元WeWork社員の入江那帆が、Power of The Color アーティストとして伝え続けたいコト

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第229回目となる今回のゲストは、“Power of The Color” = 「色が持つ力」をコンセプトに、絵を見た人にひらめきや刺激を与えられるような作品作りを行っている入江那帆さんです。

ホテルの専門学校を卒業後、スイスでの就職、WeWorkへの転職、アートイベントの開催などを経験してきた入江さん。そんな入江さんがアートと出会い、個展やイベントを実施するまでに至った経緯について伺いました。

アメリカ研修を経験し、性格が一変

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

現在はIT企業で働きながら、“Power of The Color”をコンセプト兼アーティスト名として、活動しています。

もともとホテルの専門学校を卒業後、新入社員としてしばらくホテルで働いていました。その後スイスでの就職、WeWorkへの転職を経験し、アーティストとして絵の活動を始め、今に至ります。

ー非常にバラエティ豊かな経歴ですね。ホテルの仕事を辞めてスイスへ行かれたのはなぜでしょうか?

ホテルで働いているときに、日本のお客様だけでなく、海外の方もたくさんいらっしゃって。海外の方と接しているうちに、「海外にはどんな仕事があるんだろう」と考えるようになったんです。

海外の求人情報サイトを見ていたときに、たまたま「スイスのハイキングガイド募集」を見つけて。自然も山も好きだし、スイスに行ってみたかったので受けてみよう!と思い応募したところ、無事受かりました。

ーもともと海外への関心は強かったのですか?

英語に関心を持ち始めたのは、中学生の頃です。海外ドラマや海外のYoutuberを見て、「私もあの人たちみたいにしゃべれるようになりたい!」と思ったのがきっかけで。

それから英語を勉強して、高校で外国語専門コースへ進学しました。そのときに初めて1か月間アメリカ研修を経験して、人生が180度変わったんです。

ー1か月でそんなに変わるんですね。

実は私、小中学生の頃はかなりシャイだったんですよ。人見知りで自己表現の方法もわからず、人前に立つのが苦手でした。

日本は相手の言いたいことを察する文化があるのでシャイでもやっていけたのですが、アメリカでは自分の考えを言わないと何も伝わらなくて。

最初は苦労しましたが、自分の意見をしっかり伝えよう、自ら行動しようという意識が芽生え始めたんです。帰国後は、友人に「人が変わったみたい」と言われました。

スイスのハイキングガイドで最大30名をご案内

ースイスでの生活について教えてください。

ハイキングガイドの仕事は夏だけなので、夏はスイス、冬は日本で生活をしていました。スイスではマッターホルンという山のふもとにある、小さな村に住んでいて、ほとんどみんな顔見知りでした。

週6日ペースで毎日お客様を連れて、山でハイキングして。仕事が終わった後は、午後に地元の友達とロッククライミングしたり、1人で山へ行ったりしてました。

ー仕事で大変だったことはありますか?

HISやJTBのツアーでいらっしゃる団体のお客様をご案内することが多く、最大30名を1人でガイドするのは少し大変でした。

30名全員をハッピーにするのは難しくて。みなさんに楽しんで帰ってほしいと思っていたので、1人でもハッピーにできない人がいるとつらかったですね。

ーツアーの引率をするうえで、意識していたことを教えてください。

話し方には気をつけていました。ご年配の方も多かったので、言葉選びや話すスピード、話すタイミングには配慮していましたね。

あとは、必ず同じ目線に立つことを意識していました。お子さんだったら座って話したり、ご年配の方だったら少しかがんで話したり。一人ひとりに合った接し方をすることは、ホテル時代も、ツアーガイドでも心がけていたことです。

WeWork Japan CEOとの思いがけない出会い

ースイスからの帰国後、どのように過ごしていましたか?

スイスから帰ってきて、一般企業への就職や、ホテルへ戻ることは考えていなくて。当時24歳で、漠然と「ワーキングホリデーでオーストラリアへ行こう!」と思っていました。

まずは留学資金を貯めるため、オーストラリアに本店があるレストランで働き始めて。1か月ほど経った頃、担当していたテーブルのお客様から「こういう者です」と名刺を渡されたんです。

その方が実は、WeWork JapanのCEOで……!そのときはもちろん誰かわからなかったです。「WeWorkに来ないか」と誘われたのがきっかけで、転職を決意しました。

ードラマみたいな出会いですね。他にもスタッフがいる中で、どうして入江さんだけにお声がけをされたのでしょうか?

当時私は、お客様がレストランを利用する用途によって提供スピードを変えたり、細かい対応に気をつけていたので、てっきりそこを評価されたのかと思っていました。

WeWorkに入社して数か月ほど経ち、CEOに呼ばれて本当の理由を聞く機会があって。CEOがおっしゃるには、「一人ひとりに合わせた接客はもちろんのこと、チームメンバーへの声のかけ方や、動かし方に魅力を感じた」とのことでした。

ーWeWorkへ転職することに迷いはありませんでしたか?

