NPOワーカー荒川隆太朗に聴く自分らしくいることの大切さ

「やりたいこと」から見えてくる本当の「自分らしさ」

ー20代以降も転機はありましたか?

心理療法のひとつであるプロセスワークとコミュニティオーガナイジングを学んだことです。

小中学校でいじめられた経験から人の心に興味を持ち、大学では心理学部に入学。心理学部のメンバーが集まって数日間の合宿生活を行い、自己理解や他者理解を深める取り組み(エンカウンターグループ)に行った際にプロセスワークに出会います。自分の気持ちが浄化していくような感覚があり、10代の頃のトラウマを抱えていた僕にとってとても意味のあるものでした。

また同じ時期に精神疾患についても学び、「病む人を生み出す社会構造に問題があるのではないか?」と疑問を持ちました。原因療法である社会活動に着目し、労働問題に関心が強まる中でたまたま労働組合の方に呼ばれたのがコミュニティオーガナイジングです。

ー大学卒業後はどのように団体を設立しましたか?

当時は「社会活動だ!」と燃え盛っていたので、具体的にどうしたらいいのかもお金になるかもわからない中、たまたまNPOを作ろうと誘ってくれた友達と一緒にGiftを設立しました。しかし、間もなくその友人と喧嘩し、4大卒のフリーターが誕生。

当時は過去のトラウマから安心感や所属感、承認欲求が満たされていない中で、自己実現のためにプロセスワークとコミュニティオーガナイジングを仕事にしなければと思い込んでいました。

ー自己実現をする前に満たしておくべきことがあるのですね。

マズローという心理学者が説く5段階欲求では「安心感や所属感、承認欲求が満たされてはじめて自己実現が可能になる」とされています。

自分を深く観察して、自分がどの段階にいるのかわかっていれば、僕のように混乱した人生を送る必要はなかったのではないかと思います。もしかしたら、普通に暮らしながら本当の意味で自己実現ができたかもしれません。

ーそこから現在の取り組みに至るまでの経緯を教えてください。

Giftから別のNPO団体を転々として最終的にGiftに戻ってやり直したいと思ったんです。そこから自分の持っている知識を使ってNPO向けのサービスを1つ開発することができました。

コミュニティオーガナイジングジャパンでも25歳の頃に理事にならないかと提案を受け、28歳まで理事を努め、28歳で代表に就任。20歳の時に出会った団体とまたご縁があり仕事をさせていただいています。

ーGiftに戻ってきた時の心境については如何でしたか?

形は変わっても同じような問題から抜け出せない状態が続いていたので、メンバーを信頼できなかったり、自分のやりたいことを優先してしまったりしていました。

なかなかサービスが形にならず、メンバーと苦しむことが多かったです。その中でもがむしゃらにもがいて「どうにかして形にしなくては」という思いで休みなく取り組んでいました。

あなたがあなたらしくいること以上に大切なことはない

ー改めて大事にされている価値観はなんですか?

自分はもちろん周りの人にも大事にしてほしいのは「自分らしくいること」です。それはつまり、自分自身の本質を生きることだと思っています。本質とはそれを差し引いた時にそれでなくなってしまうものです。

思い込みや環境によって本質が見えなくなり、自分らしく生きられなくなってしまうので、自分を観察し、よく知ってください。また、成長と共に行動や信念は変わり続けますが、本質は変わらないと思っています。昔と比べて変わったものと今も変わらないものの分析を重ね「自分の本質はなにか?」を見極めることが大事だと思います。

自分の本質を生きていくために、これからも見つけていきたいと思っていますし、皆さんもこの記事をきっかけに考えながら生きてくれたら嬉しいなと思います。

ー今後の展望について教えてください。

繰り返しになりますが、自分の本質から人生を生きていってほしいです。思い込みや、やりたいこと、周りの期待によって僕らしさを失うことが多かったので、今から30代にかけてこれまでの活動をすべて見直していきます。

季節が変わると衣替えをするように、時が過ぎていく中で自分が生きる場所を何度でも変えてよいと思っています。そして、そんな変化を楽しめる仲間が増えたらいいなと思っています。

ー10代、20代にアドバイスをどうぞ!

本当に大事なことなので何度も言います。皆さんの今いる環境が一番自分に合っているか証明できますか?仮にうまくいっていたとして、これまでうまくいってきたことによってそれが自分自身の正解であると正当化された答えになっていませんか?

自分らしく生きることを望むのであれば、自分らしさを追及するために、もっと自分を活かせる環境や生き方はないのかを真剣に考えてみてください。

最高の環境かどうかを改めて考え、その場でする努力だけではなく、環境を作るための努力をしてください。自分の努力によって最高の環境は作っていけると僕は信じています。

また自分の思い込みを知る努力もしてみてください。自分の常識は一歩外の世界に出た途端に崩れます。そういう経験を重ねて、自分の思い込みの大小、合っているのか否かの判断材料を増やしていくとよいです。

環境と思い込みは自分を壊すものでもありますが、向き合えば自由になり自分らしくいられる強い武器となるので、ぜひチャレンジしてみてください。

ーありがとうございました!荒川さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:丸山泰史
執筆:篠実里(Twitter
編集者:松村彪吾(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter