逃げることは悪くない!小澤航也が伝える「流れに逆らう生き方」とは?

常に先を見据えて動く。自分の道を自分の足で歩くために

ーいつごろから将来について考えていましたか。

前の高校から転校した時点で、将来的にもesportsには携わりたいなと考えていました。また、冬の大会が終わった時点で、自分より強い人がいることはわかっていたので、将来の選択肢に選手という道はありませんでした。1位じゃないと意味がないと。

一生懸命やって負けたことで、自分の実力が見えてしまったのです。高校の時に負けていない、もしくは戦っていなければ、高校卒業後も選手を目指していたと思います。

引退平均年齢25歳という選手生命の短さと、自分の現時点での実力を加味した結果、自分自身が選手として第一線で戦っていけないと思い、自分より強い選手の近くにいて見守れる位置にいたほうがよいと思いました。

マネージメントの道に進むか、高校2年生のときに出会ったキャスターの道に進むか。進路について迷っていましたね。

ー迷った上で、キャスターの道を選択した決め手はどんなところだったのでしょうか?

DOTA2というゲームで、日本人で唯一実況と解説をしている方がいて。高校2年生のときに、その方の名実況集の動画に出会ったんです。それを見た時に、はじめて実況にスポットライトが当たった瞬間だと思いました。大会を支えてくれている実況って実はとても重要なものだと。

自分の中で大会に付随していると思っていた「実況」というものが、大会よりも上にきました。僕は本当にこの動画が好きで、今でも暗唱できるぐらいには好きですし、言い回しはこの方の影響を受けている部分はありますね。

ただ、僕は今でも実況は大会に付随するものだとしか思っていません。選手よりも目立ってはいけないし、観客以上に前に出てもいけない。選手がいて観客がいて、そのバランスを保つ潤滑油のような存在だと思っているんです。

そういった想いで最終的にはキャスターを選びました。

ーesportsキャスターって簡単になれるものなのでしょうか?

なろうと思えばなれる職業だと思っています。普通のスポーツとは違ってアマチュアシーンが広いことと、大会数も多いので、ゲームを選べばキャスターは毎年増えているなという印象ですね。

ただ、僕のやっているゲームはある程度の実力がないと観客に認められないという世界なので、僕より若いキャスターはまだ見ていないですね。

ーなるほど!ということはキャスターになるにはまず自分がプレイヤーとして頑張る必要があるのですね?

いえ、プレイヤーとして頑張る必要はないですね。ただ、僕の先輩キャスターの言葉に「実況するならそのゲームは100時間プレイしなさい」というものがあります(笑)。

100時間プレイしなければ言葉も出ないし、伝わらない。プレイヤーにも失礼だし、観客のほうがゲームについて知ってる可能性がありますよね。そこに対して少ない知識で戦うのは無謀すぎると思っています。

ー逃げることは悪いことではなく、流れに逆らうという生き方がやりたいことがない人でもやりたいことを見つけるきっかけになればとおっしゃっていました。この「流れに逆らう」という言葉にはどんな思いがこめられているのでしょうか?

やりたいことがあって、今いる環境がそのやりたいことを阻むのであれば、離れたほうが身のためになると思っていて。やりたいことはあるけど、環境を変える勇気はないという話も聞きますが、「ムダな環境にいる時間が、できる時間に変わったとするならば、将来的にやりたいことに近づくのはどちらだ?」と自問自答するのが良いと思います。

前の学校でesportsに関われないよりも、転学してesportsに関われるほうが将来的に良いと思ったので、僕は転学という決断をしました。一度入学した高校をやめるのは、一般的には悪いことに見えるかもしれませんが、自分の将来と天秤にかけたときに決して悪いことではなかったと思います。

僕も周りから「受験から逃げた」といわれましたが、それは悪いことではなくて。自分がやりたいことが決まっているのであれば、どんな手段を使ってでもその道の最短距離を走れるように軌道修正したほうが良いと思います。もちろん、それが高校で勉強できることなら良いと思いますが、そうではないなら環境を変える努力をするべきだと伝えたいです。

ー最後に小澤さんの今後について教えてください。

業界全体でみるとまだまだアマチュアキャスターなので、プロになりたいと思っています。そのために毎日実況して腕をあげていきたいですね。

ーありがとうございました!小澤さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:あおきくみこ(Twitter/note
執筆:松村彪吾(Twitter
編集:本庄遥(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter