会社員からパーソナルジムを設立。独立に大切なのは「どれだけ腹をくくれるか」

色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。今回は、ゲストとして以前お話を伺った方のその後に迫るべく、2021年4月27日公開記事のゲスト・水野純一さんに追跡インタビュー。

前回のインタビュー時は、会社員の理学療法士として活躍されていた水野さん。2021年8月に会社を辞め、10月にはフリーランスとしてパーソナルジムをオープンしたそうです。独立に踏み切った理由や独立後を通して感じた変化、今後の展望について語っていただきました。

▼水野さんの前回インタビューはこちら。
「迷ったらやる」のススメ。迷うことなく決断をくだす水野純一から学ぶ行動学

「すべて自己責任で働く感覚を味わいたい」。リスクを負って、独立を決意

ー前回のインタビューから約半年が経ちましたね。ジムについて伺う前に、まずは独立に至った経緯を聞かせてください。

実は、独立自体は3年前くらいから考えていました。独立を決めたきっかけは、コロナで身近な人が亡くなってしまったことです。「人生って短いな」と改めて感じて、独立に踏み出す決意をしました。2021年8月末で前職を辞めて、10月にはパーソナルジムをオープンしました。

ー以前から独立を考えられていたのですね。独立を考え始めた理由は何ですか?会社員時代ではできない仕事があったのですか?

いいえ、仕事内容はほぼ変わらないです。お客さんに来てもらって施術する流れは同じですし、前職でも自由に仕事させてもらっていました。強いて言うなら、職場が錦糸町から中野になったので、地元の人を呼びやすくなったことですかね(笑)。

ー意外にも、仕事内容が変わらないのですね。その中でもあえて「独立」というリスクをとった理由が気になります。

施術や店舗経営をすべて自力でやってみたいと思ったのが、独立の理由です。独立すると、店舗の集客率や利益が良くも悪くもすべて自分に返ってきます。リスクを負って、すべて自己責任で行う感覚を味わってみたかったんですよね。

ー「自己責任」ですか。独立の不安要素でもあり、面白い部分でもありますよね。実際に自己責任で働くようになって、何か変化はありましたか?

自由時間さえも、店舗の運営を考えて行動するようになりました。

例えばカフェやランチは、チェーン店よりも地域に根ざしたお店を利用しています。そこで店員さんと仲良くなると、店員さんやそのお店のお客さんが僕のジムに来てくれることがあるんです。

自分の店舗の利益になるよう、仕事以外の行動にも気を遣うようになりました。

「人に頼る」「根回しをする」水野さんが感じた、独立に欠かせないこと

ー水野さんが実際に独立してみて感じた、独立の良さを聞かせてください。

スケジュールを全部自分で決められることです。ただ何もしないと収入が一切入ってこないので、スケジュールや進捗の管理には気を付けています。

ーフリーランスは良くも悪くも時間に縛られないと聞きますが、水野さんは前向きに捉えているのですね。反対に、独立に対する不安要素はありませんでしたか?

家賃が払えるか、売上が伸びるかといった金銭面の不安はありました。パーソナルジムのオープン準備前、何の内装もないスペースに足を踏み入れたときは、身体に蕁麻疹が出るほどでした。これまでに感じたことのない感情でした。

それから僕は寂しがり屋なので、ひとりでオープンの準備をしていたときは、孤独感でメンタルがしんどかったです。気分転換に筋トレをしたり、Zoomでの会議の合間に雑談を挟んだりしながら乗り切りました。

ー独立に不安はつきものですが、ご自身なりに対策されていたのですね。メンタル面以外で大変だったことはありますか?