当時WeWorkはそれほど有名ではなく、共有オフィスも一般的ではなかったので、もちろん迷いはありました。事業内容を聞いても、あまり頭に入ってこなくて。

私が迷っているときに社員の方が、「僕もこれからどうなるかわからないし、会社や事業が日本で成功するかもわからない。今後を保証することはできないけど、だからこそ面白いと思う。きっと人生変わるよ」と言ってくださったんです。

私の人生も今までわからないことだらけでしたし、これから何が起こるかわからないからこそ面白いという考えにすごく共感して。「ここで働こう」と即決しました。

ー社員の方の一言で、考えが変わったんですね。WeWork入社後の仕事内容を教えてください。

私はコミュニティチームにいたので、イベント企画やWeWorkのメンバー様のご対応、ビルの管理などをしていました。

ー働いていて、どんなときに楽しいと感じていましたか?

メンバー様とお話しているときが楽しかったです。WeWorkのメンバー様は、スタートアップや大企業、学生さんや年配の方など、勤め先も年齢も違うので、いろんな方とお話できることにひたすらワクワクしましたね。

アーティスト活動の始まりは1枚の絵から

ーWeWorkで働いていたときに、何か転機はありましたか?

クリエイティブなイメージが強い、原宿の拠点に移動したことで、アートとの出会いがありました。私はもともと絵を描くのが好きだったので、「せっかく原宿に移動するのであれば私も何かやってみたい」と思い、“Power of The Color”というプロジェクトを企画したんです。

“Power of The Color”とは、「色が持つ力」という意味で。誰でもクリエイティビティは持っているから、みんなでクリエイティブなものを作ろうという想いのもと企画しました。

私が絵の下書きをして、メンバー様やお客様に色を塗ってもらって。完成した絵をみなさんにお見せしたところ、かなり好評でした。「私だったらこの部分にこの色を塗ることは思いつかなかったなあ」と、私自身も発見がありましたね。

ー入江さんにとっては、すごく意味のある絵になったんですね。

実はその絵が、アーティストとして活動し始めるきっかけになっていて。あるメンバー様が、オフィスに飾ってあったその絵を見て、「絵を描いてほしい」と言ってくださったんです。誰かのために、商品として絵を描くというのは初めての経験でした。

ー絵を描いてほしいと言われて、どのように感じたか教えてください。

とても嬉しかったです。それと同時に、完全オーダーメイドだったので「期待に応えなきゃ」というプレッシャーもありました。

ただ、絵を描き上げて評価していただけたときは、幸せな気持ちでいっぱいになりましたね。私が提示した金額よりも多くお支払いしてくださって。数か月後、もう1枚追加のオーダーもいただけたんです……!

ー心から満足していただけたんですね!そこから絵の活動は広がっていきましたか?

はい、どんどん広がっていきました。WeWorkの香港の拠点にギャラリースペースがあるので、そこで個展を開催することになって。初めての個展だったので、どんな絵を描いているアーティストか知っていただくために、いろんなタイプの絵を描きました。

ギャラリーはガラス張りで道路に面していて。立ち止まって外から絵を見て、中に入ってくれる方もいたので、とても嬉しかったです。

ー反響が目に見えてわかったんですね。個展開催後はどのような活動をしていますか?

現在、オンラインストアでスマートフォンケースを販売中です。iPadで絵を描いて、その絵をスマートフォンケースに印刷しています。

ーインスピレーションはどこから沸くのか、教えてください。

実は描き始めは何も見えていないんです。下書きせずに描き始めているうちに、どんどん付け足したり、削ったりして。途中から、「こういう方向で行こう」と思い始めます。

色が持つ力を伝え続けていきたい

ーホテルやWeWorkで働いたり、アーティスト活動をしたりと、いろんなご経験をされている入江さんが、日々大切にしている考えを教えてください。

目の前にいる一人ひとりと向き合うことですね。ホテルのお客様やWeWorkのメンバー様、絵をオーダーしてくれた方など、それぞれの方と向き合って、「自分が今お話しているのはこの人なんだ」という意識を持つようにしています。

ー入江さんは一貫してポジティブな印象を受けますが、落ち込むこともありますか?

もちろん上手くいかなくて落ち込むこともたくさんあります。ただ、落ち込んだときは「これは別に悪いことじゃない。今は下がっているときじゃない」と思うようにしているんです。

人生のターニングポイントを、プラスやマイナスで表したりしますよね。私自身がマイナスだと思えばどこまででもマイナスになりますし、つらくてもプラスだと思えばプラスに転じていくと思うんです。人生は自分次第でどうにでもなると思っています。

ーその考えが、きっと自信にもつながっているんですね。今後、どのような活動を予定しているか教えてください。

2022年ごろ、また個展を開催する予定です。F40という、横1m・縦80.3㎝の大きなキャンバスで、10~15枚ほどの作品を作りたいと思っています。

ー1枚を完成させるのに、どれくらいの期間がかかりますか?

絵を描くこと以外にやらなければいけないことがあるときは、1か月ほどかかります。ただ完全にゾーンに入ると、3日で終わることもありますね。自分でも不思議です。

ゾーンに入っているときは食べることも寝ることも頭にないので、3日間ひたすら描き続けています。

ーすごい集中力ですね……!最後に、入江さんの今後の目標を教えてください。

目標は2つあって。1つは、もともと企業に勤めて仕事をすることが大好きなので、今勤めてる会社でキャリアアップすることです。

もう1つは、“Power of The Color”を会社として形にすることです。デザインやアートに関連するイベントやプロジェクトをどんどんやっていきたいですね。

ー「アート」をキーワードにいろんな活動を企画している入江さんの、今後のご活躍をお祈りしています!本日はありがとうございました。

取材者:増田稜(Twitter
執筆者:もりはる(Twitter
デザイナー:五十嵐有沙 (Twitter