多面的にサステナビリティへコミットする鈴木里奈。SNS発信を通じて考えた“影響力”の意味と扱い方

今回は、GLIN Impact Capital・アナリスト、一般社団法人IMPACT SHIFT・理事を務める鈴木里奈さんをお招きしました。

これまでのキャリア、学生時代に積極的に行っていた部活や学外活動などについて伺います。

 

個人の幸せと世界の平和が両立する世界を実現したい

–現在の仕事内容について教えてください。

「経済成長とともに社会課題が自律的に解決される社会の実現」をミッションに、インパクト投資、金融機関・上場企業・成長企業におけるサステナビリティ支援などを行うGLIN Impact Capitalのコンサルティングチームに所属し、アナリストとして働いています。

企業が社会や環境にポジティブなインパクトを創出できるよう、非財務情報の開示・活用に関する戦略的支援を行うほか、企業のサステナビリティ推進を支える情報基盤の構築に向けたリサーチや、ファンドのESG投資支援に携わっています。

また、一般社団法人IMPACT SHIFTには理事として参画しています。「IMPACT SHIFT」は、インパクト業界をリードするゲストを迎えて、インパクトに関心を持つ多様なセクターが対話を行う交流型カンファレンスです。​2023年度には、インパクト志向の起業家など全国から合計600名の参加者が集い、社会課題やインパクトの未来を共に考え、実践へと繋げていくための場を作りました。現在は、次回の開催に向け、SNS発信を担当して集客に注力しています。

その他、ファッションブランドのエシカル度を評価しているShift Cのアンバサダーや、女性のウェルビーイングに特化したメディア「Woman’s Health」のアンバサダーとしても活動しています。自身のSNSを通じてサステナビリティに関する発信を行うほか、ピラティススタジオの運営もしています。

–仕事や活動を通じて実現したいことを教えてください。

仕事や活動を通じて実現したいことは、社会課題の解決に貢献し、「すべての人の幸せが持続する世界を実現する」ことです。

幼い頃からファッションが好きでしたが、大学1年生の時、アパレル業界の過酷な労働環境や環境負荷を知り、私が楽しんでいた「おしゃれ」が他者や地球環境に負担をかけていることに気づきました。この経験を通じて、「服が好きだからこそ、その楽しさを持続可能な形で守りたい」と強く感じるようになりました。

そのため、仕事や活動を通じて、企業や消費者が持続可能な選択をできるようサポートし、社会全体が幸せを感じられる環境を作るために積極的に行動していきたいと考えています。

–どのような時にやりがいを感じますか。

入社してまだ半年ほどではありますが、会社の方向性を決める経営者や各部署の近くでサステナビリティに関する施策に直接関与できていることを非常に恵まれた機会だと感じています。また、自分の働きかけにより、間接的に企業のポジティブなインパクトの創出の一助になれていると感じた時や、サステナビリティに取り組む重要性を認知してもらえた時はやりがいを感じます。

また、一般社団法人でも広報活動、SNS発信をしてる中で、サステナブルな取り組みの必要性に新たに気づく人、以前より興味を持ってくださる人などが現れるととても嬉しいですね。徐々に関係人口の拡大に携われている気がしますし、少しずつ伝播していっていることが実感できます。

 

「自己表現が好き」挑戦の原動力となった感情

–子供時代に打ち込んでいたことはありますか。

4歳の頃、姉の影響でクラシックバレエを始めました。自己表現をするのが好きな子どもで、道具を使わず、身体で表現することで人の心を動かせるという点が好きでした。

プロを目指してアメリカ留学もしたのですが、自分の努力次第で実力をつけていけることも成長をすぐに感じられるので熱中した理由でした。

中学生になってからチアを始めました。体験入部期間に練習風景を見た時、部員で互いに声を掛け合いながら練習に打ち込む熱気、姿に心打たれ、入部を決意しました。

実際に取り組んでみると、個人競技だったバレエと共通する部分、異なる部分を感じた上で、仲間と一緒に目標へ向かい結果を得られた瞬間のやりがいは他では味わえない喜びがあると気づきました。中学3年生の頃は部員50名をまとめる部長に就任し、全国大会4位の成績を残すことができました。

その後、高校生になってからもチアリーディングを続け、高校3年生では全国大会での優勝を経験できました。厳しい上下関係のルールや、ハードなトレーニングなどが日々ありましたが、最後に結果を得られた時には大きな達成感を得ることができました。

–進学先はどのように選びましたか。

小学校から大学まで、一貫校の環境で育ちました。途中で「外の世界を見てみたい」という気持ちもあり、外部進学をしようか迷った時期がありましたが、当時部活で全国優勝を達成するという目標を優先的に考えていたため、内部進学を選びました。

いざ入学…となったタイミングで新型コロナウイルスの感染流行が起こり、入学式は中止され、授業もオンライン形式に切り替わりました。

–入学後はどのような生活を送っていましたか。

正直、大学に入学した実感が湧かず、戸惑いました。大学でも高校生までの部活で得たような達成感、やりがいを味わえるものに取り組みたいと考え、まずは自宅から参加できるオンラインの長期インターンシップに参加することにしました。

現在全世界で4億人が使っているカメラアプリ「SNOW」を提供している会社でインターンを開始した後、若者のトレンドを追いかけることが好きだったため、Z世代のトレンド情報を調べて社内に共有する仕事を担当するようになりました。

子どもの頃からバレエとチアを通して「自分は自己表現が好きだ」と気づいていて、その表現の場をオンラインであるSNSに移し、ライフスタイルに関する発信を通した自己表現にも取り組み始めました。

–発信を続ける中で得られた学び、出会いはありましたか。

当時、コロナ禍でさまざまな情報が飛び交う中、SNS発信にまつわる悩みやリスクにも注目が集まるようになっていました。そのタイミングで、「Z世代のSNSの向き合い方」というテーマの座談会の出演者としてオファーを頂き、取材を受けることになりました。

その際、同じ出演者の中に社会問題を発信するインフルエンサーの方がいたのですが、私の意識を変える発言があり、人生の転機になりました。

「SNSの影響力の使い方は人それぞれだけれど、使い方によっては社会をよりよくする媒体になり得る」

–その言葉を聞いて、どのようなご自身には変化がありましたか。

「自分の発信は本当に意味のあるものか」と我に返るような気持ちになったんです。

その後、自分が好きなファッションに関して、実はアパレル業界の裏側では人権・環境問題が取り沙汰されていると学び、「その洋服を購入している自分は、問題に加担していることになるんだ」と気づくことができました。

これが、今の活動の原点ともなる出来事でした。以来、「サステナビリティ」を自分自身の生活、そして発信する際の軸にするようになったのです。

–その後、在学中にはどのようなことに取り組みましたか。

サステナビリティを軸に発信を続けていたところ、自分の影響力の限界を感じ始め、より広く多くの方に発信できる機会として青山ミスコンへの挑戦を決意しました。

その後、学生アナウンサーとしての活動を始め、テレビ東京の「知られざるガリバー」という番組での企業の経営陣へのインタビューやラジオ番組を通じたサステナビリティの啓蒙活動に取り組み始めました。

また、大学の授業でもフェアトレードゼミに入りました。商品開発、プロモーションなどの取り組みに関わり、社会課題解決×ビジネスに初めて取り組む機会にもなりました。

–卒業後の就職先はどのように考えていましたか。

社会課題を自分事として捉えてもらいたいという想いから、伝える仕事、特にアナウンサーになることを目指して就職活動を行っていました。しかし、その過程で、社会課題の解決にはさまざまなアプローチがあることに気づき、ビジネスの上流や仕組みづくりに関与したいという思いが強まりました。そこで、SNSメディア「Snapchat」のインターンシップに参加し、課題解決の新たな方法を模索するための実務経験を積むことに決めました。

VCなど複数のインターンシップ経験を通じて、「企業内の意思決定者に近い場所で働き、経営に直接的な影響力を発揮できる環境で成長したい」と考えるようになりました。その際、企業選びの軸として以下2点を重視しました。

1. 社会課題の解決と経済成長の両立(持続可能な社会の実現に貢献できる仕事)
2. 0→1のフェーズに携わり、スピード感のある環境で裁量権を持ち成長できる場

尊敬する先輩の紹介でGLIN Impact Capitalでインターンをしていた際、当社が自分の軸にぴったりの企業だと確信しました。しかし、当時は新卒募集がありませんでした。そこで、「門をたたけば開かれる」という家族の言葉を思い出し、思い切って想いを伝えました。結果、採用の機会を得て入社することができました。

 

一人ひとりがサステナブルな未来を作る意思決定を

–これまでのあゆみを振り返った際、印象に残っている出会いはありますか。

まずは、身近な家族の影響を大きく受けていると感じます。

母は専業主婦からピラティススタジオオーナーになり、父も会社員を経て起業。姉も本業と副業での経営を両立させるなど「行動を起こす」マインドがあります。その姿をみて、不可能だと思うことも自らが可能にすることや、新しいこと、興味があることに果敢に挑戦していく気持ちを育んでこられたのかなと思います。

次に、SNSをテーマにした座談会で出会ったサステナビリティインフルエンサーの方。先ほど触れたように私自身の考え方が変わるきっかけ、「サステナブル」に関心を持つきっかけをくれた人でした。

最後に、Snapchatで出会った先輩。目の前のご縁や一期一会の精神を大事にする人で、その姿勢から気付かされることが多く、自分自身の振る舞いや在り方に影響を受けました。

–今後挑戦したいこと、実現したいことを教えてください。

現在の仕事では、企業から生まれるネガティブなインパクトを抑制し、ポジティブなインパクトを拡大することに全力を注ぎたいと考えています。また、一般社団法人IMPACT SHIFTの活動を通じて、社会課題解決の入口に立ち、インパクトを与える関係人口を増加させることに挑戦したいと思っています。プライベートでは、ピラティススタジオの運営においてインストラクターデビューを予定しており、女性のウェルビーイングや心と体の健康のサポートに力を入れたいと考えています。

さらに、将来的には、私が所属する企業や関わる活動を見てくださった方々が、商品やサービスの背景まで考えながら購入意思決定を行うようになったら、とても嬉しく思います。

一人ひとりがより良い意思決定を重ねることで、サステナブルな未来が実現し、「すべての人の幸せが持続する世界」の実現に近づくことを心から願っています。

 

取材・執筆=山崎 貴大