境町を日本一おもしろい町に!正社員のかいちょうがマルチクリエイターになるまで

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第456回目となる今回は、町会議員×経営者×クリエイターのかいちょうさんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

現在、町会議員のかたわらでYouTuberや経営者としても活躍されているかいちょうさん。正社員からフリーランス、町会議員になった経緯や原動力、今後のビジョンにかける想いを語っていただきました。

クリエイティブなことが好きだった学生時代

ーまずは簡単に自己紹介と現在のご活動を教えてください。

マルチクリエイターのかいちょうと申します。

現在は地元茨城県の境町会議員として働きながら、クリエイター兼経営者として地元密着型Youtubeチャンネル「境町TV」の運営や地元専門誌「TOWN」の創刊、コミュニティスペースの開店(7月予定)など幅広く活動しています。

境町を日本一おもしろい町にすべく活動中です!

ー現在、様々な分野でご活躍されているかいちょうさん。どのような幼少期や学生時代を過ごされましたか?

漫画やアニメ、音楽が好きな子どもでした。幼少期は家にたくさんあった絵本を読んで育ち、その後はコミックスやアニメのドラえもんを観ていた記憶があります。

僕の地元は田舎で、近くに本屋さんやゲームセンター・駅すらありませんでした。高校を卒業するまで電車に乗ったこともほとんどなかったくらいで(笑)。そのため、漫画や音楽にのめりこんで、絵や小説、音楽を自分でも作ってみたいと考えるようになりました。

中学生になり、実際に自分の制作した小説や楽曲がSNSで評価されたことをきっかけに、はじめてものづくりの楽しみを知りました。

また、学生時代から人前に立つことは苦手ではなかったこともあり、中学高校では生徒会長を経験。その経験から、現在「かいちょう」と名乗って活動しています。何もないからこそ、自分が持っている素材で楽しもうというマインドで高校卒業まで過ごしましたね。

ーなるほど。高校卒業後はどのような進路に進まれたのですか?

京都の大学に行きたかったのですが、受験必須教科を履修しておらず断念。中学生時代からギターを弾きはじめ、高校生でバンドを組んで作曲もしていたので、本格的に楽曲制作を学びたいと東京の音楽系専門学校に進学しました。

専門学校で基礎的な音楽理論を学びながら楽曲制作の依頼を受注したり、学生時代に書いていた小説の連載が決まったりと、クリエイティブな仕事をしながら学校に通う毎日でした。

都会にはスターバックスコーヒーやサブウェイなど、地元にないものがたくさんあって、とても刺激的で楽しかったです(笑)。

目標達成をモチベーションに、突き進む会社員時代

ー本格的に音楽を学んだあと、会社員として働きはじめたかいちょうさん。クリエイターとして就職しようとは思わなかったのでしょうか?

そうですね。学生時代から楽曲制作や小説執筆を複業として行っていたので、これ一本でお金を稼ごうとは考えていませんでした。

営業職はクリエイティブとは真逆のイメージですよね。実は、「ゆくゆく自分が何かを創ったときにうまく売り込むための接客スキルを学びたい」と営業職に就いた経緯があります。当時は、全国津々浦々でタブレット販売に勤しんでいました。

ー全国を周りながら営業していたのですね!とても大変そうです……

各地を移動することは苦ではなかったので、勤務地が変わるごとに気持ちを入れ替えて仕事に向かうことができました。

営業については、元々コミュニケーションが得意だったので、成績は200人中10位以内とわりと良かったです(笑)。商品を売るのが上手な先輩と回ったり、後輩の指導やマネジメントをしたりと、短期間でしたが様々なことを学ばせていただき非常に勉強になりました。

ー10位以内!?すごいですね!そこから次のステップに進んだと伺ったのですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

営業3年目に関西地方での新規立ち上げを任されて異動しました。でも、関東に戻りたいと感じてしまって(笑)。

営業で全国色々なところに行った経験から旅行に興味を持ち、旅行会社に転職しました。旅行会社は覚えることがとても多くて本当に大変でした。世界中の空港や都市、航空会社の名前や観光情報、おすすめのホテルなど……。

行ったことのない国でもお客様に楽しく旅行していただくために、知識やトークスキルなど、必要な要素はとても多かったです。

ー旅行会社で働く上で、モチベーションは何かあったのですか?

歴代の売り上げ記録更新を目標に頑張っていました!

しかし、転職2年目で副店長に昇進し、夏休みシーズンの繁忙期に歴代売り上げ記録の更新を達成してしまい、次の目標が見えなくなってしまって……

ーなるほど。目標を達成したことで燃え尽きてしまったのですね。

はい。パッケージの部門への異動や海外転勤なども選択肢にはありましたが、どれも記録を更新したときほどやりがいを感じられませんでした。その頃ちょうどフリーランスという働き方が流行っていたので、試しに働きながらライティングの仕事に挑戦することに。

「全力でコミットすれば食いっぱぐれはなさそうだな」と感じるようになり、会社を辞めてフリーランスへ転身しました。

自分を見つめ直すなかで見つけた「マルチクリエイター」という働き方

ー正社員からフリーランスになったかいちょうさん。独立後はどのような活動をされていましたか?

小説執筆の経験を活かしてライティングをはじめました。単価が安く、数十本以上の記事を必死に書いて生計を立てていました。

独立して数ヵ月後には単価の良い仕事をいただけるようになり、そのクライアント一本で頑張っていたのですが、半年で契約が終了。仕事がゼロになってしまって……。

このままではいけないと思い、自分を見つめ直す期間を設けました

ー意識的に「何もしない生活」を選ばれたのですね。

はい。時間の縛りもなくなった今、改めて自分はどうありたいか、どう動いて行こうかを漠然と考える日々を設けました

目標を持たずに貯金を切り崩して色々なところへ行き、興味があることを片っ端からやってみたんです。動画制作や写真を本格的に勉強してクリエイティブの幅を広げたり、やったことのないプログラミングに挑戦したりと、半年の間自分のやりたいことを手探りで探し続けました

どんどん仕事の幅を広げるなかで様々な分野の仕事をいただくこととなり、気付いたらマルチクリエイターになっていました。

YouTube活動をきっかけに地元の町会議員に当選

ー独立後、コロナ禍がきっかけで新たな決断をされたとのことですが、詳しく教えてください。

僕は基本的にリモートワークなので、コロナ禍でも直接的な影響はほとんどありませんでした。影響がないのなら地元に戻ってみようと思い、昨年(2020年)の6月に境町に帰郷。

最初はそのままリモートワークを続ける予定でしたが、「せっかく地元に戻ってきたし地元で活動したい!」と考え、YouTubeでの活動をはじめました。

ーなぜ地元に貢献したいと考えるようになったのでしょうか。

僕が戻ったときコロナ禍で打撃を受けている飲食店が多かったので、地元のお店を応援したいと考えたのがきっかけです。

その頃、30店舗ほどの飲食店が行政から助成金をもらって半額弁当キャンペーンを実施していました。そのチラシを見たとき僕が知っているお店は数店舗しかなくて……。せっかく地元に戻ったのに何も知らないまま住んでいるのは恥ずかしいと思い、町民向けのYouTubeをはじめました。

実は、境町はここ数年で非常に発展しているんです!茨城県の小さな街ではありますが、関東で一番ふるさと納税をいただいていたり、ホッケー場やスケートボード場の開設・自動運転バスの運行を開始したりと、廃れることなくどんどん盛り上がっています。

ー情報発信をする前と後で、地元の方からの反応やご自身に何か変化はありましたか?

この1年間、知り合いが100人単位で増えました!その影響で街の方から声を掛けられることが多くなりましたね(笑)。

ー有名人ですね(笑)。情報発信をしている中で町会議員になったとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

今まで情報発信は非公式で行っていました。しかし、行政が関与しているところは取材したくてもできず、もどかしい思いをしていた背景があります。でも、今から役場に入職するのは何か違うと感じていて……。

そんな矢先、たまたまその年が4年に一度の町会議員選挙の年だと知りました!町会議員については詳しくなかったのですが、周りのお年寄りから「出馬してみたら?」と言われ立候補してみることに。YouTubeや配信を中心に選挙活動をして、無事当選しました。

現在、境町は町長を中心に行政が非常に活発に動いています。町会議員としてリアルタイムに活動内容を発信して、特に若い世代に行政の動きに注目していただけることを期待しています。親近感もって気軽に相談していただけるように、コミュニティスペースも運営中です。町民にとって一番身近な立場でいたいと考えています。

ー懸命に働いていたときから環境が変わった今、どのようなお気持ちですか?

ストレスフリーです(笑)。

僕は、寝る間も惜しんでバリバリ働けるのは若いうちだけだと考えています。世代ごとに合った働き方があると思うのです。30代目前になった現在は余裕を持つことを意識して考えています。

今は最前線で全力で働くよりも下の世代の受け皿になりたいです。そのためにコミュニティスペースなどで気軽に相談できる場をつくり、役に立てるものを提供できるように動いています。

ー最後に、かいちょうさんの今後のビジョンや目標を教えてください。

ゆくゆくは境町以外の方向けの活動やっていきたいです。どんなに宣伝して観光客が境町に呼んでも、中身がハリボテだと二度と来てもらえないですよね。そのために今は、町民に向けてどんどん発信をしたり施設を作ったりしています。

営業職や旅行会社で頑張って働いた経験や、半年間休んでいたときに勉強したことなど、すべてが今の自分の力になっています。

周囲に流されて無理してスキルを習得したりせず、自分が持っている手札で戦う方法をしっかり考えたことで、自分に合った生活が展開できるようになりました。今後もゆるくやっていこうと思います!

ーありがとうございました!かいちょうさんの今後のご活躍を応援しております!

取材者:大庭 周(Facebook/note/Twitter
執筆者:柚月 歩(note/Twitter
デザイナー:安田遥(Twitter