「いい学習体験」をつくりたい。学院長・松下雅征が考えるモチベーション維持のコツ

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第601回目となる今回は、松下雅征さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

松下さんは現在、コンサルティング会社の才流(サイル)がつくるサイルビジネス学院高等部の学院長として、学校の立ち上げに従事されています。モチベーションとメソッドをテーマに、「いい学習体験」をつくりたいと話す松下さん。学校立ち上げに至った経緯や、モチベーションを保つコツについて伺いました。

テスト勉強は嫌。でも、好きな分野にはとことん向き合った学生時代

ーはじめに、自己紹介をお願いします!

株式会社サイルビジネス学院 代表取締役の松下雅征と申します。

弊社はビジネスの立ち上げ方を学びながら高校卒業資格を取得できるオンラインの学校『サイルビジネス学院高等部』を運営しています。2022年4月に開校した学校で、私は現在、学院長として学校経営をしています。

ー現在、学院長として活躍されている松下さんですが、どのような幼少期を過ごされていたのでしょうか?

そうですね。小・中学校時代は「テスト勉強が嫌すぎる」学生時代を送っていました(笑)。とくに、12歳のころはテスト勉強嫌いが顕著だったと思います。

ーもともと、勉強が苦手だったのでしょうか?

いいえ。誰しも勉強やテストに苦手意識を抱くものだと思いますが、私はもともと学習意欲がかなり高いタイプです!とくに、好きなことや興味のあることに関してはとことん勉強をする人間でした。

当時は、生き物や環境問題に関心を持っていたので、知識を得るために本を読んだり、わからないことを調べたりしていたのを覚えています。

ただ、テストのために何かを暗記することや勉強をすることはすごく嫌だったんです。

ーなるほど……。テストのための勉強が嫌だった理由について教えてください。

なぜ、この勉強が必要なのか。なぜ、テストのための暗記や勉強が必要なのかという点がわからなくて、納得できなかったんだと思います。私は要領も悪かったので、勉強に長い時間をかけていたことも原因の1つだったのかもしれません。

幸い、私の場合は学校の先生や周囲の友達に恵まれていたこともあり、勉強のサポートを受けることができました。結果的に自分に合った勉強法も見つかり、成績も上がって、いわゆる学校教育にはまったタイプでした。

ーでは、学校自体は松下さんにあっていたのですね!

そうですね。学校はすごく好きでした!

ただ、時間をかけてテスト勉強をした内容は、大人になるにつれて忘れてしまっていることがほとんど。一方で自ら興味・関心を持ち、ワクワクしながら学習した内容は大人になったいまでも覚えています。

だからこそ、今でも好きなことや興味のあることに対して勉強をする時間がもう少しあればよかったな……との思いは残っています。

モチベーションにはメソッドがある。新たな気づきを得た新卒時代

ーここまで、小・中学校時代のお話をうかがいました。その後は高校・大学と進学されたのでしょうか?

はい。高校・大学と進学し、その後は社会人として働くことになります。

ーでは、学生から社会人になるタイミングのお話について教えてください!

はい。私が就職活動をするなかで大切にしていたのは、ワクワクしながら学習できる環境をつくることです。私はこれを「学習体験づくり」と呼んでいます。

いい学習体験づくりにはモチベーションが大切。だからこそ、社会人として働くなかで、モチベーションをテーマにいい学習体験をつくっていきたいと考えていました。

ーなぜ、学習体験づくりにはモチベーションが大切だと思ったのでしょうか?

私が就職活動していた当時は、オンライン学習が国内で流行しはじめていた時期でした。この流れは加速していくだろう、今後もどんどん発展していくだろうと考えました。一方で5〜10年先を考えたとき、どれだけいい教材やツールが開発されたとしても、結局ワクワク学習するためには個々のモチベーションが重要だと考えました。

というのも、学生時代の私は漫画家になりたいと考えていました。それは、漫画が好きだから。自分も素敵な作品を描きたいというモチベーションがあったからです。もちろん、学習のための整った環境があることは重要ですが、やっぱり最後に学習するかしないかを決めるのは、その人自身が「学びたい!」と思うモチベーションかなと。

ーなるほど!では、新卒で入社した会社は「いい学習体験」につながる会社だったのでしょうか?

はい。私が就職先として選択したのは“モチベーション”をテーマに掲げている、組織人事のコンサルティング会社です。入社してから本当にいろいろなことを学ばせていただきました。

ーとくに印象に残っている学びがあれば、ぜひ教えてください!

入社してとくに印象に残っている学びは「人のモチベーションを扱うメソッドがある」ということ。この会社は勘や経験に依存してきた人のモチベーションに対して、様々な学術的な視点・メソッドを取り入れることで、誰でも扱える技術にすることを大事にしています。

そのなかで、誰もがモチベーションを上手く扱えるようメソッドに落とし込み、成果を出していこう!という文化があり、この文化にとても影響を受けました。

ーモチベーションを扱うメソッドがある……。とても面白い学びですね!

はい。私は、物事への興味関心・やる気は非常に重要だと考えていますが、モチベーションを上手く扱うためのメソッドも大切なんだな……と感じました。今思い返せば、私自身もメソッドに助けられてきた経験があります。

というのも、私は高校時代に部活動で少林寺拳法をやっていたのですが、かなりの強豪校でした。私は未経験から少林寺拳法を始めたのですが、実質2年半程度の練習で全国大会の上位に入賞することができたんです。

思い返すとそれほど練習量が多かったわけではありませんでした。ただ、部活動全体の練習の質がよかったこと、部活動の指導体制としてモチベーションや技術を高めるメソッドが確立していたことが関わっているのでは、と考えています。

子どもたちのニーズに応えるために「サイルビジネス学院高等部」を立ち上げた

ー新卒で入社した会社から、才流への転職、そしてサイルビジネス学院高等部を運営する株式会社サイルビジネス学院を設立するまでのエピソードについて教えてください。

はい。私は、当時マーケティングチームの立ち上げを担当していました。約4〜5年在籍し、手探りの立ち上げ時からだんだんチームが安定するフェーズに入ったことを感じはじめました。そのなかで、自分が元々やりたいと思っていた学習・教育の領域を改めてメインの仕事にしていきたいという気持ちが強くなっていくのを感じたことが転職のきっかけです。

前職では本当にいろいろなことを学ばせていただき、すごく楽しい時間を過ごしました。ただ、できるだけ早い段階で経営や事業の立ち上げに携わりたいとの気持ちがあり、結果的に転職することを決断しました。

ー株式会社才流に転職した決め手はありましたか?

自分のなかで大切にしていた「いい学習体験をつくるモチベーションとメソッド」を深掘りしていきたいと考えたのが大きな決め手でした。

転職先を探していたとき、才流の創業社長である栗原さんが書いたブログが偶然目に留まりました。そこには「メソッドカンパニーをつくりたい」という内容が書かれており、この会社なら自分がテーマに掲げているメソッドを深めていけるのでは……と考えたんです。

ー転職後、サイルビジネス学院高等部の立ち上げを行う松下さん。転職時から学校を立ち上げるつもりだったのでしょうか?

いいえ。当時の才流はBtoBに特化したコンサルティング会社だったことや、私自身が経営をサポートするコーポレートグロースの役割で入社をしたこともあり、BtoC事業である高校生向けの学校立ち上げをできる日がくるとは思ってもいませんでした。

ーもともと別のお仕事をされていたのですね!では、なぜ学校を立ち上げることになったのでしょうか?

才流で課せられた私のミッションは、これから才流をどう大きくしていくか、成長させていくかを創業社長の栗原さんと一緒に考え、実行することでした。才流のミッションである「才能を流通させる」には、一人ひとりの才能が発揮される社会をつくりたいとの想いが込められています。

より多くの人の才能が発揮される社会をつくりたいという文脈でこれまで企業向けにBtoBのコンサルティングサービスを提供していた才流ですが、一般の人たちに向けたいわゆるBtoCの事業もやっていくべきだと考えたんです。

BtoCといっても色々な事業があるなかで、才流が学校事業を選択した理由の1つはニーズがあると考えたから。というのも、テクノロジーの発展によって社会の在り方や働き方が多様化しているなかで、子どもたちの学習ニーズも多様化しています。しかし、現在の学校サービスでは、子どもたちの学習ニーズとまだまだ差があります。

実際に、学校の先生として働く友人から「最近はビジネスに関心の高い生徒が多いから、夏休みにおすすめのビジネスキャリアやマーケティングに関する本を教えてほしい」と頼まれたこともありました。

いい学習体験をつくりたいという私個人の想いと、より多くの才能が発揮される社会をつくるために多様化する子どもたちの学習ニーズに応えたいという会社の想いが重なったんです。そこから学校を立ち上げることになり、結果として子会社(株式会社サイルビジネス学院)の設立に至りました。

モチベーションを保つには自分に対する解像度を高めることが大切

ーこれまで松下さんは自分の想いに従っていろいろなことを決断されています。物事を決断するときに大切にしていることはありますか?

「自分で決めること」が何よりも重要だと思います。

例えば、飛行機に乗っているとき少し機体が揺れると不安になった経験はありませんか?友人に聞いた話ですが、飛行機を操縦しているパイロットは少しばかり機体が揺れても(乗客よりは)不安にはならないそうです。

なぜなら、ハンドルを握っているのは自分だから。それと同じように、人生の選択でも他人ではなく自分でハンドルを握ることが大切だと思います。自分で決めた選択であれば、失敗しても納得できるはず…!逆に他人の意見に流されて決めた決断だと大きな後悔が残るかもしれません。

ーなるほど!松下さんは自身のやる気やワクワクもすごく大切にされていますよね。好きなことを探求するためのコツは何かあるのでしょうか?

これは先ほど申し上げた通り、いい学習体験をつくるためのモチベーションとメソッドです。モチベーションを保つためのコツは、どんなときにモチベーションが高くなるのか、自分に対する解像度を高めることだと思います。

例えば、英語が話せるようになりたいと考えたとします。では、なぜ英語を話せるようになりたいのか?と自問自答してみてください。海外で働きたい人、国際結婚をしたい人など理由は人それぞれですが、何か明確な理由があると思います。

モチベーションが下がってきたとき、海外で働きたい人なら海外で働きたい人は海外でバリバリ働いているYouTuberの動画をみたり、実際にバリバリ働いている人に会ってみたりすると、モチベーションが保ちやすいかもしれません。ですが、国際結婚したい人が同じことをしてもモチベーションは上がらないと思います。自分に対する解像度が低いと、適切な対策を打つことができません。

インターネットの発展で情報に繋がりやすい時代だからこそ、自分に対する解像度を高めて、適切な情報にアクセスすることがモチベーションを高める上では大切です。

ー自分を理解することが大切なのですね!最後に松下さんの今後の展望について教えてください。

時代にあった新しい学校をつくりたいと思っています。テクノロジーの発展により、働き方の多様化は進みました。学校の学び方も、これから多様化していくと考えます。多様化する学校のかたちの1つとして、サイルビジネス学院高等部はビジネスを学びたい学生にとって最高の学校を、関係者全員でつくり上げていきたいです。

ーありがとうございました!サイルビジネス学院高等部がどのような学校になるのか、とても楽しみにしています!

取材:山崎貴大(Twitter
執筆:ともだ(Twitter
デザイン:安田遥(Twitter