様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第839回目となる今回は、ファミリーツリー株式会社代表取締役の安藤 仁希(あんどう・ ひとき)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
オーストラリアでの自然や農に魅了され、帰国後は農業に取り組んだ安藤さん。果樹園農家で様々な課題に直面し、農家支援のためにWebマーケティングのノウハウを学んだのち、ファミリーツリー株式会社を設立します。「日本の農家を救い、国産の果物を次世代につなぐ」ためにどのような決断をしてきたのか。安藤さんの人生を通して決断の大切さを伺いました。
次世代に国産果物をつなげて課題解決のためにできること
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
ファミリーツリー株式会社代表取締役の安藤仁希と申します。「日本の農家を救い、国産の果物を次世代につなぐ」ために、農業体験や食育、農家支援などの活動を通じて、課題解決に取り組んでいます。
主なサービスとして、果樹園の木のオーナーになれる「マイクロオーナーサービス」を展開しております。我々が全国の果物農家さんと提携し、個人や法人の皆様には1本から果樹のオーナーになっていただけるサービスです。その木の成長過程から収穫までの農業体験・収穫体験を通して果物の大切さや面白さ、奥深さを提供しています。
ー成長過程は、現地に行かずともインターネット上で確認できるのでしょうか?
はい。毎月1回農家さんから届くレポートをマイページ上で確認できます。農家さんの文章や写真から、木や果物の成長を感じていただけます。
例えばみかんの場合、12月に収穫するとなるとその2ヶ月前に間引き作業があります。1つの枝に10個ほどみかんが実るので、酸っぱいみかんを8個ほど間引いて、2個だけ残していきます。そうすると、2ヶ月後には完熟した甘いみかんができます。
この時間軸こそが食育として伝えていきたい価値であり、そのためにも親子で一緒に楽しめるプラットホームを運営しています。
ー主にどういった方々がサービスを利用されるのでしょうか?
個人では、幼稚園から小学生までのお子さんがいるファミリー層が多いです。法人だと、従業員のために福利厚生でサービスを利用してくれていますね。農家側の目線に立てることが一番の面白みだと思います。
家庭や野球の環境で、家族・仲間を大事にする価値観を形成
ーここからは、安藤さんが今に至るまでの過程や転機をお伺いします。静岡県浜松市のご出身だそうですが、どのような少年時代を過ごしていましたか?
小学生から野球漬けの日々を過ごしていました。中学生のときは全国ベスト4に入る強豪クラブチームに所属し、高校も甲子園出場を目指す高校球児でした。
また、クリスマスや正月の集まりなどイベントを大事にする家族で育ちました。父親は人を集めるのが好きなタイプで、よく近所の人たちが集まりに来ていましたね。家族や仲間との一体感を大事にする価値観は、家庭環境や野球で養われたと思います。
ー幼少期から今につながる価値観が形成されたのですね。高校進学も野球を軸に決定されたそうですが、高校生活はいかがでしたか?
甲子園に行きたい夢が最優先だったので、野球に専念できる私立の甲子園出場校を選びました。
高校生活はとても楽しかったです。学校生活は野球部の仲間と楽しく過ごせました。また、部活では個を伸ばす練習を重視していたので、やりがいを感じながら野球ができていたように思います。
ただ、甲子園には出場できませんでした。最後の夏の大会も早めに負けてしまい、ショックで一週間ほど家に引きこもった時期があって。ずっと野球をやってきたので、心にぽっかりと穴があいてしまいました。当時、一番の挫折でしたね。
ー挫折からどのように立ち直ったのですか?
何も考えられない時間が続いたのが逆に良かったのかもしれません。それだけ自分は一生懸命野球に取り組めたと思えたので、これからは楽しいことをしようと吹っ切れました。
ー高校卒業後はどのような進路決定をされたのでしょうか?
大学で勉強したいことがなく、野球を続けようとも思っていなかったので就職を選びました。ただ、当時はキャリアのことを全く考えていなかったんです。学校に届く求人情報の中から、地元にある大手自動車部品メーカー企業を選びました。
ー就職してからはいかがでしたか? 安藤さんの価値観に通じる転機があったそうですね。
初めて社会に出てみて、意外と世の中の父親は家族のイベントごとに興味がないんだなと。僕の両親は家族の時間を大事にしていたので、家族に対する価値観の違いを感じました。
そのギャップを感じたからこそ、今の事業につながっていると思います。僕はハッピーな家族を増やしたいんですよね。サービスを考えるときに、父親も自発的に楽しめるような家族みんなで参加できる農業体験にしていこうと決めました。