”夢は学者起業家”「東大生アイディアマン」connect space 五百籏頭アレンの挑戦

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第234回目のゲストは、connect space代表の五百籏頭アレン(いおきべあれん)さんです。

現在東京大学2年生の五百籏頭さんは、コロナによる自粛生活中、友人と参加したビジネスコンテストでYJcapital賞を受賞。その後もビジネスアイディアがSONYとの共同開発プロジェクトに採択され援助を受けることとなり、起業を決意。

天性のひらめきとリーダーシップで「connect space」をまとめる五百籏頭アレンさんの根源に迫りました。

誰よりも自由を謳歌した麻布高校時代

ー本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介と、代表を務めるconnect spaceについて教えてください!

東京大学経済学部の2年生で、将来は学問と実践の場を繋ぐ学者起業家を目指しています。

connect spaceの活動は8月の終わりから始め、今はEdTech(エドテック)と呼ばれる教育とテクノロジーを組み合わせた分野で、塾向けの事業を行っているところです。

提供しているサービスの内容は、生徒一人ひとりをAIで診断し、それぞれの学習スタイルや精神状況を分析して最適な指導法を提案するもの

初めて塾で指導するアルバイトでもconnect spaceを見れば生徒にマッチした指導ができるようになります。講師と生徒の信頼関係を作ることから指導まで一貫してサポートできるサービスです。

ーそんな五百籏頭さんは幼少期どのような子どもだったのでしょうか?

早生まれで同級生に比べて成長が遅く、運動も勉強もできない子どもでした。

自分に自信がなくていつも部屋の隅っこにいましたね。小学校3年生くらいまで引っ込み思案な性格でした。

ーそこから自信をつけたきっかけは?

今まで何もできなかったのですが、スキーをやってみたら意外とできたことですね。

初めて「自分にも何かできるものがあるんだ」と思えた瞬間でしたね!勉強も継続したらだんだんできるようになって。中学受験でも第一志望の麻布中学校に合格できました!

ーすごい!超進学校ですね!その後の中学・高校時代はどのように過ごしていたのですか?

基本的に中学・高校は部活動漬けでした。3つの部活動に所属していましたね。テニスとオーケストラとスキーの3つ。日替わりで好きなところに行っていました。

テニスとかオーケストラは結構練習がハードだったので兼部は反対されていたのですが、両立していました。高校2年生くらいまでは部活動に専念する日々でしたね。

ー部活動に集中していたとのことですが、麻布高校は進学校ですよね?勉強はどのような感じだったのでしょうか?

麻布は進学校なのですが、ただのガリ勉はスクールカースト内での評価が低いんです。

今思えば自分でも本当にしょうもないなと思うのですが、麻布生独特のノリで、試験3日前くらいにみんなで六本木に行くんですよ。遊んでいるのに勉強もできるのがかっこいいと思っている人たちなんです(笑)

だから、家に帰ったら一夜漬けで試験範囲を仕上げていました。いかに勉強で友達を出し抜くかみたいな文化がありましたね。

やると決めたらとことんやり切る

ーそこから2年間部活動をして、東京大学に合格したわけですよね。部活動が終わってからは受験勉強に集中していたのでしょうか?

そうですね。1年くらいは腰を据えて勉強しました。

僕に限らず、大抵部活動の後はだらけてしまう人が多いと思うのですが、僕の場合は受験の1年程前からしっかりと勉強を始められましたね。塾に通ってコツコツと正攻法で受験勉強を行ないました!

ー切り替えが上手なんですね!そこからスムーズに学力は上がったのでしょうか?

実はそうではなくて…..。12月の終わりくらいにE判定を出してしまって。これではまずいと思って勉強法を全て見直したんです。

暗記法や集中法を調べまくり、どうすれば暗記力や集中力が上がるのかを知って、ルーティンを作ったりしましたね。

暗記もただ教科書を読むだけではなく、人に授業をする形に変えました。そのようにして根本的に勉強法を見直し、なんとか受験に間に合わせたんです。

ー無事に大学に合格し、起業するまではどのような大学生活を送っていたのでしょうか?

ぶっちゃけると、1年生の頃は何も考えずに遊んでいましたね(笑)

コロナが流行し始めてからは自粛することになり、遊びの予定が全て無くなって暇になったんです。

暇になったので、いろいろな本を読んでいたら、「インプットの能力が最も高い年齢が18歳」だと知りました。その事実に「あーもう俺は終わってるんだ」と思いましたね……。

そこで、「インプットする能力が落ちないうちに学んでおかなければ」と強い危機感を感じました。

また、コロナのような誰しもが時間を持て余す時期に能力の差がつくとも思いましたね。

今この時期に頑張らないと周りから置いていかれる。逆に、ここで効率よく頑張れば、自分の強みができるのではないかと。

そこからインプットが始まりました。インプットだけではダメだから、友達3人で学びの共有を始めたんです。各人が本やネットで得た学びをアウトプットし、それに対してフィードバックをし合いました。

ピンチをチャンスに。起業家への道を歩む

ーコロナ期間に成長しようと思われたのですね!そこから起業に向かったきっかけは?

麻布時代の友達とビジネスコンテストに出場したのですが、そこで受賞して投資家の人と知り合うことができました。

その後学校で、プロジェクトアイディアを出すだけで単位がもらえる授業があって。1年生の頃遊んでいて単位が足りていなかったので迷わず履修しました(笑)そこでアイディアを出したら採択されて。プロジェクトとして開発資金を援助してもらえることになり、本格的に事業を行なうことになったんです。

実際に塾で導入したいと言ってもらえるようになり、契約するのは個人ではなく法人でなければいけないので、起業することになりました!

ー実際にサービスを導入したいという声が上がったようですが、アイディアからスタートし、導入に至るまでのプロセスはどのようなものだったのでしょうか?

アイディアしかない状態だったので、まずは顧客の声を聞かなければと思いました。ビジネスで一番大事なことは「誰のどのような課題を解決するか」

顧客インタビューをしようと思い、知り合いから塾の先生を紹介してもらい、そこからまた紹介をしてもらってと数珠つなぎで人脈が広がり、その中で出会った人に導入したいと言ってもらえたのが最初です。

ーまさに今回のサービスは誰のどのような課題を解決するものなのでしょうか?

「大学生のコーチングの質が悪い」という課題です。塾の大学生アルバイトの採用は結構適当で、学歴採用が多いんです。講師不足でしっかりとした基準で採用ができておらず、生徒のモチベーションの低下や退塾に繋がるんですよね。

コーチングの質の低さには「生徒の学習状況や精神状況を把握できていないこと」が考えられるので、それを解決するのがこのサービスです。

ーこのサービスに至るまでどのような過程があったのでしょうか?

実は事業の内容を3回ほど変えているんです。

1つ目は学生向けのオンライン自習室。しかし、継続して使われなくて。最初は面白がって来てくれるんですが。「人が来ない」、「お金が発生しない」という問題が生じてやめました。みんなオンラインの自習室にお金を払わないんです。それではビジネスとして成り立たないですよね。

2つ目は社会人の資格試験のサポート。学生はお金を払わないけれど、社会人ならお金を払ってくれるのではないかと思ったんです。ですが、大人だから集まらなくても自分なりに勉強できるため、このサービスもダメでした。

その後は、ゲームの要素を取り入れることになり、勉強時間の合計をチームでバトルするサービスを作ましたが、結局頓挫してしまいましたね。

ー紆余曲折を経て現在に至ったと思いますが、起業してから挫折したことはありますか?

たくさんありますよ!やはりアイディアが潰れたときはショックでした。

ビジネスコンテストでは「オンライン自習室」のアイディアで賞を取ったので、「やったー!これでビジネスができる!」と思っていたんです。中国でもオンライン自習室で成功している企業があったので。

しかし、やってみてうまくいかないことが発覚しました。そのときはとてもショックでしたね。真実に目を向けられなかった……。今となってはアイディアが潰れることには慣れたのですが。

ー期待が大きかっただけに、ショックですよね……。そこから立ち上がったきっかけは?

確かにショックだったのですが、たくさん学びがあったのでなんとか立ち上がれました。

「大学生はお金を払わない」ことや、「継続的に使い続けてもらうための仕組みが死ぬほど大事」ということが学べたので、その学びを次に生かしたいと思えましたね。

その学びを生かしてまたアウトプットしたいと感じ、新しいアイディアが生まれました。失敗するときに大事なのが、学んでいる実感があるかどうか。それが少しでもあればまた立ち上がれると思います。

ーとっても前向きですね!現在サービスを仮説検証中だと思いますが、サービスを通じて最終的にどのようなことを実現したいと考えているのでしょうか?

生徒が主体的に学べるようになることを望んでいます。自ら学びを楽しんでもらうことがコンセプトです。そのためにはアダプティブラーニングを進める必要があると思っています。

生徒によって学習状況や理解度が全然違うのに、学校や塾では一斉の画一的な授業が行われている。本当は1人ひとりの生徒に特化した最適な教育を提供することが大事なんです。AIやアルゴリズムでアダプティブラーニングを可能にし、誰もが最高のコーチに出会える社会を実現していきたいです。

誰よりも思考し、個と向き合うリーダーへ

ー壮大な目標ですね!事業を行なう中でチームビルディングが不可欠だと思いますが、どのようにして行なっているのですか?

元々メンバー全員が知り合いというわけではなかったので、まずは1on1で僕と仲良くなり、その後はチーム全体で信頼関係を作れるようにしました。

実際にミーティングの終わりに「この中で僕の好きなタイプはどれでしょう?」といったお互いに関するクイズを出し合ったりしました。答えられなかった人には罰ゲームを科したり。

あとは各分野に責任者を置いて、1つの分野を任せて裁量を持たせる。

具体的な指示を出さず、達成したい目標だけを伝えて、試行錯誤してもらうのです。それに対して僕がフィードバックをします。1つの分野をまるごと任せることで、担当者に責任感が生まれるんですよね。

ー大学生は単調な毎日を過ごしがちですが、五百籏頭さんのように高い意識を持つにはどうすれば良いのでしょうか?

意識の高い友達を「インプットはただインプットするだけでなく、アウトプットすることでよりインプットできるんだ」と説得して巻き込み、学びの共有を始めるなど意識を高く保つ仕組みを作りました。

あとは寝る前のルーティンで日記を書いてるのですが、何も書くことがないとショックなんですよね。「あれ?俺今日1日何してたの?」みたいな。

1日が1つの人生だと思っているので、何も書くことがないとその日1日を生きていない感覚になるんです。そんな日があると、明日は頑張ろうという気持ちになりますね。毎日3行くらいしか書きませんが、自分を振り返る時間があることが大事だと思います!

ー今日から私もやってみますね!最後にU-29世代に何かメッセージをお願いします!

とにかくユニークに生きましょう!(笑)遊び心が人生を豊かにすると思っているので、遊び心を持ってユニークに生きる人が増えたら楽しい社会になると思います。

だからみんな自分が楽しいと思うことをどんどんやって、何かしらの形でアウトプットしてほしいなと思います!

ー本日はありがとうございました!五百籏頭さんのさらなる活躍を期待しております!

取材者:えるも(Twitter
執筆者:五十嵐美穂(Twitter
デザイナー:五十嵐有沙 (Twitter