マネジメントに苦戦し、大きな挫折を味わった
ー直感を信じて意思決定されたのですね。実際に入社してみていかがでしたか?
入社2年目で全社MVPをいただくなど、最初は順調でした。
その後グループリーダーを任され、マネジメントや評価を行うことになってからは本当に辛かったです。人生の他の時期が100点だとしたら、この時はマイナス50点くらい。ストレスからくる帯状疱疹で1週間仕事を休んだこともあります。
ー特に辛かったのはどのような部分だったのでしょうか?
メンバーの評価やフィードバックがつらかったですね。当時は社会人3年目だったので、僕よりも年上で経験豊富なメンバーの年収決定に関わるのもストレスでした。
僕は人と仲良くなることは好きですし、その人の伸びしろに気づくことも得意だと思います。ただ、それを相手に伝えるのが苦手だと感じました。メンバーのポテンシャルを引き出す関わり方などを考えすぎて、コミュニケーションがチグハグになってしまうんですよね。
結局は「マネジメントよりも、僕が活躍できることがあると思う」と上司に相談し、事業のビジョン・ミッションを再定義するプロジェクトのオーナーをやらせてもらうことになりました。コーポレートビジョンをもとに、アルバイト求人事業でどのような課題をどのように解決していくのかを改めて考え直す仕事です。
ー業務内容はご自身の性格とマッチしていると感じましたか?
かなりマッチしていました。答えのないことを思考する仕事なので、今まで好きでやっていたことを仕事にする感覚でしたね。
ーその後、スタートアップに転職されていますね。仕事が合っていたにも関わらず、次の道に進む選択をされたのはなぜでしょうか?
自分に合う仕事がわかったからこそ、個人としてより使命感を持っている領域に挑戦したくなり、転職を決めました。
仕事では、正規・非正規雇用の待遇格差など、社会問題の構造について考えることが多くて。大学時代から抱えていた「人の幸福や地域についての問い」と「仕事で考える問い」が、深いところでだんだん繋がってきたんです。仕事で考える際は事業ありきですが、都市と地域という自分にとって一番関心のある領域のことをもっと考えたいと思うようになりました。
2社目に選んだのは、友人に紹介されたスタートアップの株式会社ポケットマルシェ(現在は株式会社雨風太陽)です。地方の一次生産者と都市の消費者の関係性をどのようにかきまぜるかを考えている会社で、個人のミッションを追求するには最適な環境でしたね。
行動指針をベースに、ご縁と直感を大切にする
ー株式会社ポケットマルシェではどのような日々を過ごされたのでしょうか?
とにかく必死で働いていました。
農業・漁業にも経済的な費用対効果を重視する流れがありますが、それを追求しすぎることは農家・漁師さんの幸せに必ずしも直結しないと僕は考えていました。農家・漁師さんと直接やりとりをして野菜や魚を購入し、思いを馳せて食べることは非常に尊い行為だと思うんです。
農業・漁業の担い手はどんどん減り続けていて、高齢化も深刻な問題です。「このままではいけない」という危機感が強く、ミッションを背負いすぎてしまいました。ポケットマルシェは素晴らしいサービスですし、大好きな会社だったのですが、仕事に心身が追いつかなくなって体調を崩し、退職に至りました……。
ーその結果、週3業務委託の兼業フリーランスという現在の働き方に至ったのですね。
そうですね。週5フルタイムという決められた枠の中で働くのは苦手だと前々から感じていたのですが、「フリーランスになりたい」と意気込んでいたわけでもなくて。知り合いの紹介で現職に出会い、ここもまた直感で決めました。
ー紹介経由での意思決定が多く、ご縁や直感を大切にされている印象を受けました。
ご縁や直感という感覚はすごく好きです。理想から逆算して進むのは得意ではないですし、そうしたいともあまり思えないのです。
僕の場合は「格差をなくしたい」とか「二項対立をかきまぜたい」という大枠の方向性はあって、その時々で適切だと思ったものを選択してきました。意思決定の選択肢は日常にも無数にあるはずですが、タイミングが合わない機会には気づいてすらいないと思います。でも、それでいいと思っています。
なるようになるし、タイミングが合えばピンと来る。直感はその時点での最適解だと思っているので、深く考えすぎずに気楽に生きられていると思います。
ーなんとなくの理想を抱きながらも、変わらない毎日を過ごしているU-29読者もいると思います。そのような読者に何か一言をお願いします。
大きな方向性を描きながら、直感という行動指針をベースにしてよちよちと這っていた結果、僕は今楽しく生きています。
理想を実現させるために無理して特別なことをしなくても、それでも人生は楽しく過ごせる!心からそう伝えたいですね。
ー本日はありがとうございました。中垣さんの今後のご活躍を応援しております!