自分で自分を好きになること。Crankle西村薫が考える「等身大の教育」とは

スイスの子どもたちと出会い、日本の教育に課題意識をもつ

ー自己肯定感が崩壊した高校時代。進路選択や、大学進学後のお話も伺いたいです。

私は昔から「なんであんなことを言ったのかな?」「なんで怒ってるんだろう?」など、人の気持ちや言葉を気にするタイプで、高校の頃から心理学を勉強したいと思っていました。

ただ、カウンセラーになりたいわけではないと思ったときに、教育心理という学科をたまたま見つけて。教育心理学部へ進んだ結果、教育が面白すぎてのめりこんでいきました。入学当初は教育をやりたいとはあまり思っていなかったのですが、不思議ですね。

ー大学入学後、具体的にはどのような活動をしていたのですか?

日本の子どもは自己肯定感が低いとよく言われているけれど、本当にそうなのか確かめるため、「世界中の子どもたちに会いに行く」という目標を掲げました。まず最初に選んだのがスイス。ボランティアという形で英語もわからないまま飛び込み、3週間ほど滞在しました。

ボランティアの内容は、スイスの子どもたちがサマーキャンプへ参加するお手伝い。そこでは「君はフリーにしてていいよ」と、何も指示が出ず、私が一番苦手な環境で苦しい時間を過ごしました。

一方で、子どもたちはすごく堂々としていたのです。ルールもなくて指示も出ない環境で、自分がやりたいことを自分で選択して、そこに自信をもっていました。指示に従うことが良いとされる日本と、指示がなくても本質的に動けるスイス。そこに大きなギャップがあると思ったのです。

ー日本とスイスの子どもたちの違いを目の当たりにして、当時はどのように感じましたか?

日本の子どもたちの、与えられすぎている環境は良くないという課題意識をもちました。例えば、親が決めた習い事へ行く、親が買ってきたテキストを使って親が決めたページをやるなど、与えられたものをただ受け入れてこなす子どもたちが日本には多い。自己選択の機会の少なさが、自己肯定感の低下にも関係しているのかな?とも思いました。

不登校の子たちは私にとってはヒーロー

ースイスの子どもたちを見て、日本の子どもたちに課題意識をもった西村さん。日本へ帰国後、どのように活動していたかお聞かせください。

日本にも、ルールや禁止事項がない場所を作りたいと思いました。ちょうど「子どもたちの心を育てられるような遊び場があると良いな」と思っていたときにプレーパークを知って、私もやってみようと思った2週間後には、プレーパークを一人で作っていました。

ー心を育てられる遊び場というのは?

遊具は遊び方が決まっているけど、プレーパークにある木材や道具は使い方が決まっていなくて、私から何か指示を出すこともない。何も与えられていない環境で、子どもたちがやりたいと思ったことをやって、大人はそれを制限しない。そんな場所のことを指します。

ープレーパークの立ち上げから、今の活動に至るまでをお聞かせください。

プレーパークで過ごす中で、不登校の子やふさぎ込んでしまっている子など、プレーパークに来てもなかなか馴染めない子がいると気づきました。

私は学校に従ってきた結果、主体性を奪われてしまった部分もあるので、学校から飛び出している子たちは私にとってはヒーロー。だけど彼らは「行けない自分はダメだ」と落ち込んでいたので、「君たちは最高なんだよ」と言いたくて、フリースクールに携わり不登校の子たちと過ごし始めました。現在は一人暮らししている家を月に何回か開放して、子どもたちの居場所を作っています。

そんな中で、フリースクールにも来れない子たちは引きこもりになってしまっているんだなと思い、その子たちにも手を差し伸べるため、個人事業主として家庭教師を始めました。プレーパークでの活動がどんどん発展していって、Crankleに行きつきました。