熱量を力に挑戦する。KOREZO代表・中林健人が語る、飽き性を原動力に変える方法

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第511回目となる今回は、KOREZO代表の中林健人(なかばやしけんと)さんです。

早稲田大学在学中に、ファッションD2Cプラットフォーム「KOREZO」を立ち上げた中林さん。インフルエンサーをはじめ、個人がバイネームで活躍できる世の中を目指して活動しています。

将来やりたいこととのギャップを感じて京都大学工学部を中退し、早稲田大学に再入学した中林さんの原動力はどこにあるのか。中林さんの価値観と現在取り組んでいる事業について伺いました。

アパレルブランドを立ち上げたいインフルエンサーを支援

ーはじめに、自己紹介をお願いいたします。

早稲田大学に通いながら、2021年からファッションD2Cプラットフォーム「KOREZO」を立ち上げました。KOREZOでは、インフルエンサーのアパレルブランド立ち上げの支援事業をしております。現在は、学業とビジネスを両立しながら様々なことに取り組んでいます。

ーKOREZOを立ち上げたきっかけを教えてください。

以前インターンでインスタグラマーに特化したASP事業に関わっていたときに、ブランドを持ちたいインフルエンサーのニーズがあると感じたからです。元々僕も事業をしたいと思っていたのと、両親がアパレル会社を経営していることも後押しになり、インフルエンサーのアパレルブランドを立ち上げる事業を始めました。

ーKOREZOの事業を始める際、どういった点が大変でしたか?

一緒にブランドを立ち上げるインフルエンサーを見つけることが難しかったです。事業を始めたばかりではまだ事例がないので、協力してもらえる方と出会うのに苦労しました。さらに、協力者を見つけて実際に製品化する段階でも、相手のイメージのままデザインやパターンを製図に落とし込むのにも難航しました。打ち合わせを重ねるうちに、インフルエンサーの作りたいものとこちらが作れるものが異なってしまうこともあります。

ー立ち上げは楽しいこともありますが、難しい課題にも直面しますよね。すでに商品はリリースしているのでしょうか?

はい。2021年度は大人カジュアルなレディースブランドを3つ立ち上げ、商品も販売しております。また、2022年度は新たに1ブランドの立ち上げが決定しました。ありがたいことに、インフルエンサーの積極的なPRのおかげで、売れ行きも好評です。また、2022年度はカジュアルレディースブランドの領域以外にフィットネス領域にも着手し、現在2ブランドの立ち上げ・販売が決まりました。

さらに、ファッションを学ぶがっこう「coconogacco」に指導していただき、ブランドそれぞれの魅力をより一層引き出せるように日々精進しています。

京都大を中退し、早稲田大へ再入学。挑戦し続けることが成長につながる

ー先ほど、元々事業をしたい気持ちがあったとおっしゃっていましたが、いつ頃からそう思ったのですか?

大学生になってからですね。実は早稲田大学に通う前に、京都大学の工学部で勉強していたんです。京都大学での学生生活を通して、事業をしたいと思うようになりました。

ーどういったきっかけがあったのでしょうか?

小学生の頃から、介護ロボットを作りたいと思っていました。当時、介護ロボットがニュースにも取り上げられており、それを見て僕自身も、今後は高齢者が増えていくから絶対に介護の手が必要だと考えたんです。でも、目標だった京都大学工学部に進学し、勉強を進めるうちに全然楽しくないと感じてきて。自分はおそらくエンジニアの側面ではなく、ビジネスサイドで事業として介護ロボットを作りたいんだと大学在学中に気づきました。

ー実際に行動したからこその気づきだと感じました。それがきっかけで京都大学を中退し、進路を考え直したのですね。早稲田大学は編入学で進学されたのでしょうか?

いえ、もう一度受験し直しました。当時、経営者になるためには経済の勉強をしないといけないと思っていたんです。最初は京都大学の経済学部に転部するために、成績や学内の取り組みなどを頑張りましたが転部できなくて。他の大学への転入もアカデミックな内容を履修していないと難しかったので、結果的に再入学を選びました。

ーとてつもない覚悟、そして行動力と推進力がすばらしいと思います。幼少期から、やりたいと思ったことはすぐに実行するタイプでしたか?

いえ、幼少期はあまり主体的に動くことはなかったですね。どちらかというと、レールに乗っているタイプ。ただ、自分がこれだと思ったことに対してのこだわりは強かったです。先生に対して論理的に違和感があると、たとえ怒られても折れないほどでした。小学生のときから本を読むのが大好きだったので、それで論理性が培われたのかもしれません。大学受験の勉強も、他人の勉強時間や方法よりも、自分なりの勉強法にこだわりました。

ー例えば、どういった勉強法ですか?

時間を区切りながら、場所を変えて勉強するやり方です。そうすると、場所と内容が紐づき、問題を解く際に思い出せるんですよ。暗記系は主にそういう方法で覚えました。予備校の授業後、みんなは自習室に向かうんですけど、僕だけ教材を持って公園に行った記憶があります(笑)。

ーなるほど。たしかに、人間の脳の記憶と場所はつながっていると聞いたことがあるので、中林さんの勉強法は合理的だと思います。早稲田に入学して、大学生活はいかがですか?

再入学してよかったです。専攻する社会科学部は、環境やエネルギーなどの自然科学と、政治・経済など人文科学からのビジネスアプローチを学んでいます。また、広告研究会に所属しており、そこでの活動経験も自分の成長につながっていると実感しています。例えば2020年に、芸能人を誘致してYouTube配信イベントを実施しました。僕はそのイベントで、1年生ディレクターとして関わることができました。50人ほどのメンバーを巻き込んで、いろんな方々とコミュニケーションをとりながら作りあげた経験が僕を成長させたと思います。

ー積極的に取り組んだことがご自身の成長につながっているのですね。

はい。あと成長の面でいうと、3ヶ月間の期間限定で渋谷に「無料で使えるノマドカフェ」をオープンしました。立ち上げから運営、クローズまでの過程を通して成長できたと思います。さらにインターンとして、インスタグラマーの広告代理店で主にASP事業に関わり、ベンチャー企業の実務やスピードを肌感覚で学べたのも大きいですね。

飽き性でも長所に変換できる。熱量を力に事業を創出・拡大へ

ーご両親がアパレル企業の経営者だと伺いましたが、お互い経営者として仕事の話をすることはありますか?

ありますね。今も相談にのってもらうことが多いです。プライベートはいつも見守ってくれる優しい両親ですが、仕事のことは厳しく整合性を詰めてくれるので、それぞれをきちんと分けて接してくれます。

ー子どもの頃から見ていた親の姿と違った立ち位置を発見したとき、どう感じましたか?

実は家でも仕事の話ばかりする両親だったので、中学生の頃にはすでに経営者としての親の姿を見ていたんですよね。それを違和感なく受け入れていたので、意外な一面はあまりなかったです。

ーご両親といい関係が築けているのですね。自分で事業を始めるにあたって、介護ロボットを選ばなかったのには何か理由があったのでしょうか?

単純に参入障壁が高くて、どこから参入してよいのかわからなかったのが理由のひとつです。それに早稲田大学に入学してから、介護ロボット以上におもしろいものが世の中にはたくさんあると知りました。視野が広がったのも大きいですね。

ーこれまでのお話を伺って、中林さんは心からやりたいと思ったことに対して、すぐに取り組む姿勢を感じました。時間を無駄にしたくない気持ちが強いのでしょうか?

そうですね。実は僕の悩みでもあるのですが、飽き性なんですよ。最初に「やりたい!」と思ったときの熱量はかなり高いので、そのタイミングですぐに手を動かさないと口だけになりそうなのが怖くて。だから、思いついたときにすぐやるようにしています。

ー熱量のあるうちに手を動かしているのですね。飽き性だからこそ、長所につながっている部分はありますか?

構造を理解できる点で長所になっていると思います。どういうことかというと、飽き性になる理由に「今後の展開が読めてしまう」のが原因だと感じていて。例えば、Aをやったら次にBになってCになるだろうと、すぐに頭の中でわかってしまうから飽きると思うんです。その分、飽き性ではない人に比べて、Aというものが今後どういう構造で進むかを判断するのが得意だと感じますね。

ー俯瞰して物事を見るのが得意なのは、ビジネスにも活かされますよね。もしよければ、飽き性で悩んでいる方にアドバイスをお願いします。

飽き性のままでも長所につながると思いますが、もし改善したいのであれば、周りの人を巻き込んでみてください。そうすると責任感を持たなければいけなくなるので、飽きることもなくなると思います。それに一度やってみたら、思っていたものと違う問題が出てくることもあって、それが楽しいと感じて続けられるようになると思いますよ。

ーありがとうございます。2021年はKOREZO立ち上げのターニングポイントだったと思いますが、中林さんの今後の活動を最後に教えてください。

まずはインフルエンサーと一緒に、ブランド立ち上げから運営を形にして、さらに広げていきたいと思います。KOREZOから人気ブランドをつくっていくことが明確な目標ですね。他にも「bamboooo」という学生団体に携わっており、エンターテインメント×テクノロジーの力で新たな事業を創出しています。2022年に、自分たちが心からいいと思えるエンタメコンテンツに出会えるSNSプラットフォームをリリース予定です。これからも熱量を持って挑戦していきたいですね。

取材:武海夢(Facebook
執筆:スナミ アキナ(Twitter/note
デザイン:高橋りえ(Twitter