自分で選択し、全力でやれば道は切り拓ける。CACTUS TOKYO・熊谷渓司の人生観

正論を伝えるだけでは意味がない。起業への原動力

ー新卒入社された企業に5年間勤められたとのことですが、入社してみていかがでしたか。

経営企画に配属になり、CSR推進などで環境問題に関わることはできていました。とは言え大手企業なので、大きなフレームに大きな組織をどう合わせていくかを考えるのが仕事。自分が課題だと感じたことにストレートに取り組みたかったため、やりがいを感じられなかったのが正直な感想です。

就活の失敗経験や仕事の物足りなさが原動力となり、社外での活動に力を入れていました。環境系のNPOに参加したり、環境問題を解説するブログを運営したり。思いつくことに手当たり次第に取り組んでいましたね。

ー社外の取り組みから学ばれたことがあれば教えてください。

ブログの運営から、正論を伝えるだけでは意味がないと学びました。

そもそもブログを始めたきっかけは、生活と環境問題のつながりについて多くの人に知ってもらい、問題解決に向けて社会全体で取り組めるようになってほしいと思ったから。

しかし、環境問題に興味のある人からしか読まれず、手応えを得られませんでした。検索メディアなので、興味を持たない人は記事まで辿り着かないんですよね。正論を伝えて興味を持たせるのではなく、普段の生活にフィットする形で何かを変えてあげることが必要なのだと気づきました。

ーその後「CACTUS TOKYO」を立ち上げ独立されていますが、どのような経緯で起業されたのでしょうか。

ブログの題材を集めていた時に、植物由来のレザーに興味を持ちました。ファッションに関わる取り組みなので堅苦しくなく、人々の生活にも寄り添える。ブログを通じて感じた課題にフィットしたんですよね。自営業の人が多い家系だったのでいつかは独立したいと思っており、サボテンレザーでの挑戦を決めました。

現実的に事業が回るのか考えるためには、かかる費用を把握することが必要です。工房に片っ端から連絡・訪問し、門前払いを食らうこともありました。最終的にはご縁があり、ある工房がビジョンに共感してくれて。

助けていただきながらなんとかクラウドファンディングを実施でき、無事成功したという経緯です。

自分で選択し、全力でやれば道は切り拓ける

ー今後、どのような事業展開をお考えですか。

このブランドのものが売れれば売れるほど地球が回復する。そんなブランドを目指したいと思っています。現状は65%以上が植物由来の素材ですが、今後90%以上まで引き上げるとサボテンレザーの生産元が公表しているんです。

「CACTUS TOKYO」という名前の通り今はサボテンレザーを扱っており、自分自身もベストな素材だと思っていますが、今後より良い素材があれば挑戦したいですね。農業など一次産業まで含めてファッション全体を見つめ直し、自然や生態系の回復に直接貢献できるブランドとなることが理想です。

ーやってたいことがぼんやり浮かんでいるにも関わらず、行動できずにいるUー29読者もいると思います。そのような読者に何か一言をお願いします。

自分で選択し、一つひとつ全力でやれば道は切り拓けます。

その時なりでも自分が心から最善と思える選択を重ねると、振り返った時に一貫しているところが見えるんですよね。全力で取り組んで違うと感じたら軌道修正できる。人生ってその繰り返しなんだと思います。

小さな回り道はあっても大きな方向性は変わらず少しずつステップアップしていく「わらしべ長者」を日々全力でやるイメージですね。

もちろん、自分で選んだことをやるのは簡単なことではないし、辛いことの方が多いです。一歩踏み出した後も選択の連続になりますからね。本当に目指しているものがあるなら行動してほしいですし、そこまででないと思うなら無理をしなくても良いと思います。

選んで、次のものまでとにかく全力で走る。自分はそうしてきたおかげで、行きたいところに行けている実感があります。

ー本日はありがとうございました。熊谷さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:あすか(Twitter
執筆:田中沙都(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter