうです。

チカちゃんは朝4時ぐらいに起きて、海で泳いでからWebデザイナーの仕事をしていました。夕方になるとまた海に行ったり、フルーツを食べたりしてました。

自分の心地よい生活と仕事環境を手に入れた、自由なキャリアに衝撃を受けました。

丸の内でハイヒールを鳴らすOLになることばかり考えてましたが、それは選択肢のひとつでしかないと気付きました。