にわか女子大歓迎!19歳で女性向けフットサルコミュニティを設立。ULVO代表理事・山本美樹

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第263回目となる今回のゲストは、一般社団法人ULVO(ウルボ)代表理事の山本美樹さんです。

青山学院大学在学中、19歳のときに「女性による女性のための女性だけのフットボールコミュニティULVO」を立ち上げ、計5,000名以上の女性を集客。スポーツ業界に、にわか女性目線のサービスを生み出します。

そんな山本さんが、19歳で大学を中退してまで起業することに決めた経緯をお伺いしました。

スポーツを通して2秒で立ち直れるメンタルに

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

一般社団法人ULVO代表理事の山本美樹と申します。青山大学在学中に、サラリーマンにならずに起業することを決め、女性向けのフットボールサービスを立ち上げました。大学2年のときに中退して会社を設立したので、最終学歴は高校ですね。

スポーツはもちろん好きですが、それにこだわりはなくて。スポーツ系の事業を展開することは1つの手段であって、目的はみんなが幸せになる世界を作ることなので、そのために今はいろいろと活動しています!

ー18~19歳で、今後やっていくことを決めたのですね。その決断に至るまで、掘り下げて聞いていきたいと思います。小中高生の頃、山本さんはどんな子どもでしたか?

小学生の頃は、通信簿のコメント欄に、「周りの人を元気にする、太陽みたいな存在です」と毎回書いてありました。

ー当時から今の明るいキャラクターがあったんですね!

そこはずっと変わってない部分かもしれないです。高校時代は1つのターニングポイントでもあって。「偏差値がすべて、勉強第一」という校風の進学校に通っていたのですが、私はフットサル部に入りました。

部活している人は勉強できないと思われるのが悔しかったので、毎日始発で学校へ行って自習室で勉強して、部活が終わるとまた勉強してましたね。その結果、文系で学年トップの成績をとることができたんです。

ーまさに順風満帆な人生のように思えます。

決してそんなことはないんです。受験期にMARCH(マーチ)レベルを目指していたのですが、成績が良かったので早慶上智レベルに上げることになって。一気に難易度が上がり、予備校に通い始めました。

結局第1~第4志望まですべて落ちて、第5志望の青山学院大学だけ受かったんです。初めて思い通りにいかない経験をしました。

かなり落ち込みましたが、2秒で立ち直りました(笑)。「志望校に行けた人たちよりも、絶対充実した人生を送ってやる!!」と意気込んでいましたね。

ー2秒で切り替えるなんてすごい(笑)。

スポーツの経験が活きてますね。私が最初に始めたスポーツはテニスで、テニスって個人スポーツなので試合中も1人じゃないですか。落ち込み続けて、サーブがずっと入らなかったら負けちゃいますよね。

だから「1回切り替えよう!」と1人でぶつぶつ言いながら、無理やり気持ちを切り替えてました。スポーツを通じて、メンタルは格段に強くなりましたね。

起業を決意したきっかけは、東進ハイスクールでの「夢教育」

ー青山学院大学進学後は、どのように過ごしていましたか?

大学で「人と違うことをやってやろう」と思い、入学してすぐに「山サー」というサークルを作りました。私山本と一緒に飲むサークルで、略して山サー。

「初めまして!何年生ですか?4年生なんですね!!私1年生なんですけど……」と、全然知らない人に声をかけまくり、大学1年の5月時点で80人くらい集めることができました。毎月30人くらいの飲み会を開催してたんですよ。

ー学年に関係なく声をかけていたんですね。

学年もですし、なんなら学校も関係なく声をかけてました。他の大学や専門学校に通っている人、働いている人など、誰でもウェルカムでした!

ー「山サー」では、飲むことがメインコンテンツ?

お酒がメインというよりは、話を聞くことがメインでした。それぞれがどういう風に生きてきて、今何をしていて、今後何をしたいかなど、そんな話をしてましたね。

ー大学で「山サー」以外に挑戦していたことはありますか?

大学1年から、東進ハイスクールでアルバイトをしていました。そこでの経験が今に活きています。東進の企業理念は「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」こと。大学受験は人生の通り道であって、最終ゴールではないということをいつも言われていたんです。

だから東進では「夢教育」というものがあって。高校生に対して、「将来やりたいことがあって、そのために大学受験があるんだよ」と教育していました。

ー将来の方向性について考える機会を与えていたんですね。

私が高校生の頃はそこまで考えず、偏差値で大学を決めていたので驚きました。良い教育ですよね。ただ、毎日「将来何がしたいの?」と高校生に聞いている中で「そういう自分は何がしたいんだろう……」と、ふと思ったんです。

それから自分の将来について、真剣に考えるようになりました。昔からリーダー的ポジションにいたので、社会の歯車として働くよりは、仕組みを作る側の方が向いていると思いました。私がリクルートスーツを着て就職活動をしている姿をイメージできなかったこともあり、起業したいと思いながら過ごしていたんです。

ーサラリーマンになるのではなく、起業すると決めてから、どのように動きましたか?

大学1年生の夏休みが終わったあたりから、あまり大学へ行かなくなりました。大学にいる先輩方は、みんな就職するために面接練習ばかりしていたので、「ここにいてもこの世界しか見れないな」と思って。それからは大学以外の場所へ行き始めました。

行動心理学「PCM」でマーケティング力が向上

ー学校以外の場所とは、具体的にはどのようなところ?

起業セミナーやトークイベント、交流会などですね。その中で、「ハタモク(働く目的)」という、学生と社会人が働く目的について話す座談会に参加したことがあって。たまたま同じテーブルでディスカッションをしたのが、一緒に会社を立ち上げた共同代表の方だったんです。

ーすごいご縁ですね!

当時私は19歳。共同代表の方は25歳で、大学卒業後に起業して、2つの事業を運営していました。「事業が軌道に乗ってきたから、今ちょっと時間があるんだよね」「すごい……!これが!経営者か……!!」と感動して。すぐに個別でアポイントを取りました。

事業のお話を聞く中で、PCMという行動心理学のお話が出てきて。アメリカやフランスにはPCMのトレーナーが6,000人ほどいるのですが、日本ではたったの20人ほどしかいないんですよ。その方はなんと、世界最年少トレーナーだったんです……!

ーそんな方から直接PCMのお話を聞けたのですね。山本さん自身も、PCMに興味を持ちましたか?

19歳のときに、実際にPCMのセミナーを受けました。PCMは自分のことを知るだけでなく、マーケティングにも役立つんですよ。

例えばターゲットを設定するときに、「20代の女性で、運動経験はなくて、運動不足を解消したいと思っている事務職勤務のOL」というようなペルソナを作るじゃないですか。そこに心理学的側面を足すことで、より強固なターゲット設定ができるんです。

PCMは家族関係や恋人関係など、日常的に使えるものでもありますが、マーケティングや組織マネジメントにも役立つので、サービスを提供している方は知っておくのがおすすめです!

女子のニーズを察知!フットサルサービスの展開を決める

ー「ハタモク」で共同代表の方と出会い、PCMを知ってから今の活動に至った経緯を教えてください。

やりたいことがたくさんある中で、共同代表の方に「自分のやりたいこと、今の自分ができること、世の中から求められていること。この3つが重なるところがビジネスになるよ。やりたいことだけやってたら、自己満足になっちゃうからね」と言われて、確かに……と思いました。

3つが重なっているものを探していた2012年に、なでしこがロンドン五輪で優勝。「これからサッカーやフットサルが盛り上がってきそうだな」と思い、大学1年のときに1人で個サル(個人参加フットサル)に参加したんです。

するとそこには男性しかいなくて。元サッカー部のガチ勢が、バチバチやってるわけですよ。これは初心者の女の子が1人で来たら、フットサル嫌いになっちゃうなと思いました。

ーそんなに殺伐としてたんですね。

はい。その光景を見て、これが世の中から求められていることだと思いました。

「社会人になって余裕が出てきたから趣味を作りたいな」とか、「大学にも慣れてきたから新しいこと始めたいな」とか、「毎週ジムに通うほどのモチベーションはないけど、身体を動かしたいな」とか。そういったニーズと、自分ができることと、やりたいことを掛け合わせて思いついたのが「女性に特化したフットサルサービス」でした。

あと実は、大学1年の3月に、中高生30人と大学生・社会人30人の計60人を集めて、女の子だけのフットサル交流会を開催したことがあるんです。

ーそんなに早い段階で、行動していたんですね。

大学1年生の1月にハタモクで共同代表と出会って、「ほんとに起業したいんだったら、今すぐ何かやればいいじゃん。今実際に何やってんの?」ってカマかけられたので。じゃあなんかやってやろう!と奮起し、フットサル交流会を自分で開催しました。

そのときに、60人の女子がワーキャー言いながら、好きな髪型や服装をしてフットサルしている姿を見て、純粋に「可愛いな」と思ったんですよ。私が参加したフットサルは男子がメインで殺伐としていたけど、女子が心理的に求めているのは「楽しい」とか、「褒められたい」とかだよな、と察知して。

スポーツ初心者の女子を集めてフットサルしてもらって、「楽しい」をシェアしてもらえば絶対バズるじゃん!と確信し、方向性が決まりました。

ーそこからビジネスへ展開していったわけですね。数千人規模のコミュニティを運営するのは難しいと思うのですが、コミュニティの価値を下げないように意識していたことはありますか?

ものやサービスは顕在化していますが、みんなが求めているのは「こういう感情を得たい」「こういう自分でいたい」など、潜在化した感情なので、PCMを使ってその感情に訴求することを意識しました。

あと関わる人みんなに、「私たちはフットサル屋さんじゃないよ」と言ってますね。ただボールを蹴りたいだけであれば、場所はごまんとあるじゃないですか。私たちは、自分に自信がなかったり、落ち込んだりしている人がプラスの気持ちになれる場を提供しているので!

「豊かさ」に気づく場を提供していきたい

ー起業してから9年目ということですが、起業当時と比べて心境の変化はありますか?

19~20歳のときは勢いがあるじゃないですか。見える世界も小さかったので、その中でできることをやってやろうという気持ちでがむしゃらに突き進んでいましたが、3年前くらいから今後どうしたいかを考えるようになりました。

今は楽しいけど、20代後半や30代40代になり、結婚や出産を考えたときに、今やっていることをやり続けることが自分にとっての幸せなのかな?と悩み始めたんです。そのときに『7つの習慣』という本と出会い、熟読しました。

ーあのボリュームがある本を!

1章読むごとに感想文を書いてアウトプットしました。本の内容を現実社会と照らし合わせて、どういうことが実践できるか考えながら、1年半くらいかけて1冊を読み切りましたね。人生の目的について考える1つのきっかけになりました。

同じタイミングで、瞑想にも出会って。人って忙しいと、考える時間がないじゃないですか。私もずっと動き続けてきたのですが、一度立ち止まって内面を見たり、将来のことを想像したりすることって大事ですよね。

ー『7つの習慣』を読んだり、瞑想したりすることで、どんな方向を目指していきたいと思いましたか?

豊かさを与えられる人でありたいと思いました。そうなると「余裕」が必要になってくるんですよ。今自分ができることを探して豊かさを与えていくには、世の中を俯瞰して見て、「こんな大きな世界で、自分が与えられるものって何だろう?」と考える必要があって。だから常に時間の余裕、金銭的な余裕がある状態にしておきたいんですよね。

ー山本さんが考える「豊かさ」とは?

豊かさの基準は人によって違うと思っていて。まずは自分にとっての豊かな状態を知ることが大事です。

例えばAさんのことをうらやましいと思っていても、その人にとっての幸せと自分にとっての幸せが違えば、その人を目指さなくてもいいじゃないですか。だからまずは自分の人生にとっての豊かさとは何かを知り、そのために必要なものをかき集めていくことが重要です。

私はPCMや『7つの習慣』、瞑想を通じて、豊かさの基準を知ることができましたが、若い世代はどうしても視野が狭くなってしまう可能性があると思っていて。私もまだ20代ではありますが、いろんな経営者の方とお付き合いして知り得たことがたくさんあるので、それを発信することで視野を広げる手助けをしたいです。発信も「与える」ことだと思うので。

ー具体的にどのように発信していこうと考えていますか?

自分がどうなりたいか気づけるようなワークショップや朝活を企画しています。自分にとってのハッピーな状態や、それを実現するための手段を見つける場を提供していきたいです。

欲を言えば、みんなが自分にとっての幸せや豊かさを手に入れたときに、それを一緒に味わいたいんですよね。それが感動につながるので。

ー相対的に他者と比較するのではなく、まずは自分にとっての豊かさを知ることが大事で、山本さんはその機会を今後も提供していくということですね。今後のご活躍を応援しています!本日はありがとうございました。

取材者:増田稜(Twitter
執筆者:もりはる(Twitter
デザイナー:五十嵐有沙 (Twitter