不動産探しや事務作業など、慣れない作業をするのは大変でした。

プロフェッショナルの方にはもちろん、合計20~30人くらいの友人や知り合いにも助けてもらいましたね。「いかにうまく人の力を借りれるか」は、独立において重要だと思います。

ー「いかにうまく人の力を借りれるか」ですか。他にも水野さんが感じた「独立に必要な要素」があれば教えてください。

根回しです。何かあったときに頼る相手を決めたり、頼りたい相手に連絡を取ったり。

前職の社長は、目上の先生方にお酒の場で質問したり、事前に相手のことを調べたりといった準備を欠かしませんでした。社長の姿を見て根回しの大切さを学びましたし、独立した今でもその学びが役に立っています。

ー会社員時代の学びを、独立にも活かしているのですね。

例えばミーティング前に話したいことを上の方に伝えておけば、ミーティングで詰められなかったり、案が通りやすくなったりしますよね。独立に限らず、社会人全般にとって大事なことだと思います。

100人いれば、100通りの不調。耳を傾けて、オーダーメイドの施術を

ー現在水野さんが経営されているパーソナルジム「Studio CEL」について聞かせてください。

Studio CELは、整体とトレーニングを組み合わせたパーソナルジムです。個人に合わせた施術やストレッチ、トレーニングによって、身体の不調を改善します。僕の地元でもある中野区に、2021年10月にオープンしました。

ーホームページに記載されていた「医療機関に通わなければいけなくなる状態の前に予防できたら良いのではないか?」という言葉が印象的でした。

社会人3年目まで働いていた整形外科クリニックでは、身体の状態がかなり悪化した70~80代の患者さんも多くいらっしゃいました。

そういった不調は、50代頃からしっかり運動していたら防げるケースも多いんです。身体の状態が悪化してしまう方を、少しでも減らしたいという思いがあります。

ー施術するにあたって、水野さんが大切にされてることは何ですか。

お客さんの話をきちんと聞くことです。施術前のヒアリングでは40分くらい時間をかけます。お客さんの話を聞くと、ぱっと見わからない不調の原因が半分くらいは想像できます。

「膝が痛い」といっても、いつから痛いのか、何がきっかけなのか……。膝が痛いけれど過去にあばら骨を折った経験があれば、原因は膝ではなくあばらにあるかもしれません。話を聞くと、原因が具体的に見えてきます。

100人いたら、100通りの不調の原因があります。個人に合ったトレーニングを提供するために、ヒアリングは欠かせないですね。

ー「話を聞くこと」は会社員時代から意識されていたのですか?

意識するようになったのは、前職からです。それ以前は診察時間に余裕がなかった上に、「俺の手直してやろう」っていう感情が先走ってしまいました。

前職に転職してから1人1時間と診察時間に余裕ができたので、患者さんと会話するようになりました。いざ会話をすると「実はココをけがしたことある」という不調のヒントになる話題が出てきて、話を聞くことの大切さを学びましたね。

5年後に「なりたくない」自分を想像。独立の秘訣は、腹をくくること

ーユニーク世代で、独立を迷っている人へのメッセージをお願いします。

「5年後、10年後にこうなりたくない!」という自分の最悪の姿を思い浮かべてみてください。その姿を回避する方法が独立しかないなら独立すべきだし、そうでないなら無理に独立する必要はないです。

僕が描いた5年後の最悪の姿は、「あのとき独立しておけばよかった」と後悔している姿。後悔している未来の自分を想像して、独立に踏み切りました。

ー前回インタビューでは、「迷ったらやる」をモットーとしてあげていましたよね。

はい。僕自身、独立するか否かとても迷いましたが、思い切って挑戦することにしました。

結局どれだけ腹をくくれるかが大切だと思います。独立をしたいけれど腹をくくれない人は、腹をくくれない理由を探して排除してみてください。

ーありがとうございました。最後に、今後の展望を聞かせてください!

まずは、パーソナルジムの店舗を増やすのが目標です。中野区や杉並区あたりを考えています。

中野区で健康に関するイベントも企画したいですね。昔からお世話になっていた方の中にお店を経営している方がいるので、一緒に健康増進に向けた取り組みをしつつ、横の繋がりを増やしたいです。

繋がりやコミュニティという意味では、前回のインタビューで話した「銭湯の経営」も変わらず目標としています。今は個人ジムの経営など目の前のことを優先したいので、銭湯の経営は10年以内の実現を考えています。

ジムの経営に限らず、健康に関わることに幅広く取り組んでいきたいですし、身体の不調に困っている人を1人でも減らしたいです。

▼水野さんが経営するパーソナルジムはこちら
Studio CEL(スタジオセル)

▼水野さんが独立前に勤めていた企業はこちら
株式会社エバーウォーク

取材・執筆:まあや(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter