自分を優位にはしなかったが、自分の武器となった心理学。心理学ライター加藤達也が語る心理学の面白さとは

ワーキングホリデー・語学留学のためアイルランドへ渡航予定だったもののコロナの影響を受け延期となり、現在心理学ライターとして活動されている加藤達也さんに今回はお話をお伺いしました。


心理学にハマった意外な理由や心理学ライターとして発信されている内容、面白い心理学の話までたくさんお話いただきました。

心理学でコンプレックス克服を無意識に目指していた

ー本日はよろしくお願いします!まずは簡単に自己紹介をお願いします。

加藤達也です。2020年3月に大学を卒業し、現在は実家のある北海道で心理学ライターとしてフリーランスで活動しています。本当は大学卒業後にアイルランドへワーキングホリデーと語学留学に行く予定でしたが、コロナの影響で行けなくなってしまいました。

ー心理学ライターとは具体的にどのようなこと書かれているんですか?

心理学というと幅広いですが、特にセルフマネジメントに関する記事を書いています。具体的な内容で言うと、集中力やモチベーション、習慣化、タスクマネジメント、スケジューリングについてです。

ー心理学に特化していると言うことは、心理学について勉強されていたんですか?

はい。高校1年生の時にテレビでメンタリストのDaiGoさんを知ったのがきっかけでした。当時は心を読むパフォーマンスをテレビでされていたんですが、その時に「この人すごいな」と感動して独学で勉強をはじめました。それ以来ずっと心理学を勉強してます。

ーなぜ心理学にそれほど魅力を感じたんでしょうか?

当時はただすごいなと思って勉強していたのですが、今振り返ると心理学にハマった理由は2つあるなと思っています。1つは単純に人を驚かすことができて、そのリアクションが見れるのが嬉しかったんだと思います。もう1つは自分のコンプレックスが関係しています。

ーコンプレックスをお持ちだったんですか?

はい。中学生の時は上下関係の厳しいバスケ部に所属していていじめのようなものを受けていました。高校でもはじめのころはあまり学校に馴染むことができず…

また大学受験も上京する予定はなかったのですが、センターの結果を受けて志望校を変更しました。浪人したものの、自分の希望の大学に合格できず、こういう言い方はあまり良くないかもしれませんが、滑り止めで受かった日本大学に進学となったことが学歴コンプレックスでした。今思えば、大学に入ればいくらでも心理学の勉強ができたのでもっと受験勉強に集中するべきでしたね。

そういった経緯で人よりも優越していたいというコンプレックスを持っていたんです。

ーそれが心理学にハマった理由にも関係していると。

そうです。心理学を勉強してメンタリズムを身につければ人より優位に立つことができると思ったんだと思います。勉強ができなくても心が読めれば、相手より上の立場に立つことができるかも、と。

ー心理学を勉強してみて優位に立てたと感じましたか?

優位に立てるようになったとは思いませんね。心が読めると言うと怖がられることはありましたが(笑)

心理学を学んでいることを話すと興味を持ってくれる人も多く、学んだことが活きるようになってきて、人間関係でそんなに困らなくなりました。優位になると言うよりも、自分の武器にはなったかなと思います。

恋愛に振り回された大学生活

ー心理学を勉強するべく、心理学科に入学し大学生活はどうでしたか?

高校時代は吹奏楽部だったので音楽を続けようと思い、オーケストラのサークルに入りました。そして入って1ヶ月で同じサークルの彼女ができたんです。人生で初めて彼女ができたのもそうですが、何よりこれまで学んできた心理学を実践することができたことがとても嬉しかったです。心理学を勉強してきてよかったと思いました。

しかし、その彼女とは2ヶ月で別れてしまい、また次にできた彼女も同じサークル内だったことで気まづくなってしまい結果的にサークルは2年生で辞めました。その後失恋し、何もやる気になれなくて、人生どん底気分でした。でも失恋をきっかけに立ち直り方を模索する中で、自分にもっと時間を使おうと思うようになりました。恋愛に振り回されるのではなく、自分の興味のあることに時間を使えるようになったと思います。

と言いつつもつい最近までずっと引きずっていましたが(笑)

ー具体的にはどんなことに時間を使うようになったんですか?

心理学をもっと人に伝えたいと思い、友人の繋がりで心理学のセミナーやワークショップを開いたりしました。心理学の話ができるのがとても楽しかったです。そういった活動をする中で出会った方に、YeLL株式会社の北村さんを紹介していただき、YeLLでのインターンを経験させていただきました。

ーYeLLのインターンではどのようなことをされていたんですか?

YeLLに興味のある人に会いに行ってサービスの話をしたり、YeLLが主催するイベントのお手伝いや、YeLLに関わってくれている方が主催する勉強会のことを記事にしたり、名刺を作ったりといろいろな経験しました。

しかし心理学を勉強していたこともあって、どうしても論理が先立ってしまい行動ができない人間だったんですが、インターンを通してまずは動く、やってみるという習慣が身につきました。

ー何かYeLLのインターンで記憶に残っていることはありますか?

大学4年生の時にいただいたフィードバックで「加藤君は自分のことしか考えてないよね」って言われたことです。グサッときました。「そんなことはない!」と言われた時は思ったんですが、グサッときてる時点で図星なんだなと思いました。

そのフィードバックを受けてなんでそう思われたのか?どうしてそういう印象を持たれのか?を考えました。考えてみたら、YeLLでは「好きなことして良いよ」という文化があったので私は自分の興味のあることしかやってなかったんです。でも本当であれば、YeLLの現状の課題・タスクからやった方が会社のため、利益になります。その点を考えずに好きなことをやっていたからだと気付きました。

これは今も気をつけないと表面化しやすい点だと思っています。なのでそれが誰かのためになるのか?と問いかけることを日々心がけるようにしています。

就職ではなくワーホリは逃げ?

ー就職ではなくワーホリを選ばれていますが、就活はされたんですか?

はい。心理学を活かせるところと思い、人材系を多く受けていました。人と関われるところ、組織のマネジメントに関わる仕事につきたいと思っていました。が、あまり順調には進みませんでした。心理学を面接で活用できると思っていましたが、それはあくまでも一次や二次選考だけで、最終面接になると好印象を持ってもらうだけでは通りませんでした。

自分がどう会社に貢献できるかのアピールが苦手で、心理学の話はあまり面接ではしていませんでした。心理学も自分よりもっとできる人がいると思っていたので心理学は自分のアピールポイントにならないと思い込んでいたんですよね。能力コンプレックスがまだ残っていて、人柄だけで内定をもらおうとしていました。

ー就職浪人や就職活動を続けなどの選択肢もある中、ワーホリを選ばれた理由はなんだったんですか?

夏にYeLLに海外からインターン生が来たんですが、その時に全く英語で話せず、もっと話せたら良いのにと思ったのが大きいです。ワーホリの存在自体は3年生の時に知りましたが当時はパスポートを持っていなかったので応募できませんでした。でもその後パスポートを取得していたので今なら応募できると思いました。

初めはイギリスに応募したんですが、抽選に外れてしまい、その後アイルランドにもワーホリ制度があることを知りそちらも応募してみたら通りました。逃げの選択かなとも思いましたが、アイルランドや北欧諸国は幸福度も高い国とされており、心理学を学んできた中で、「人がどうやったら幸せに生きられるのか」ということを学びたくて、せっかくのチャンスだし行こうと決めました。

ーしかしコロナの影響で中止に。

アイルランドに行く前日にワーホリ協会の方からコロナの影響で語学学校が閉鎖したと連絡が来ました。ちょうど東京で実家に荷物を送る引越し作業をしていた時に(笑)。

どうしようもないのでまた行けるようになるまで、とりあえずお金を貯めようと思いましたが、コロナでバイトもできない状況。そこで業務委託のライターの仕事があることを知り、心理学ライターとして活動することにしました。そこから繋がって、ランサーズさんとLiving Anywhere Commonsさんの共同イベントでセルフマネジメントについてお話しする機会をいただいたりもしました。

ーライティングに心理学は役立っていますか?

読者の心理を考えて書いたりすることに役立っていると思います。読みやすい文章であること、信憑性があることなどは特に意識して書いています。

心を読むことは実は不可能

ー実際のところ、相手の心を読めことはできるのでしょうか?

誘導などをすれば別ですが、心を読むことは基本的に不可能です。が、読んでるように見せることはできます。例えばバーナム効果を利用すれば、誰にでも当てはまることをその人に合わせた形で伝えることで「自分のことを分かってくれている、心を読まれた」と思わせることができます。なので唐突に「今何考えてるでしょう?」と聞かれてもその人が考えていることを当てることはできません。

他にも共感力がポイントとなっており、共感性を高めることによって相手がどう感じているかをわかるようになります。共感力を鍛えるトレーニングをして、相手の気持ちに共感や理解をできるようになれば、相手の心を読んでいるように見せかけることができます。

ー誰にでも当てはまること、だとどのように伝えるのですか?

例えば普段の食生活や運動の有無を聞いてみます。もし、「朝昼晩と奥さんの料理を食べていて、運動は頑張って今月から走るようにしている」と言う答えがあったとしたら、「運動不足を感じていて、「頑張って走るようにしている」と表現していたことから、普段はあまり運動する習慣はなさそう。食生活はおそらく問題ないはずなので、最近リモートワークになってお菓子を食べることが増えたのかも、運動に関してはストイックではさそうだ。朝ごはんも食べているし、朝起きるのが早いと以前話していたから、生活習慣は正しく、仕事はストイックなタイプ」と推測することができます。

でも、実際はお菓子なんて誰でも食べますよね。それにリモートワークになったことで運動不足を感じるようになった可能性も考えられる。確実に当てることは難しいですが、与えられた情報から関連性が高いことを連想ゲームのような感じで考えると該当するケースが多いんです。

心理学を一度、勉強してみてほしい

ー心理学の面白さをもう少し教えていただけますか?

今であれば、コロナで人に会えない状況での人間関係においても、心理学を利用してできることがあります。例えば、リモートにおける人間関係で相手に好印象を持ってもらうには普段より1.5倍くらいテンションを高くして話すことです。これは人事の方などでも実践している方が多いと思いますが、zoomなどのオンラインだと画面越しで肌感覚や空気感がわかりにくくなっています。また、オンラインで話している時はスマホを触ったりしない、いわゆる「ファビング」をしないことですね。

また、心理学において人は自分が取った行動で相手の行動も決まるとい言う考えがあります。分かりやすい例だと、自分が小さい声で話すと相手も小さい声にで話しますよね。なので相手に好印象を持って欲しいなら、相手が好印象持ってくれるような動きや目線、空気感を画面内で作らないといけません。

他にも面白くて、納得できる話がいっぱいあるので、ぜひ皆さんにも一度、心理学の勉強をしてみてほしいです。人間にはこういう心理があるのか、ということがわかってとても面白いと思います。

ー心理学を学ぶ上でおすすめの入門書はありますか?

読みやすいと自分が思える本であればまずはなんでも良いと思います。心理学の本にはポップな心理学とアカデミックな心理学があります。最初から、名著と言われているようなアダムグラントの「GIVE & TAKE」を読むよりも、心を読むなどがメインのポップな読みやすい心理学の本から読んだ方が入りやすいと思います。普段あまり本を読む習慣がなければ、一冊読み切れないことでモチベーションがさがって読む気をなくしてしまうので、自分の興味のあるジャンルから少しずつ学んでいくことをおすすめします。

他にも、説得する際のテクニックとして交通安全の看板に関する話があります。交通安全の看板を家に立てたいですと依頼する前に、まずは交通安全シールを家のどこかに貼ることを依頼し、その2週間後に看板を立てていいか?と聞いた方が承諾している確率が上がると言う話です。

つまり人は一貫した行動を取ろうとします。心理学の勉強に関しても、交通安全の看板と同様にで、先に簡単であってもいいので心理学の情報に触れておくことで、学術的な心理学についても抵抗感が減り学びやすくなります。

ー心理学の学び方を心理学で語ると説得がありますね…!最後に、加藤さんの今後の展望を教えてください。

今新たに始めようと思ってることとしては、6月から「Psychology College@online」をはじめる予定です。心理学を学びたい人向けに毎週土曜日21時から1時間、心理学の授業を実施しようと思っています。

ライターとして発信する中でダイレクトなリアクションが見えなかったのでモチベーションを感じずらい部分もありました。なので一方的な授業ではなく双方にコミュニケーションがある授業にしようと思っています。

ーそれは楽しみですね。今後のご活躍も期待しています!

<取材:西村創一朗、執筆:松本佳恋、デザイン:>