「今」を諦めない社会を作る。中学生起業家・加藤路瑛が事業に込めた思いとは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。今回は中学生起業家として活動されている加藤路瑛さんにお話を伺いました。若干中学1年生にして起業し、現在は自らの課題でもある感覚過敏をテーマにした事業に取り組まれている加藤さん。中学生にして起業を決意した理由や現在取り組まれている事業への思いなどを話していただきました!

YouTuberになりたい!が起業の最初のきっかけだった

ーまずは簡単な自己紹介をお願いします。

現在中学3年生の加藤路瑛です。中学1年生の時に株式会社クリスタルロードを起業しました。現在は2020年1月からスタートさせた感覚過敏研究所の運営を行っています。

ー起業に至るまでのお話を聞かせてください。起業以前はどんな生活を送っていたのですか。

幼稚園から体操教室・水泳・ピアノを習っており、仮面ライダーやポケモンが好きなごく一般的な子供でした。ダンボール戦機というアニメにはまったり、友達とゲームして遊んだししていました。

ー何がきっかけで起業を考えることになったのですか。

YouTuberになろうとおもったのが初めのきっかけです。小学5年の頃から理科の実験を実況するYouTubeチャンネルにはまっており、僕も理科が好きなので理科の実験を実況するYouTuberになりたいと思いました。

そこから、理科の実験をするために必要な毒物劇物取扱責任者の資格を取ろうと思い独学で勉強をはじめました。しかし、何も知らないところからのスタートだったので、まずは基礎である元素を覚えるところからやるべきだと両親に買ってもらったのがケミストリークエストというカードゲームでした。そしてたまたまその帯に「小学生で起業したスーパー高校生社長考案」と書かれてあったのを見て。中身よりも先に起業という言葉に興味を持ってしまいました。

ー起業までそんな流れがあったのですね。

母が子連れ出社オッケーの会社で働いていたので一緒に会社に行って働いている人たちを見ていたことやスーツ姿に憧れがあったことなどもあり、働いてみたいという気持ちがありました。また、祖父母が民宿をやっていたのでお手伝いをしてお小遣いをもらったことがあったのですが働いてもらったお金で好きなものが買えるって最高だなと思っていたんです。なので小学生で起業して働いている人がいるなら、「自分も!」と思いました。

ーそれで起業してしまうのがすごいですね…具体的にはどのようなステップをとって起業されたのですか。

まずは両親に相談しました。これまでもやりたいことがころころ変わるタイプだったので、両親はまたすぐにやりたいことが変わるだろうと思ったようで、「いいんじゃない?」と軽く流されてました。次に担任の先生に相談しにいったところ事業計画書をまずは作成してみてくださいと言われました。初めて事業計画書というものを作る中で改めて自分が何で起業したいのかを考えることになりました。

社長になるのに年齢制限はありませんが15歳未満は法人設立ができません。法人登記に必要な印鑑証明が取れないからです。でも、親が代表取締役、子どもが取締役社長という方法なら中学生の僕でも株式会社の社長になれます。僕はこの方法を「親子起業®︎」と名付け、親子起業という選択肢を伝える事業ができたらと思いました。事業計画書を作製し、最終的には校長先生に1人でプレゼンをしに行って、起業の許可をもらいました。起業の許可をとったのは、私立中学に通っていたので、好き勝手やって退学にならないように念のため許可をもらっておきました。

ーチャレンジに寛大な担任の先生だったのですね。起業の資金はどのように調達されたのでしょうか。

資金調達にはクラウドファンディングを活用しました。115万円の支援をいただくことができ起業を実現することができました。

 

自身の悩みでもある感覚過敏に向き合うことを決意

ー現在は感覚過敏研究所をメイン事業とされているとのことですが、具体的にどのようなことをされているのですか?

感覚過敏研究所は3つの軸を持って活動しています。1つ目は感覚過敏の啓蒙活動、もう1つが感覚過敏の方向けの商品サービスの企画・制作・販売、そして3つ目が感覚過敏の研究です。これらを全てボランティアではなくビジネスとして成立を目指しているのが感覚過敏研究所になります。

感覚過敏の啓蒙活動としては、感覚過敏のキャラクターを作成し、感覚過敏の困りごとを可視化する感覚過敏マークを作成し、普及活動に取り組んでいます。この感覚過敏マークを利用して、最近ですと、感覚過敏のためにマスクをつけられない人のための意思表示カードを作成して無料ダウンロードできるようにしたり、視覚や聴覚の過敏さでオンライン授業や会議が辛い人向けに困りごとを伝えるバーチャル背景も作成して無料提供しています。

