様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第226回目となる今回のゲストは、forent株式会社 代表取締役社長の塚崎浩平さんです。
国立東京高専卒業後、 筑波大学に入学し、サンフランシスコでVRべンチャーの立ち上げ、インドでは現地のべンチャー企業調査を経験してきた塚崎さん。そんな塚崎さんが、起業に至るまでの道のりについて伺いました。
第一志望の高校に落ち、高専に入学
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
現在、forent株式会社で2つの事業を運営しています。1つは、法人向けコーチングプラットフォーム『CoachBiz』です。法人企業様と、コーチの資格を持っている方をマッチングさせています。
もう1つは、キャンプ版Airbnb『ExCAMP』です。使われていない土地をキャンプ場として貸し出したり、コテージをキャンプ場として登録いただいたりしています。
ー25歳という若さで会社経営をしている塚崎さんの、幼少期から起業に至るまでのお聞かせください。
高校時代は、5年制の国立東京高専に通っていました。電子工学科だったので、ギークな人が多かったですね。
ー自身で選択して高専へ入学したのですか?
実はもともと、文武両道な公立高校に行きたかったのですが、落ちてしまったんです。当時高専に入学することは考えていなかったので、公立高校に落ちて「どうしよう」とかなり焦りました。
ーそこでなぜ、高専への入学を決めたのでしょうか?
高専は国立大学に編入できるという話を聞き、あまり親に負担をかけないようにするためにも、高専への入学を決めました。
ー実際に入学してみてどうでしたか?
もともと行きたかった高校は、スクールカースト上位の子が集まっていましたが、高専は比較的オタクが多かったです。
入学式の時、「入る学校間違えたかな?」と思ったのを今でも覚えていますね。月日が経つにつれて、ハードウェア作りやロボコンなど、普通高校では経験できないことに触れてどんどん楽しくなっていきました。
1冊の本から、マネジメントに魅了される
ー部活動は何をしていましたか?
運動は好きでしたし、できるだけ強い部活がいいと思っていたのでテニス部に入部しました。当時、テニス部では全国大会に出場している人もいて、高専の中で1番強かったんですよ。
ー実際に入部してみて、どうでしたか?
高専は5年制なので、15歳から20歳まで年齢層が広いんです。顧問から指示を出されるわけではなく、学生主体で練習を進めていく環境もすごく新鮮でした。
ある日突然、顧問から部長に任命されて。そのときに「これ今流行ってるから」と『もしドラ』を渡されました。
ー1冊の本を手渡され、初めて読んだ時の印象を教えてください。
『もしドラ』は、ドラッカーの考えを知ったうえで、部活動の課題をどう解決していくかを対話形式で進めていく本で。本での学びを部活動に活かせそうだな、と思いました。
先輩方の教えをそのまま活かすやり方ではなく、新しいインプットを得て部活動に活かしていくやり方に気づいたんです。
ー具体的にどのようなことを実践しましたか?
人によって熱量が違う中で、どうやったら全体のやる気を向上させるか、という課題があって。今までのMTGでは「今日はこれをするから」と一方的に伝えていたのですが、数人のグループに分けて意見を出し合う形に変えました。
一人ひとりが意見を言うのは当たり前だよね、という空気を作ったんです。すると、「いきなり全国1位は無理だから達成できる目標にしよう」「目標達成のためにはこういうメニューにしよう」と議論が活発化していきました。
結果的に、部員全員が納得感を持ってものごとを進めていける組織になりました。
ー会社のマネージャーのようですね。
この経験から、自分がマネジメントに向いていることに気づいたんです。
海外のスタートアップ企業で急成長
ー高校卒業後、進路はどのように決めましたか?
卒業後の進路として、就職か大学編入の道がありました。就職するとなると、電子工学のバックグラウンドから技術職に就く人が多くて。
私はマネジメント職に就きたいと思っていたので、まずは総合大学に編入することにしました。実際にいろんなキャンパスを見た中で、個人的に1番好きだった筑波大学を第一志望にしたんです。
ー筑波大学に入学して、やりたいことはありましたか?
当時、高専から筑波大学に入学した仲間で創業された、フラー株式会社に興味があって。私も筑波大学で良い仲間と出会って、起業してみたいと思っていました。
ちょうど高専5年生の夏に、「トビタテ!留学JAPAN」という留学プログラムを見つけて応募すると受かったので、大学入学後すぐに留学しに行ったんです。
ー留学先はどこですか?
起業に興味があったので、スタートアップ企業が集まるサンフランシスコや、最先端のIT企業が集まるインドのバンガロールへ行きました。
ー留学先ではどのような経験をしましたか?
ベンチャーキャピタルからの資金調達のお手伝いをしたり、展示会へ行って投資家の方とお話したりしていました。会社の方と一緒に模索しながら、ビジネスモデルを作っていきましたね。
毎週水曜日に、投資家と起業家が参加するディナーに誘っていただき、毎回出席していて。何をやっている会社なのか、ピッチさせられるんですよ。
私はそこまで英語が上手くなかったので、「何を言ってるんだ?」という目で毎回見られて恥ずかしくて……それから英語を猛勉強しましたね。
ー過酷な環境ですね。その環境で気づいたことはありますか?
