様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第644回目となる今回は、マーケター&eコマースエグゼクティブ兼映像クリエイター・手塚和希さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
マーケターとして活躍しつつも映像クリエイターの講師も務めている手塚さん。ネガティブなことをポジティブに変えて挑戦することの大切さを語っていただきました。
野球に出会った幼少期。キャプテンとしてチームマネジメントを経験する
ーまずは自己紹介をお願いします。
手塚和希と申します。
現在はeCompleteという会社で、マーケターとeコマースエグゼクティブとして、日本のマーケットにイギリスの会社をローンチさせるプロジェクトを行っています。映像制作の依頼があったときは映像クリエイターとして、映像を作っています。
ー具体的にどのようなプロジェクトを行っていますか?
eCompleteでは2つのプロジェクトをメインに行っています。
1つ目が、会社自体を購入して、購入した会社を自分たちの会社の中で育ててから売って、利益を出しています。
2つ目が海外進出したいイギリスの会社をクライアントとして受け持って、海外進出先のマーケット市場を、すべて自分たちでマネージメントしています。
現在ぼくはeCompleteが買収したNeon Beachを日本と中国に売り出すプロジェクトを担当しています。Neon Beachは部屋やバーに飾るためのネオンライトを販売している会社です。
他にも1898年に生まれた、老舗スーツ会社のT.M.Lewinをクライアントとするプロジェクトも受け持っています。日本のマーケットに進出するために、マーケット調査をしたり、ウェブサイトの作成をしたりするプロジェクトの一員として携わっています。
ー2つのプロジェクトは、どのくらいの期間を見据えて、進んでいくのですか?
これに関してはクライアントの会社、買収した会社に問わず3年と決めています。1年目は買収して育てる期間、2年目はその会社の企業価値を高める期間で、3年目は買収した企業を別の会社に売る準備をする期間と考えています。
ーここからは手塚さんの過去を遡ってお伺いします。幼少期はどんなことをされていたのでしょうか?
小さいころから父が野球場に連れて行って野球を見せてくれた影響もあり、5歳から野球を始めました。高校卒業するまでの13年間野球をやっていました。
ー学生のときは、部活に所属されていたのでしょうか?
小学生のときはクラブチーム、中学生のときは硬式野球チームに入りました。高校では学校の部活動で野球部に所属し、3年生のときはキャプテンを任され、部員100人ほどのチームをマネージメントをしていました。
受験に全落ち。人生を変えてくれた師匠に出会い、ネガティブなことをポジティブに変える思考を身につける
ー野球を長く続けられて、そこから受験期に入る18歳のときに大きなターニングポイントがあったと思うのですが、何があったのでしょうか?
18歳のときに野球部を引退して、そこから勉強を始めました。ぼくが通っていた学校は進学校だったので、夏から受験までずっと勉強してましたね。受験では私立大学を受けたのですが、すべて落ちてしまったのです。
そこから「自分は何ができるのだろう?野球も勉強もできないからこれはヤバい」と思いもがいていました。
ーそこからどのように進路を決めていったのでしょうか?
1ヵ月は家族に相談して、もう一年受験勉強を頑張ろうと決めて、塾を探し始めました。最終的に海外大学と提携している英語専門塾に決めて、勉強をしていたらいつの間にか海外にいましたね(笑)。
ーもともとは日本の大学を目指していたのでしょうか?
海外に対して偏見はなかったので、海外の大学に行ってみたい思いもありましたが、塾に入った当初は日本の大学に行こうと思っていました。
ーそうすると、その塾での出会いや学びがその後の進路を決める判断材料として大きかったのかなと思うのですが、どんなことがあったのか教えてください。
ぼくの師匠となる塾長に出会ったことですね。塾というと、勉強ばかりのイメージじゃないですか。塾長は「勉強も大切だけど社会経験も大事だ」とおっしゃっていました。
塾長はアメリカで大学院を卒業されたり、実業家として働いていたりする方だったので、海外生活の話や、海外に行くとできるようになることなどの話をしていただきました。塾長のお話を聞いたことで、ぼくは日本の大学ではなく、海外の大学に行くことを決めたのです。
ー塾長にいろいろなことを教わって、人生が変わっていったとのことですが、何かひとつ覚えている話はありますか?
塾に入った1ヵ月後に「ネガティブなことはすべてポジティブに変えろ」と言われました。
例えば、電車に乗ろうと思っていて、自分が遅れて電車が目の前で出発してしまったとします。そのときに自分が「ああ電車に乗れなかったな」と思って落胆するのではなくて「電車に乗れなかったのなら、次の電車が来るまでの時間で読書できるじゃん」とポジティブな思考をするだけで本当に人生が良い方向になっていくのです。
ぼくはそのときからこの考え方をするようになって、自分の人生がとても楽しいと思うようになりました。
ーそこからイギリスの大学に進学しようと思った理由を教えてください。
塾が提携している海外大学は、イギリスかアイルランドかアメリカの3択で、その中で当時はイギリス英語が魅力的だと思ったのでイギリスの大学に行きました。
ー実際にイギリスに行って印象的な出会いやギャップを感じたエピソードなどはありますか?
日本で当たり前だと思っていることが当たり前ではないことが頻繁にありますね。例えば、電車やバスが時間通りに来ないことは日常茶飯事です。電車やバスが遅れていても、イギリスの人は全然イライラしません。
ぼくが体験したエピソードで印象的な出来事がひとつあります。ある日、電車に乗ろうと思ってプラットホームで待っていたのですが、電車が遅れており全然来ませんでした。プラットホームには150人ほどの人が待っていて、みんなイライラしているのかと思っていたのですが、電車が来た途端に拍手が起こったのです(笑)。
これは日本にいるときと全然違うなと思いました。時間にルーズとは言いませんが、心穏やかに生きているといいますか、何でも寛容に受け入れている感じがしましたね。
他にも土足で家の中を歩き回りますし、机の上に足を乗せる人もいます。あとは、パーティーがたくさんありますね(笑)。
ーイギリスで生活していく中で英語が上達していった感覚はありましたか?
大学1年生までは英語が下手だったので、ついていくのがやっとでした。読み書きは日本でできましたが、聞くことと話すことは全然できませんでした。
そこから聞くことと話すことを続けていると、大学2年生で自分の中で自信が出てきてペラペラと話せるようになってきましたね。英語は話さないと上達しません。
ー日本にいる人が、日本で英語を習得していくとしたら、どういった方法があると思いますか?
いまならオンライン英会話が一般的になってきていると思うので、そのようなサービスを利用して英語を話すきっかけを自分でつくれるかどうかだと思っています。
日本にいるから何かできないと思うのではなくて、日本にいてもできるような環境を自分でどんどん作っていくべきです。
ずっと受け身の授業を受けたり、ただYouTubeを見たりするのではなくて、カフェに行って隣に外人さんが座ってたら話しかけるなど能動的に行動するのが大事ですね。やはり行動するかしないかが、日本にいながら英語を話せるようになるかの大きな分かれ道になってくると思います。
マーケティング業界に就職しつつ映像の仕事も始める。自分にリミットをかけるのではなく挑戦する理由
ー大学時代は就職活動をされたのですか?
イギリスでは新卒採用の概念がないので、日本のような就職活動はありません。どれだけ自分の実力を相手に見せられるかどうかにかかっています。ぼくはいくつもの会社に落ちました。いまの会社に就職するのも6ヵ月かかっています。
自分が仕事をやりたいときに就職する社会なので、会社側も空いたポジションを通年で採用してます。
ーどのような業界の会社を探してましたか?
マーケティング関連の業界に絞って会社を探してました。幅広く探しても経験者しか採用しないので、もし経験のないぼくが金融関係で働きたいと思って、金融関係の会社に応募したとしても、書類選考すらされません。
ーそこからeCompleteに就職されましたが、入社されてすぐは、どのようなお仕事をされてましたか?
最初からスーツ会社のプロジェクトを任されました。全く研修はなく、入って1日目に「これやって。これもできるのでしょう?」と言われて資料を渡されました。日本のように1から育てていくのではなく、実力がある人がポジションにつけるのです。逆に言えば、できなければクビにされます。
ー現在のお仕事の形としては完全リモートでされているのですか?
完全リモートですね。一応、オフィスがロンドンとマンチェスターにあるのですが、オフィスに行かなくても大丈夫です。社長もスペインで仕事してたことがあるので、どこにいても仕事ができます。
イギリスだけでなくて、世界中どこに行ってもいいよって感じですね。従業員も120人ほどいるのですが、半分がイギリスの人で、40人がヨーロッパの人で残りの30人が香港やアメリカにいる人たちなので、本当に世界中で仕事をしています。
ー手塚さん自身もイギリス以外のところで生活されてたことはあるんですか?
仕事を始めて間もない頃にフランスに行って、1ヵ月間バカンスをしながら仕事をしたり、週末に海に行ったりしていました。
ーマーケターのお仕事に加えて、映像クリエイターのお仕事とその講師を始められたきっかけを教えてください。
きっかけはコロナウイルスが蔓延したことです。映像を通して「ネガティブな世界だけど、ポジティブに変えられるようになりたいな」と思ってくれる人が少しでも増えれば良いと思いました。
映像に触れていくうちに、案件をいただいたり、YouTuberの方の映像制作に参加させていただいたりしました。そこから講師として日本人の方に教えるようになりました。
ー手塚さんの人生の軸や信念などはどんなものがありますか?
若い人たちに世界を見て、いろいろなことを学んでほしいので、映像を通して少しでも世界のことを知ってほしいと思っています。日本と海外のそれぞれの良いところを吸収して人間として大きく成長してほしいです。
ー手塚さんの今後の展望をお聞かせください。
もっとマーケティングのことを学んで、自分のスキルを上げていきたいと思っています。映像に関しては、編集を通して、自分の思っていることや考えていることなどを発信できたら良いなと思っています。
マーケティングのスキルがついてきたら、それを利用して映像とマーケティングを掛け合わせたり、他の何かを掛け合わせたりして、いろいろな活動ができたらと思ってますね。まだ24歳なので、何ができるかは分からないですが、自分のことを信じて、どんどん前に突き進んでいきたいです。
ー最後にU-29世代へ、メッセージをお願いします!
小さなことでも何でもいいので、興味を持ったものに「ぼくなんかできないよ」と自分にリミットをかけるのではなくて、とりあえずやってみることです。
ぼくが映像を始めたのも自分のiPhoneひとつからでした。興味を持って触り始めたら、そこからいまの映像クリエイター講師に繋がっています。小さなきっかけが大きくなっていくのだとぼくはいつも思っていますね。
なんでも経験できることは若いうちにしたほうがいいと思いますので、みなさんもどんどん挑戦してください。
ーありがとうございました!手塚さんの今後のご活躍を応援しております!
取材:山本佳奈(Twitter)
執筆:松村彪吾(Twitter)
編集:本庄遥(Twitter)
デザイン:高橋りえ(Twitter)