自分とのつながり、誰かとのつながりを大事にできるように。通全堂 稲葉通全

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第948回目となる今回は、経営者や個人事業主向けのパーソナルサービス『通全堂』代表/心と身体の調律師 稲葉通全(いなば みちまさ)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

つらい過去を受け入れ、みずからと同じ境遇の人々を助けたいと語る稲葉さん。自分の居場所を見つける方法や、人生を豊かにするものごとの考え方についてお聞きしてきました。

つらかった学生時代。「自分の居場所がなかった」と語る

ーまずは自己紹介をしてください。

通全堂代表の稲葉通全と申します。心と身体の調律師という肩書きで、経営者や個人事業主の方の心身を整える活動をしています。

ー「心と身体の調律師」とはどのようなお仕事なのですか?

主にパーソナルセッション(相談者が抱える悩みの根本を明らかにし、解決の糸口を探す手法)をしています。私のセッションでは心や身体だけでなく、神経系から心身の機能を整えていきます。

例えば呼吸法や眼球運動、神経生理学に基づく手法を使って心身の不調改善やパフォーマンスを改善する方法などです。

ーどのような方におすすめですか?

肩こりや腰痛など慢性的な症状をおもちの方、自律神経の不調や漠然と不安を抱える方におすすめです。

また心身の豊かさや、生き方を大切にしたいと願う方の力になりたいです。

特に経営者さまや個人事業主さまなどの自分の理想を実現するため日々奮闘されている方々に、同じ事業家として寄り添えたらよいなと考えています。

ーお仕事をする中で難しいと感じたことを教えてください。

行なっていることを言語化して、お客さんにわかりやすく説明することです。

身体や精神の感覚を言葉で表現することは簡単ではありません。そこで私は療法の説明にエンタメ要素を交え、わかりやすく翻訳してお客さんに伝えられるよう注力しています。

ーこのお仕事をしようと思ったきっかけを教えてください。

過去に心身の不調で苦しんだ経験があり、自分のような状況に置かれた方を救いたいと思ったのがきっかけです。

ー当時10歳での転機について教えてください。

「世界から自分の居場所がなくなった」と感じた経験をしました

小学校のスポーツクラブで剣道を習っていたのですが、当時はADHDの傾向が強かったのです。それが原因でまわりから気持ち悪がられ、クラブの保護者から嫌がらせを受けました。

学校でのいじめに加え、放課後にはほぼ毎日剣道の練習があったため、幼いながらストレスや生きづらさを感じていました

ー家族は助けてくれなかったのですか?

当時は家庭環境もよくなく、家にも居場所がありませんでした。安心できる場所がなく、環境や人から否定され続けたためとてもつらかったです。

ー当時を振り返ってみてどのようなことを感じますか?

つらかったですが、現在の活動につながる大切な気づきが得られたと思っています。また自分自身が構成されるきっかけになったため、現在は当時のできごとを受け入れられています

自分を受け入れ心地よさを追い求めることが大切だと学ぶ

ー21歳での転機について教えてください。

大学時代は自分が自分でいられる場所を探すため、国内外を旅するようになりました。

ところが世界中のどこにも居場所を見つけられず落胆。しかし絶望と同時に自分の過去を振り返り、過去の自分に対して「つらかったよな」と慈愛の気持ちが生まれました

この出来事をきっかけに、自分という存在や過去を少しずつ受け入れ自己肯定することができるように。そして同じような苦しさや痛みを持つ方を助けたいと思い始めました。

また自分に優しくすることで、初めて誰かに純粋に優しくできるのだとも感じました。

ー稲葉さんにとっての「居場所」とはどのような場所ですか?

自分の中に居場所があると思っていますみずからを受け入れれば、居場所はいつまでもなくなりません。また最も身近な存在である自分が理解者であり応援者であり最高の友であれば、人生がより豊かになると感じています。

自分の中に居場所ができることで初めて、多くの人との関わりの中でも居場所があると感じられるようになりました。

ー10代、20代の方の中にも自分の居場所について悩んでいる方は多いと思います。そのような方へのアドバイスはありますか?

まずは心地よいと感じる場面を大切にすることが重要です。例えば「散歩して心地よい場所」や「話すと落ち着く人」などです。心地よいと感じる「時間」や「人」または「感覚」などを多く見つけることで安心感が生まれます。

また環境が合わないときは逃げてもよいと考えています。環境に無理やり合わせて、自分自身を押し殺すのは何よりもつらいことだと感じているからです