場所にも年齢にもとらわれず挑戦できる環境づくりを。11歳でエストニアで起業したTSUNAGU OÜ・CEO井上美奈

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第540回目となる今回は、井上美奈さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

弱冠12歳にして、「誰でも未来に貢献できる」サービスを提供するTSUNAGU OÜ(ツナグ オーユー)のCEOを務める井上さん。井上さんの生い立ちや起業までの歩み、エストニアに企業を設立した理由などをお聞きしました。

人を「つなぐ」サービスを展開

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。
TSUNAGU OÜのCEOをしている、井上美奈と申します。11歳のときにエストニアで起業しました。

ー現在はどのような事業を展開されているのでしょうか?
イベントやワークショップの開催、イベント登壇、サービス開発などを行なっています。

具体的なサービスは、現在、開発途中で、並行して誰でも・どこからでも参加できるテクノロジーフェスティバルを開く準備をしています。高齢の方や地方に住まれている方は、テクノロジーに触れる機会が少ないことで、本当はできることにも気がついていないこともあると気がつきました。多くの人の可能性を広げるきっかけになればいいと思っています。エストニアや海外に行きつつ、オンラインでもつながっているので日本にいるときも日常的に会話をします。

ー社名の「TSUNAGU OÜ」には、どのような意味が込められているのでしょう?
まず「TSUNAGU」は、そのまま日本語の「つなぐ」の意味です。サービスづくりのために、いくつかのセミナーや勉強会に参加をする中で、何かを行うのに「人、資金、情報」が必要だと知りました。私はその中でも、いちばん大切なものは「人」だと思いこの名前にしました。人が、人や情報、資金をつないでくださることもあるし、人のつながりの中で新しいものが生まれてくると思ったためです。

起業のきっかけは、とあるイベントへの参加

ーそもそも、起業に興味を持ったきっかけはなんでしょう?
もともと近くのパン屋さんが他のパン屋さんより人気なのかに興味があったり、母がMBAの授業を受けて出された課題を見て面白そうだなと思ったりと、経営自体にも興味がありました。明確に起業に興味を持ったのは、10歳のときにStartup Weekend※に参加したのがきっかけです。
(※Startup Weekend:3日間の起業体験プログラム。チームを作り、アイディアをブラッシュアップし、発表までを形にするイベント)
小学生では雇われることは難しいですが、社長にならなれると知り、起業してみたいと思いました。

ーイベントでアイディアを出す経験をして、何を感じましたか?
今の自分でも人の役に立つサービスが作れるかもしれないと思いました。人の役に立ち、貢献できるものをつくるのに、距離や場所、年齢は関係ないと思うようになりました。

もともと人の役に立つことに喜びを感じる性格なので、今からでもできるのであれば、誰かの役に立てることがしたいと思いました。

ー素敵ですね!起業の場として、なぜエストニアを選ばれたのか気になります。
最初からエストニアに作ろうと決めていたわけではありませんでした。
日本か、エストニアかアジアのどこかがいいと思っていました。それぞれの国の会社の種類や制度を調べ、詳しい方に教えていただく中で、今私が作りたいサービスを進めるなら、エストニアが合っていそうだと思いました。
なぜならエストニアは、国としてもスタートアップが成長しやすい環境を作っていたからです。例えば日本よりもエストニアの方が設立時の資金を抑えることができ、税金の制度も違います。
それに、私が設立した時は、e-Residentの申請をしてe-residencyカードを取得すれば、日本からでも法人設立ができました。

ーチャレンジ精神が素晴らしいですね!幼少期から、興味があることにはまず挑戦していたのでしょうか?
ありがたいことに、両親から、興味のあることには挑戦させてもらえる環境でしたね。習い事を始めたり、中断したりするにも、全て自分の判断で決めさせてもらえました。

新しいことへの挑戦は、やれることから始めようと思えるので、不安というよりもワクワク、楽しみな気持ちの方が大きいですね。

実際にエストニアへ初渡航、得たものとは

ー2019年6月にエストニアに渡航されたそうですね。
初めての渡航で、その時にはすでに起業に興味がありました。若い起業家が多いと知ったことが、エストニアに行くきっかけになりましたね。
渡航を決めた後は、クラウドファンディングで渡航費用を集めました
クラウドファンディングは、小学2年生の頃に習っていた琴の演奏会をいろいろな地域で開くための費用集めに使ってみようかと、問い合わせをしたこともあり、もともと興味がありました。使ったことはなかったものの、身近な存在でした。

ー初のエストニアはいかがでしたか?
エストニア在住の日本人起業家、投資家をはじめ、様々な方にお会いできました。滞在中だけでなく、帰国後も繋がれる関係を作れてよかったと思います。
現地では、若い起業家がどうやって資金を得ているかを知りたいと思っていたのですが、「まずは仲間をつくること」、それから「やり遂げること」の大切さを教えていただきました。

ーさすがの行動力です……!アポイントはどうやってとったのでしょう?
エストニア渡航前に、元デジタル大臣の平井卓也さんから大臣室にお招きいただき、日本のエストニア大使の紹介を受けました。現地でも大臣に会うなどしてつながりを作り、エストニアで起業をされている方から、起業家の方や投資家の方、起業を支援されている方、教育に関われている方などいろんな方を紹介してくださいました。

これからも続く、12歳起業家の挑戦

ー過去にはどのようなイベントをされたのでしょうか?
エストニアでロボットと一緒の未来についてアイデアを考えるワークショップを開いたり、エストニアとシンガポールと日本をつないで学びについて考えるイベントを開いてみたりしました。
それから、遠隔操作ができるOrihimeというロボットをエストニアに預け、日本と現地をつなぎ、エストニアの方に案内してもらうプライベートツアーを実施しました。

ーこのコロナ禍で、旅行したくてもできない……という人の理想を叶えるにもぴったり!もはや距離をなくしてしまうイベントですね。井上さんは、こうした時間、空間を超えて貢献できるサービスを作りたいのですよね?
はい、「誰でも未来に貢献できるサービス」で、子供から高齢の方まで、それからどこに住んでいる方も、誰でも一緒にまずはできることから挑戦できる環境を作りたいと思います。
年齢関係なく、社会の役に立つアイディアを出して、実現できる環境を作りたいです。

ーこれからやってみたいこと、実現していきたいことを教えてください。
色々な人をつないで、やりたいことを叶えられる機会を増やしていきたいと思います。
今は居住地を問わず、国内や海外のスタートアップイベントにも応募でき、さまざまな人とつながることで、情報交換もできる時代です。いろんな地域の方の役に立つサービスをつくれる環境はすでにあるので、この恵まれた環境を生かして、誰かの役に立つサービスを作っていきたいです。

ーありがとうございました!井上さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:あおきくみこ(Twitter/note
執筆:ひの
デザイン:安田遥(Twitter