水泳で日本一になった市川尊が、今、サイバーエージェントでビジネスに120%コミットするワケ

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第80回目のゲストは株式会社サイバーエージェントの市川尊さんです。

 6歳から始めた水泳に、22歳までの16年間を捧げてきた市川さん。高校時代には、全国ジュニアオリンピックカップ優勝に優勝し、世界選手権選考会兼全日本選手権では3位の成績を収め、オリンピアンと肩を並べて泳いでいました。大学卒業後は一転、その熱量をビジネスに打ち込むべく株式会社サイバーエージェントへ入社。社会人3年目の現在は、グループ企業である株式会社ドットマネーに出向し、営業責任者を務めています。

何事にも全力で投資し、「人生、沈んだことがない」と話す市川さん。そのエネルギーの向かう先に迫りました。

 

環境が人を作る

ー本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介と、現在のお仕事を教えてください。

市川尊(いちかわ・みこと)です。社会人3年目で、株式会社ドットマネーにて営業責任者を務め、プロダクト開発から営業戦略までを担っています。

ドットマネーは株式会社サイバーエージェントのグループ企業で、2年目の年から出向となりました。1年目はサイバーエージェントの新卒採用を行う人事職に従事していました。

現在は、サイバーエージェントで出会った仲間と、YouTubeチャンネル「LOCO HOUSE /ロコハウス」の運営もしています。

 

ーまだまだ社会人3年目ですが、すでに会社の中核を担うポジションにいらっしゃるのですね。市川さんの熱量の賜物かと思いますが、学生時代は何に打ち込んでいたのでしょうか。

6歳から大学卒業までの16年間、水泳に全力で取り組んできました。結果として、高校3年時に全国ジュニアオリンピックカップで優勝、大学3年生で世界選手権選考会兼全日本選手権3位という成績を収めることができました。

 

ー輝かしい功績ですね。水泳を始められたきっかけは?

もともとは身体が弱く、喘息を治すために始めました。当時、通っていた水泳スクールには同期が2人いて、2人とも小学生から日本一になるようなエリートスイマーだったんです。

正直、劣等感はありました。私は愛媛育ちなんですけど、同期たちはよく遠征で東京へ行っていたんですよね。私はまだ結果が出せてなかったので、当然、ひとり残ります。すると、学校の友人が「あれ?ひとりだけ行かないの?」と聞いてくることも…。

ただ、その後、自然と水泳にのめり込んでいったのは、2人のおかげです。日本一になる人との練習は、すなわち日本一の練習環境だったと思います。「これくらいできて当然」のレベルが日本一のレベルなんです。特に意識せずとも、自分が目指すべき水準も向上していきました。

「人を作るのは環境なんだな」ということをその時に学べましたね。

 

ー日本一の環境で育ったというのは非常に幸運ですね…!

高校3年生のときに、私も日本一になる経験をして、ジュニアの日本代表にも選ばれました。それまでは受験で大学進学を検討していたものの、水泳の推薦入学が可能になり、上京して明治大学に進学することにします。

そこでよりストイックに水泳に向き合うようになりました。高校までは、勉強と水泳を両立させていました。しかし、大学は水泳の推薦入学なので、水泳で結果を残すことが最優先になります。勉強は最低限するものの、ほとんどの時間を水泳に費やしました。

朝、まずは水泳。昼は大学で講義を受ける。夕方になればまた水泳…。4年間はずっとそんな生活でした。お金も思考も時間も、全て水泳に投資しました。それだけひとつのことに全力を注ぐ経験はなかなかできないと思うので、実りある大学生活でしたね。

 

また、部活動は上下関係も厳しかったので、そういった部分で精神力も鍛えられました。「あれを耐えたんだから、何があっても大丈夫」と思えるのは、いまも活きています。

 

ー全日本選手権3位というところまで上り詰め、しっかりと結果を残された裏には、圧倒的な努力があったんですね。しかし、水泳は大学まで、という決断をしたのはどうしてですか?

ぜひ、みなさんに質問したいです。「水泳選手の名前を挙げてください」と言われて、何人の名前を口にできるでしょう?水泳はマイナースポーツです。名前の知られていない選手はたくさんいます。そして、私は皆が知っている北島康介選手のような天才ではないことを自覚していました。

「影響力をもって、人の人生にきっかけを作りたい」と考えていました。たとえ、水泳でオリンピック選手に選ばれたとしても、与えられる影響の幅は小さいと思えたんです。それで、影響力を付けるのであれば、ビジネス領域の方が大きなことができそうだ、と。それまでの16年間で水泳に投じてきた熱量を、ビジネスに向けることにしました。

 

「人」と「環境」で会社を選ぶ

ービジネスに邁進するぞ、と決めて就職活動を選んだわけですね。企業を選定する軸はなにかありましたか?

「人」と「環境」で選んでいました。とにかく魅力的な人と働きたい、という想いが強かったんです。私の中で、魅力的な人というのは「壮大な未来は描きつつ、その未来へ向うために今やるべきことを考え、泥臭く実行できる人」です。

そして、環境が人を作るということを水泳を通して実感してきましたので、より高いレベルの環境に身を置きたいと思っていたんです。

最終的に、サイバーエージェントか株式会社リクルートかの選択になりました。どちらも私が求める人と環境が揃っていると感じました。結果として、サイバーエージェントを選んだのは、よりエンタメ色が強いからです。現在運営しているYouTubeチャンネルにも表れている通り、エンタメに強い関心をもっています。「なくても生活はできるけど、あったら生活が楽しくなるもの」を次々と世に送り出している部分に魅力を感じ、サイバーエージェントへの入社を決めました。

 

ー人、環境、そしてエンタメ領域の強さからサイバーエージェントを選ばれて、実際に働いてみた感想は?

入社前と入社後のギャップはありませんね。特に、若手にチャンスがありそう、というのは、入ってみても実感する機会がありました。

内定者の頃から、代表である藤田にプレゼンをする機会が設けられていました。実際に、内定者で起業をしたメンバーもいます。私も、インフルエンサービジネスの案を練って、藤田に直接メッセージを送っり、事業化に向けて動いていた時期もありました。

手を挙げたものにチャンスがくる、という環境はやりがいを感じています。

 

ー年齢で評価しない、素晴らしい社風ですね。新卒1年目の業務内容を教えてください。

人事として、新卒採用を行っていました。インターンの企画や、本選考の運営など全般的に任されていましたね。

サイバーエージェントグループは、一体となって採用をすすめていきます。そのため、グループ会社の役員や事業部長の方などとの接点も多かったです。様々な事業で活躍されている方の思考を肌で感じる機会を1年目から得られたのは財産になりました。

 

実体験が、仕事の納得感を深める

ー印象的だった出来事はありますか?

8月くらいでしょうか、営業職に就いた同期たちがめきめきと成果をあげている様子を見て、「本当に人事で良かったんだろうか」と悩むようになっていました。そんなとき、私が主導で企画運営をした3日間のサマーインターンが開催されたんです。

3日間で、参加してくれていた学生たちの目の色が変わっていく場面に立ち会えました。ある学生さんは「尊さんのおかげで、人生が変わった」とまで言ってくれたんです。そこで、採用人事という仕事は、なんて素晴らしいんだと気付けました。

それまでは目先の成果が欲しくて、焦っていたんですよね。ダサかったな、と思います。影響を与えることが自分のやりたいことで、人事であればそれができるんです。それを体験できたことで、仕事に対しての納得感が増しました。

 

ー2年目からは現在のドットマネーで働かれていますね。そちらに移られたのはどうしですか?

目に前の人に影響を与えた経験を通して、より以前からの想いが私の中で大きくなりました。そして、「自分で事業を作りたい。経営を学ぶには、経営者のそばで働きたい」と考えるようになったんです。

ドットマネーを選んだのは、やはり人と環境です。ドットマネーは、サイバーエージェント内の子会社のラインキングで当時1位でした。また、代表の鈴木英が、私が魅力的だと思う「壮大な未来は描きつつ、その未来へ向うために今やるべきことを考え、泥臭く実行できる人」を体現している存在だったんです。

 

大事なことは「感謝と謙虚さ」 

ー人事から営業へキャリアチェンジをしたわけですが、困難はなかったのでしょうか?

もちろん、キャッチアップから苦労はしましたね。ただ、夢中で頑張っていたので、難しかったけれど、苦しいわけではない、という状態でした。

最初のハードルを乗り越えるために、とにかく働きました。先輩方と対等に働くためには、まずは量をこなすしかない。そう思って、誰よりも働きましたね。

また、事業への理解を深めるために、代表とのコミュニケーションを頻繁にとるようにしたんです。オフィス内の席も、常に代表の隣をキープして、言動を目で盗んで学ばせてもらいました。

 

ーその結果、入社から2年目で営業責任者に抜擢されたんですね。今後の展望をお聞かせ願えますか?

ドットマネーをさらに大きな会社にしたいなと思っています。その過程で、私が学べることもまだまだあるでしょう。それらが、もっと先の未来の可能性も拡げていってくれると感じています。

営業責任者を任せていただけていますが、周りへの感謝を忘れず、常に謙虚でいたいです。代表に比べたらまだまだの存在です。そうやって上を見続けることで、成長していけると思います。

私の名前は、「尊敬される人になるように。そしてなにより、人への尊敬を忘れないように」という両親の願いを込めて「尊」と付けられました。今後も、関わっている方々への尊敬を忘れずに、上を目指していきたいです。

 

ースポーツで鍛えられた向上心が、市川さんの土台にあるように感じました。本日はありがとうございました!

 

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取材:西村創一朗(Twitter
執筆・編集:野里のどか(ブログ/Twitter