継続は力なり。食文化研究家の長内あや愛が語る、夢を叶える方法

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第1000回目となる今回は、長内 あや愛(オサナイ アヤメ)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

食文化研究家に加え、飲食店オーナー、新しいたんぱく質開発の3つのわらじで活動する長内さん。学生時代のエピソードやそれぞれのお仕事についての詳細、今後の目標などをお話していただきました。

食に目覚めたのは14歳。被災者への炊き出しがきっかけ

ー簡単に自己紹介をお願いいたします。

長内あや愛と申します。現在、食文化研究家としての活動に加え、日本橋での飲食店経営と、山形県の鶴岡市でたんぱく質を作る仕事もしています。

14歳の頃から食に関する仕事に就きたいと思うようになり、それと同時に食の歴史についても気になり始めました。

ー14歳の頃に何があったのでしょうか?

私は東京と福島の2拠点で育ったのですが、14歳の頃に東日本大震災があって。避難民を福島の家で受け入れて、炊き出しをしたことがきっかけでした。

当時は学校があまり好きではなくて、お菓子作りに没頭していたんですよね。自分で作った簡単なお菓子を避難者の方にお配りして、喜んでもらえたのが記憶に残っていて。食は生きるためにもちろん必要ですが、嗜好品やコミュニケーションツールとしても有効なんだなと気付いたんです。作り手として、食に関する仕事に就きたいと思い始めました。

それから、中学生ながらに近所のパティシエの先生に頼み込んで、お店で修行させていただいたこともあります。プロの技術を間近で見られてとても勉強になりましたね。

やってよかったことは、料理の修行の内容や、料理に使った食材や歴史をブログとしてまとめたことです。14歳の頃から毎日、10年間コツコツ更新していました。ブログの料理人ランキングが3位になったこともあるんですよ。

ー毎日の更新を10年……というと、3000本以上のブログを更新したということですよね。

そうですね。継続してつけていたことで「私は料理に興味がある」と自己紹介しやすくなりました。SNSやブログ投稿が禁止の女子校に通っていたので、誰にも言わずひっそりと更新を続けていました。

ブログを書き続けてよかったことは、進路選択のときに説得力を持てたことですね。大学受験の際、「お菓子が好きで、食文化の歴史を学びたい」と学校の先生に伝えると、「あなたの年代くらいの女の子はお菓子が好きなのが普通なんだよ。何にも特別じゃないよ」と諭されたことがあって。

それまで365日、5年間も食に関するブログを書き続けていたと伝えると、先生に「ただの好きじゃなくて、これからも続けたいと思っているんだね」と理解してもらえたんです。コツコツ物事を続けていくことは、自分の熱意を表すことにもつながるのだと思いました。

学んだ知識を活かして、新たな食糧の開発にも携わる

ー大学ではどんな勉強をされていたのでしょうか?

大学以降では、江戸時代から明治時代を専門として、食文化を学ぶことにしました。鎖国を経て肉を食べるようになった頃の日本の食事などを学んでいましたね。

あとは「社会問題×食」など、食以外の学部を学び、食と掛け合わせていきたいという思いもありました。

昨今、人口増加の影響で、2050年にたんぱく質危機があると言われています。サステナブルな食文化を作るにあたって、昔の日本人が口にしていた食文化が参考になるのではと考えました。

例えば、日本で初めてのカレーライスは美味しいのかな?と気になって、実際に作ってみたことも。味は特に違和感もなく、美味しかったんですよね。いつまでも美味しいものを食べられるように、食べるべき食糧を作っていくことも重要だと考えるようになりました。

ー日本橋でオープンした飲食店についても教えてください。

大学4年の頃に起業して、大学院1年生になった年、「食の會日本橋」というお店をスタートさせました。明治時代のレシピから復刻再現した料理を提供しているんです。このお店は2019年8月にオープンして、その後すぐにコロナ禍へ突入してしまったのもあり、まだまだこれから!という気持ちですね。

飲食店の経営は、長らく日本橋でお店を経営されている方から学んだり、本を読んだりしました。これからも日々勉強し続けたいですね。

ー山形県鶴岡市でたんぱく質を作る活動もされているんですよね。

2050年にたんぱく質が足りなくなる危機があると言われています。もともと食文化には小さい頃から興味がありましたが、私も食糧生産について今後考えていかないと、日本がダメになってしまうと思うようになって。新しいたんぱく質を作って食べることが急務だと考えるようになりました。

そんな中、山形県鶴岡市の慶応義塾大学のキャンパスで、納豆菌由来のたんぱく質を食べる会社が立ち上がって。現在、この会社の共同経営者として参画しています。

私は料理ができることを活かして、納豆菌をどう生かして食べられるようにするかを日々試行錯誤しています。パンやお団子、プロテインに入れるなど、従来の食事に納豆菌を混ぜることで、よりたんぱく質の摂取量を増やせると期待しているんです。