NPOワーカー荒川隆太朗に聴く自分らしくいることの大切さ

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第980回目となる今回は、NPO法人Gift副理事長/NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン代表理事の荒川隆太朗さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

2つのNPO法人に所属する他に個人でもコーチングの活動をしている荒川さん。過去にはいじめられていた経験もある中で学んだのは自分に合った環境を見つけ、自分らしくいることの大切さです。自分らしくいることがいかに大切か、そしてその見つけ方について語っていただきました。

大学時代から現在に至るまでの活動

ーまずは現在の職業についてお伺いします。コーチングを始めたきっかけはなんですか?

元々人との対話が好きで、20歳のときに「アラトーーーク」と称し100名ほどの方々と一対一で真剣に話し合う企画をしていました。その流れでコーチングを勧められ、学び始めて現在に至ります。

ーGiftではどのような活動をされていますか?

NPOを中心にクラウドファウンディングのセミナーや伴走、経営相談をしています。NPOは助成金の期限など、お金を理由に活動停止してしまう団体が多くあります。

ボランティアだと続かず、事業化すると経済的に顧客層が変わってしまうので本来届けたかった人たちに届かない。そんな話を聞き、助成金でも事業収入でもない寄付という新たな選択肢を使っていけないかと提案したのがGiftの始まりです。

もう1つの法人、コミュニティーオーガナイジングジャパンは「コミュニティーオーガナイジング」という社会運動の方法論をベースにしたワークショップを行っています。これから社会を変えるために取り組んでいきたい方々に、5つのリーダーシップスキルにしたがってアクションを起こし、社会運動を作っていく手助けをしています。

合わないと思ったときが辞め時「石の上はずっと石の上です」

ー荒川さんの幼少期について教えてください。

今でこそ「自分らしく」を掲げている僕の幼少期はまったく自分らしくありませんでした。

小学2年生からソフトボールを始めたのですが、辞めたいと思ったときに「石の上にも3年」と言われ、大して上手くもないのに高校まで続けることになります。

もしこの記事を10代、20代で読んでいる人がいたら、自分のしていることが合わないと思ったときにはすぐに辞めてください。言う人が少ないからこそ、僕は声を大にして「やめるなら早いほうがよい」と言いたいです。

ただ、自分の中で「まだがんばってみたい」と心から思える場合、その選択も応援したいと思います。最終的にその決断の責任を負うのは自分なので、きちんと自分の心に耳を傾けて選んでいってほしいです。

ーなぜ早く辞めたほうがよいのでしょうか?

なぜなら、限られた人生の中で本当にやるべきことにコミットできる時間を失うからです。

僕の場合、好きだと思い込んでいた野球を辞めてから、プロ野球をまったく観なくなりました。それは野球を続ける自分を正当化していった結果で、心から自分が求めていたものではありませんでした。

あなたがもし、真の心の欲求を知っているのであれば、早くそっちに行かなければなりません。あなたの人生は今日も終わっていくからです。

ー過去の荒川さんのように早く見切りをつけられない人がいるのはどうしてなのでしょうか。

人間はいろいろな理由をつけてその場にいることを正当化するからです。「1つのことを続けなければならない」や「自分はこれが好きだからしているんだ」と思い込むのです。

本能的に今いる場所に留まろうとする力が働き、気がついたら5年、10年を失っています。そうならないためにも、その場所から離れることを許してあげて、なるべく早い段階で新しい環境にいく動きをとってほしいと思います。

ー他人のアドバイスと自分の本心が違うときは早めに見切りをつけて次にいくほうがよいわけですね。

他人からのアドバイスを取り入れる際は、その人が自分のことをよくみてくれていることが大前提だと思っています。いろいろな人からアドバイスを受けてきましたが、他者の活かし方がわかっていて、その努力の仕方もわかっている人は非常に少ないです。

そのため、誰の話を聞き入れるのかをきちんと考えてないと、その人のコピーのような人生になり、あっという間に10代も20代も終わります。僕はこの経験から30代はもっと自由に生きてやろうと思っています。

人のアドバイスよりも自分らしくいるための選択と挑戦を

ー高校以降、転機となったポイントはなんですか?

高校野球引退後、友人に誘われたバンドのドラムです。漠然と憧れはありましたが、部活を理由にやらなかったバンド。始めてみたらとても面白く、半年後にはライブにも出演しました。そのとき、まだ始めて間もない僕のドラムを観客が褒めてくれたんです。「向き不向きってここまでわかりやすく差が出るものなのか、、」と痛感した出来事です。

10年間石の上で耐え続けても一度も誰にも認められず、ベンチにすら入ることなく終わった野球と、わずか半年で見知らぬ人に評価されたドラム。その人の評価が絶対ではないにせよ、嬉しかったんです。そこから「もっと自由に生きてやるぞ」という気持ちが芽生え、解放に向かいました。

20代手前で環境による制約と自分の思い込みによる制約がなくなり、これが「向いているということか」と思えた体験が僕を変えたきっかけです。

ー荒川さんのように自分を活かせる部分を見つけるにはどうしたらよいでしょう?

「試すこと」と「メンターを見つけること」です。

いろいろなことに手を出すのはよしとされない風潮がありますが、それでは何が合っているかはわかりません。そのため、自分のことがわかるまで試すこと。そして「この人は自分のことがよくわかっており、聞くに値すべきアドバイスができると思う人」からのアドバイスをもらえる環境が大事です。

自分で見える自分には限界があるので、それ以上のものを発掘してもらいたいと思ったら他者の視点を借りること。きちんと応援してくれる人、個性に対して適切なアドバイスをくれる人を見つけることがとても重要です。