様々な生き方がある!マルチポテンシャライト國中玲から学ぶ「自分に正直になること」の大切さ

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第636回目となる今回は、写真家・植物療法士・ソーシャルワーカーの3つの軸を持つ、國中玲さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

苦しい経験をしつつも、自分に正直に生き、写真家・植物療法士・ソーシャルワーカーとして活躍する國中さん。感受性が豊かがゆえに、生きづらさを感じていたが、人との出会いで、変化が起きる。自分自身の気持ちに正直になることで生きやすくなると気づいた國中さんの生き方を、これまでの人生からひも解いていきます。

写真家・植物療法士・ソーシャルワーカー3つの顔を持つ

まず、簡単に自己紹介をお願いします。

写真家・植物療法士・ソーシャルワーカーと複数の仕事をしています。

まず、写真家のお話から聞かせてください。どのような写真を撮ってらっしゃるのでしょうか。

おもに、ドキュメンタリーやスナップ、日常の写真を多く撮っています。特に、社会的課題を抱えている方の写真を撮ることが多いです。直近だと、不登校男子のリアルな日常を撮りました。約2年間、朝昼晩を一緒に過ごしながらの撮影でした。

学校のコンペに入賞したことがきっかけで、渋谷TSUTAYAで写真集の販売もしました。

コンペ入賞や渋谷TSUTAYAで展示をされるくらい、素敵な写真を撮られていますね。何か意識していますか。

撮る相手がどういう人なのか、考えながら撮るようにしています。自分では思わないですが、周りからは「一瞬の表情を切り取るのが上手い」と言われます。

また、植物療法士としても働かれているとのことでしたが、どういうお仕事なのでしょうか。

植物療法士とは、植物を使い、自身の自然治癒力を高め、身体の調子を整えていく仕事です。植物療法の種類は、アロマセラピーから森林療法、ハーブ療法、園芸療法など多岐にわたります。

植物療法を使い、おもに、セミナーや商品販売、コンサルティング、カウンセリングを行なっています。企業の商品プロデュースもします。

さらにソーシャルワーカーとしても活動されているとか。どのような活動をされていますか。

現在、特定非営利活動法人ら・ら・らの理事として、楽ちん堂カフェという地域のコミュニティハウスを運営しています。

一般的に福祉事業は、高齢者は高齢者、障がい者は障がい者しか利用できない“縦割り”の仕組みです。しかし、ら・ら・らでは縦割りではなく、誰でも利用可能なのです。そんな、どのような人も受け入れる理事長の考えに惹かれて活動をしています。

新たな価値を生む“マルチポテンシャライト”

國中さんの特徴でもある、マルチポテンシャライトについて教えてください。また、マルチポテンシャライトならではの強みなどありますか。

マルチポテンシャライトは、1つのことにとらわれず、いろいろなものに興味が湧く人と捉えています。

一つひとつの職業、スキルがリンクし、新たなものができる。これがマルチポテンシャライトの強みだと思っています。1つの職業だけでは、なし得ない何かが生まれるのです。

例えば、写真家とソーシャルワーカーの組み合わせで、はじめにお話しした不登校男子をテーマにした写真集ができました。テーマとなった子が楽ちん堂カフェにいたからこそ、日々の生活をともにでき、日常の写真を撮ることができたのです。

マルチポテンシャライトで大変なことはありますか。

大変なことが多いです。あれもこれもと手を出すので、手を出した分だけタスクも増えます。昔、同時に3つの仕事を一手に引き受けてしまい、パンクしたことがありました。

その経験から今では、自分のキャパシティを客観視し、それぞれの仕事を調整するようにしています。相手にも、今の状況でできること、できないことを伝え、明確な線引きをするようにしています。この調整は、毎回大変ですね。

そして、周りの視線での苦労もありました。少し前まで、あれもこれもやることに対して、浮わついている、地に足着いてないと言われ、世間から批判的な目で見られることが多かったです。1つの職業をしっかり極め、それで生計を立てていくのが普通だと。自分は中途半端なのかなと悩みましたね。

今では、中途半端なのかなと悩むことはなくなりましたか。

まったく気にしないと言ったら、嘘になります。ただ、最近は、いろいろな働き方が出てきて、周りの理解も深まってきたので、前ほど気にならなくなりました。

また、いまは自信を持って言えることがあります。中途半端なのではなく、組み合わさるからこそのオリジナルの価値があると。先ほどお話した通り、写真とソーシャルワークの組み合わせでできた写真集が自分の実績となり、自信に繋がっています。

では逆に、マルチポテンシャライトだからこその楽しさをお伺いしてもいいですか。

1番楽しいのは、様々なことをさせてもらえるので、一つひとつの仕事が毎回新鮮だと感じることです。マルチポテンシャライトの性分なのか、やることが1つだとマンネリ化して、飽きてしまいます。他の仕事があることによって、定期的にそれぞれが刺激になっているのです。

また、交友関係の幅が広がるのも楽しいです。いくつかの仕事を持っているぶん、いろいろなコミュニティに顔が出せるので、さまざまな価値観の人に出会えます。

不登校、引きこもりな私が、外の世界と繋がるようになる

幼い頃のお話を聞かせてください。幼い頃は、不登校、引きこもりだったとか。

みんなで集まる場所が苦手でした。私は、よく周りの人に感受性が豊かだと言われていました。実際に、人の感情に敏感な部分があります。そして、人に対して気を遣い、疲れてしまっていたのです。幼稚園と小学校は、行ったり行かなかったり。中学生になり、完全に学校に行かなくなりましたね。

セクシャリティの問題もあったとのことですが、そこも関係していますか。

私のセクシャリティはゲイなのですが、幼いときはゲイという言葉を知らず……。感覚的に、恋愛の興味対象が違うことはわかっていていました。そして、人と感覚が違うことがばれないように過ごしていましたね。

その後、通信制の高校に入り、恩師との出会いで変化が起きたとか。そのときのお話をお伺いしてもいいでしょうか。

恩師とは、面接で出会いました。面接のときに恩師が、「子どもたちはダイヤの原石です」と言ったのです。今までそんなことを言う先生はいなくて、驚きました。同時に、自分を肯定してくれているみたいで嬉しかったです。幼少期から引きこもっていた私は、自己肯定感が低かったので、この言葉にとても救われました。

在学中、恩師は、嫌な顔ひとつせず逐一相談に乗ってくれました。とても親身に話を聞いてくれたおかげで、少しずつ頑張ってみようという気持ちが芽生えたのです。

福祉での経験が、また1つ自分のターニングポイントになったとか。

実家が福祉の事業経営をしており、手伝いたいと思い、ヘルパーの資格を取りました。また、福祉ボランティアもしました。

福祉の世界を知ったことで、「世の中、いろいろな人がいていい」と思えました。認知症で言ったことをすぐに忘れて、同じことを何度も言うおばあさんがいたり。障害を持っていて、上手に言語化できない方がいたり。はじめて、そういう方に出会ったときはすごく衝撃を受けましたが。

でも、触れ合っていくうちにだんだんと、一人ひとりいろいろな人がいて、個性があって、面白いと思えるようになりました。人と違うことをネガティブに捉えるのではなく、それぞれ面白い個性を持っていると捉えることができました。