ー商品としてはどのようなものがあるのでしょうか。

啓蒙活動の一環として視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触角といった諸感覚の過敏さによる困りごとを可視化させた感覚過敏マークを作成し、それを缶バッチにして販売しています。その他にも肌に触れないでマスク代わりに使用してもらえる「せんすマスク」も開発し販売しています。

啓蒙活動中ではありますが、ビジネスの視点で言えば、市場を作り温めているフェーズだと考えています。そのため現在の一番の目標は感覚過敏を多くの人に知ってもらい、ファンやサポーターを増やすことです。

ー周りからの反響はいかがですか。

たくさんのポジティブなフィードバックをいただいています。マスクがつけられないために登校できるか不安だった生徒が、研究所で作成したマスク着用の意思表示カードを使って相談することで、マクスなしでも登校できるようになったという話や、ヘルプマークと一緒に感覚過敏バッジをつけることで周りからの理解を得られやすくなったという声も届いています。

ーなるほど…素晴らしいですね!そもそも、感覚過敏にフォーカスしようと決めたのはどのような理由があったのですか。

父に、「せっかく会社を持っているのなら、自分の困りごとを解決してみては」と言われたことがきっかけです。僕自身が感覚過敏でやりたいと思ったことを諦めてきた背景が実はあります。旅行先では地元の名物を食べたいと思っても気持ち悪くなるのではないかと思い諦めたり、遊園地に行った時は音や匂いで気分が悪くなってしまったりしていました。ずっと気になっていたことではあったので、父の言葉を機に感覚過敏と向き合ってみようと思ったんです。

感覚過敏には様々なものがあります。例えばパソコンやスマホから出てくる光が苦手だったり、機械音で体調が悪くなったり。缶バッチがきっかけでどんな感覚過敏があるのかをたくさんの人に興味を持ってもらえたらと思っています。

現在は感覚過敏の方向けのファッションブランドの立ち上げ準備も進めています。触角過敏があると服の縫い目が痛かったり、服の重さを感じて辛くなったりして、着られる服が限られています。感覚過敏を理由におしゃれすることを諦めている人、外出するのを諦めている人にストレスの少ない衣服を提供できればと考えています。

 

感覚過敏をテクノロジーで解決する

ーすごい行動力ですね。起業してみてよかったことや大変だったことはありますか。

起業して最初に取り組んだのは、小中高生に起業情報や様々な職業を紹介するメディア事業だったのですが、起業してよかったことは学校にいるだけでは知ることができなかっただろう世界を知ることができたことです。本来なら出会えなかった人に出会えたこと、できなかった経験ができたことに尽きると思います。

ー会社を経営する中で学業との両立はいかがでしたか。

実は起業後、在籍していた私立中学校からN中等部に転校をしました。元々感覚過敏であることもあり騒がしい環境である学校が苦手だったのですが、それに加えて起業がきっかけで周りの人たちとの価値観が合わなくなったことが理由です。

せっかく受験して入った中学校だったので迷ったのですが、中学2年生になってから少しずつ通わなくなり最終的に転校を決めました。その選択が正しかったかは正直分かりませんが、また新しい環境で新しい人と出会うことができて楽しく過ごしています。ただ、私立中学をやめたのは学業の両立ができなかったからではないので、両立はできるものだと思います。

ーそうだったんですね!最後に、今後の展望について教えてください。

感覚過敏の困りごとをテクノロジーで解決したいと思っています。脳波の研究をはじめています。今はその第一歩をやっと踏み出せたという状況です。最終的には感覚過敏という概念や言葉すら不要な世界を作りたいですね。

個人的に感覚過敏は才能でもあると思っています。ソムリエなど味の違いに過敏だから向いている仕事があったり、自分の感性を表現できる感覚過敏の方が芸術家に向いている場合もあったりします。視点を少し変えるだけで、感覚過敏であることはたくさんの可能性を広げてくれると思うんです。

僕はニューロフィードバックという脳波の研究に興味を持っていますこの理論を応用できれば、感覚を自由にコントロールできるようになるかもしれません。このテクノロジーを活用することができればきっと感覚過敏で困っている人の解決に繋がると思っています。

長期的な目標としては年齢や性別、国籍、病気や障害、そしてお金や常識などで「今」をあきらめなくていい社会を作っていきたいと思います。僕は常識や固定観念をぶっ壊そうと言っていますが、今が幸せだと感じれている人は今のままでいいと思います。でも、何か不満を感じているなら、常識や固定観念の外側にある世界をみなさんにも見てもらいたいと思っています。まだまだこれから起業家であると同時に挑戦者として、できることから少しずつ頑張っていきたいです!

ー今後の益々の活躍、楽しみにしています!

取材:西村創一朗(Twitter
執筆:松本佳恋(ブログ/Twitter