「農業は確かに大変だけれど、それ以上にやりがいがある」
ー就活の際はどのような企業や業界を見ていましたか?
留学で日本の魅力に気付いたことで、ひとりでも多くの方にそれを伝えたいと考えていたのでインバウンド系で探していました。
また、帰国後京都にいたので伏見稲荷大社で外国人観光客の方々に案内をしていたのですが、案内した方々から「日本最高!」と言ってもらえるのがすごく嬉しくて。
そのような経験をひとりでも多くの方にしてもらいたいと思いつつ、それを仕事にできたらと思ったので、観光を扱ったり日本の文化を伝えたりするような企業で働きたいなと。
結果的に、インバウンドのみを取り扱う旅行系ベンチャー企業に就職しました。ベンチャー企業を選んだのは「自分の実力を試してみたい」「若いうちはがんがん働きたい」と思っていたからです。「大手で働くことだけが選択肢ではない」という価値観からも、躊躇はしませんでした。
ーなぜ26歳で旅行業界を離れ、Uターンをして農業を始めることになったのでしょう……?
実は、最初に入った企業で働いているときに環境問題への関心が芽生え、それに関する活動をNPOでしていたんです。そしていよいよその関心がインバウンドを上回ったので「環境問題に取り組むしかない、やりたい」と思うようになりました。
ただ、当時は農業ではなくフードテックに興味があって。ダメもとで代替肉を扱うビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズに応募したものの落ちてしまいましたね……。その後キャリアアップのために環境問題とは関係ない企業で働いたのですが、その間も環境問題への関心は途切れませんでした。
そうした中、パタゴニアの社長の方がとあるカンファレンスで、農業にも触れたスピーチをされている動画を偶然見かけて。それをきっかけに「農業」に興味を持って勉強していると、「農業っておもしろいけど、問題だらけやん」と思いました。
将来のためにも食を作ることが大切だと考えて農業を始めようと考えていたとき、留学時に得た「トライするマインド」が最後に一押ししてくれました。「やりたいと思うならやろう」と。あとはパタゴニアの「問題はソリューション」という言葉にも勇気づけられましたね。
ーここでも「トライするマインド」なんですね!ただ「農業」といっても、まず何から始めましたか?
みなさん「土地を用意すること」をイメージされると思いますが、僕の場合は実家が農家だったので「土地」に関してはハードルがありませんでした。ちなみにこれも農業を始める際に背中を押してくれた要因です。
僕にとってのハードルは「新規就農を認めてもらうこと」でした。当時は農業に関する知識も経験もなかったため、少しでも実績を積もうと「農家の息子」であることを活かして地域の有名な農家さんを巡って研修し、その様子を発信しましたね。その甲斐もあり、無事に新規就農させていただき……。
肝心の農作業は独学で始め、農家さんに足を運び、実際に農作業を見せていただきながら学んでいきました。やはりバックグラウンドがない分たくさんのことを吸収できるなと。何をするにしても難しさのレベルが最上級で、未経験の僕からしたらどれも同じ難しさに見えていたので怖いものなしでした(笑)。
ー萩さんが考える、農業の大変さとやりがいは何ですか?
前提として、「農業=大変」というイメージが一般的ですし、実際にそうだと思います。さらに大変なことも農家ごとに違うんですよね。
例えば、「作物の面倒をみないといけないからなかなか長期の休みが取れない」というのも大変さのひとつだと思います。しかし、大変なことも僕にとっては苦ではありません。仕事だけど自然と戯れて遊んでいる感覚なんですよね。僕のやり方では一切機械を使っていないので、なおさらそう感じているのかもしれません。
僕から見た農業は「日々旬を感じられる」「植物以外に虫でも季節を感じられる」という風に、日々変わる自然を相手にしているのでマンネリ化が全然ない仕事です。
「確信を持てることがない」ことにわくわくしますし、まだ駆け出しなので失敗をどう成功に繋げていくかというところにやりがいを感じています。