自分の向き不向きに気づけました。
プログラミングは高専でやっていましたが、私より圧倒的にすごい人たちは何人もいて。その人たちに、何でそんなにコードを書けるのか聞いたら、「今あなたはしゃべってるでしょ?それと一緒だよ。」と言われたんです。
息をするようにコードを書く人たちを見て、自分にはプログラミングは向いてないから、違う方向で勝負した方がいいな、と思いました。
逆に、どんな環境でもチャンスをつかみに行く行動力は、自分の強みだと感じていて。例えば展示会では、英語はそれほど上手くなくても、物怖じせずに初対面の人に話しかけに行ってましたね。
仲間を口説き続け、23歳で起業
ー帰国後はどのように過ごされていましたか?
「自分は何をやりたいんだろう?」と悩みながら就活をしていたのですが、やっぱり友達と一緒に作ったものを世に出したいと思って。
留学時に出会った友達に「こういうの作りたいんだけどどうかな?」と口説いたり、筑波大でも何人かに声をかけたりしていました。そこで共感してくれた仲間と一緒に会社を作ったんです。
ー今はキャンプとコーチングの事業を展開されていますが、なぜその2つを事業領域を選んだのでしょうか?
まずキャンプについてお話しますね。海外にいるときに何度かキャンプに連れて行ってもらったことがあって、いざ日本でキャンプをしに行くと、人との距離がとても近く感じて。
「使っていない土地を有効活用して、貸し借りができないかな?」と考えたんです。あとは単純に、キャンプ自体が今後伸びそうだと思ったので始めました。
コーチングは、それこそキャンプ事業で土地を集める工程に苦戦しているときに、自分自身がコーチングを受けて。誰がいいのかわかりづらくて、いいコーチを探す作業が大変だと感じていたんです。
売り手と買い手がインターネット上で取引をする、“マーケットプレイス”というビジネス領域には知見があったので、コーチと顧客を集める方法はイメージできていました。そこで、自分の経験も活かしてコーチングの事業に挑戦してみようと思ったんです。
ー事業を成功させるには、市場の波をつかんで、日々挑戦し続けることが大事なんですね。
まさにおっしゃる通りですね。
私は日々、「体感時間を延ばしたい」と思っていて。多くの人は、時間は平等だと思っていますが、質的観点に落とし込むとけっこう違うと思うんです。
例えば留学へ行くと、新しい体験をたくさんするので、振り返ってみると「ああこういうこともあったな」「こういうこともあったな」と、時間が長く感じるんですよ。
一方で、慣れていることを繰り返し行っていると、1日や1年があっという間に感じられて。ということは、自分の時間を長くするためにはあらゆる挑戦をしたり、新しい体験をすることが大事なんだと思ったんです。
“体感時間を延ばす” 事業を作りたい
ーマネジメントや経営をされている中で、コミュニケーションにおいて意識していることはありますか?
信頼関係を作るには、自己開示することが大事だと思っていて。まずは「私はこういう人です」と開示することで、相手も心を開きやすくなると思うんです。
あとは共通項を探すことも大事ですね。ニッチなことを話すのも良いのですが、自己開示の中で共通項を見つけることで、話題がどんどん広がり距離も縮められると思います。
ー学生起業して苦労したことを教えてください。
1番つらかったのは、創業メンバーとの別れです。一緒にやっていこう!と言っていたメンバーが抜けてしまうタイミングは、やはりきつかったですね。
ただ、こういったお話は学生起業ではあるあるなので、つらくても乗り越えて、事業を続けていく必要があるんですよ。続けられる力がある人は、起業に向いていると思います。
ーつらい状況を乗り越えるにはどうすればいいのでしょうか?
事業を続けなければいけない理由を作ることが大切です。
例えば私の場合、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から資金を調達していて。自分だけのお金ではないので、中途半端なことはできないですよね。
事業を進めていくと関係者がどんどん増えてきて、そういう人たちを大切にしなきゃいけないという気持ちが芽生えて辞められなくなるんです。そういう状況を自ら作っていくことは大事だと思います。
ー学生起業をして良かったと思うことはありますか?
若さは武器だと思います。「まだ若いから可愛がってあげよう」と思ってもらえることもあるので、若さは利用するべきです。
あと、私はまだ25歳なのですが、高校生の間で流行しているものを見ても共感できないことがあって。若いときの感性は、すごく貴重なものだと思います。
ー若いだけでも武器になることはたくさんあるんですね。最後に、塚崎さんの今後のビジョンを教えてください。
「体感時間を延ばせるような事業を作る」という軸はブラさずに活動していく予定です。今はキャンプやコーチング事業をしていますが、それ以外の事業も展開していくので、ご興味ある方はぜひご連絡ください!
ー学生起業に興味がある方も、ぜひ塚崎さんにご相談してみてはいかがでしょうか!本日はありがとうございました。