IT業界から脱サラして料理の道へ!sio株式会社の仕掛け人・オリタタクヤさん

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。今回のゲストは、1ツ星レストランを運営するsio株式会社で「仕掛け人」をするオリタさんです。

オリタさんはIT業界で営業を経験した後、フリーの料理人として独立。その後sio株式会社で料理人から仕掛け人の役職へと未経験の仕事に転身をしました。そんなオリタさんが料理の道へ踏み出した経緯をお話いただきました。

IT系企業の営業が料理人に転身?sioの仕掛け人とは

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

一つ星のフレンチレストラン『sio』を運営している会社で「仕掛け人」として働いています。

sioオーナーシェフ鳥羽周作のそばで広報業務やプロモーションをしながら、「sioのイズム」の言語化する仕事をしてます。例えば、noteで『取扱説明書』というsioの各店舗の楽しみ方やsioのイズムの発信ですね。

sioのイズムを発信するnoteマガジン

実は、鳥羽さんの弟子をしてまして。10月は28日くらい鳥羽さんのお宅に泊まる生活を送っています(笑)

ーそんなオリタさんが料理を始めたきっかけは何でしたか。

一番最初は、小さいときに家で料理をを作ったことがきっかけでしたね。好奇心で実験の感覚で目分量で色々な料理を作っていて。その作ったものを妹に食べさせて「美味しい」って言われるのが嬉しかったのが原体験です。

また、小さいときは食べるのが好きで、吐くまで食べるくらい食への関心は高かったですね(笑)

それぐらい食べることと料理作ることが好きだったので、僕が夢中でやってしまう領域が料理でした。人に喜んでもらえるっていうのがやっぱり一番嬉しいところでもあります。

ー料理人を目指すまで、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。

その後は4年制大学に進学しました。学生のときも宅飲みでご飯を作ったりして料理が好きだなと思いつつも、一度は一般企業に就職しました。

もともと料理とは別に、広告業界に興味を持っていたので、Webの広告会社に新卒で入社しました。そこでも食品メーカーにテレアポをしたりと、無意識に料理との関わりは持っていましたね。

最初の転職はちょうど4、5年前のレシピ動画メディアが伸びてきていた時代で。その会社だったら料理をもっと身近にできる、食の分野で仕事ができると思って転職しました。

料理の分野には関われたのですが、仕事は広告営業だったのでメーカーさんの新商品のプロモーションを考える仕事で。関わるうちにいつの間にか、自分が料理をする側になりたいと思うようになってましたね。

IT企業を経て料理人の道に進んだ理由

朝ごはん屋さん「オリタ食堂」

ーそこから料理人になろうと決心した経緯を教えてください。

料理系メディアに入ってから、少しずつ料理人になりたい気持ちが大きくなりました。

当時、週末にイベントで料理を作ったり講座に参加したりしていて。その中で『企画メシ』という、企画でメシを食っていくための企画力を勉強する講座に参加していました。講座の後に行う交流会で僕が毎回料理を作らせてもらうことになったのですが、それが楽しくて。

実はその企画メシで「僕は料理で食べていきます」って宣言しちゃったんです(笑)そのときは特に全然料理人になる決心はついていなかったのですが、やっぱり自分が一番やっていきたいことをしたいと思って。

料理人になると決めた、人生の転換期でした。

ー今までのIT企業でのキャリアを捨てて、料理人に転身するのに迷いはなかったのですか。

元々、僕には営業のキャリアを積んで一流になるみたいな想像はあまりできませんでした。

料理人として明確にやりたいことを描けていたわけではなくて……でもやっぱり料理をふるまう機会が増えていく中で、「自分のご飯を喜んで食べてくれる人がいるって素晴らしいことだな」と思ったんです。

この時間を増やすために、どうすべきか、何ができるかを考えたくて、料理人への一歩を踏み出しました。悶々としてた中でいきなり光が見えたのでもう、やるしかないなって思ったので迷いはなかったです。

そして去年、ケータリングやお店を間借りして飲食店をするなど、フリーの料理人として4ヵ月活動した後、2019年の8月にsioに入りました。

独学の限界を感じて料理人としてsioへ。挫折を経験した先に目指すもの

“言葉”の師匠である阿部さんがsioに来店

ーフリーの料理人からsioに入った経緯を教えてください

ケータリングや間借りで朝ごはん屋さんをする中で、色んな人に食べてもらうのは好きでした。しかし、僕の料理はあくまで趣味の延長線上で、独学の限界を感じたんです。

僕の料理を食べに来てくれる人は知り合いお客さんが多かったので、いわゆる”ホーム戦”でした。ホームの居心地は良かったですが、日々料理をアップデートする中で限界を感じて、ちゃんと料理の修行をしないといけないと思ったんです。

sioに入ろうと思ったもうひとつの理由は、鳥羽さんが話す会社の未来や料理人としての展望がとても素敵だと思ったからですね。そして鳥羽さんに「俺が有名にしてやるよ」と言う言葉に覚悟を決めてsioに入社しました。

ー料理人としてsioに入ってから、「仕掛け人」という役職に変わったと思うのですが、どんな気持ちの変化や経緯で変わったのでしょうか?

正直に言うと、料理人としての挫折がありました。挫折だらけですよ(笑)

料理人は専門学校を出てすぐに料理人として働いていたりと、ずっと料理の世界でやってきてる人が多いんですよね。もちろん、そういう経歴ではない料理人はいます。

師匠の鳥羽さんはサッカー選手の練習生から学校の先生になって、そこから料理の世界に入ったんです。そういう話も聞いてたので、僕も料理の世界で頑張りたいと思ったのですが、料理を長年やってきたスタッフとの力の差を感じていました。

料理をする時間はやっぱり楽しく、刺激的な日々で。でもそれだけじゃいけないなって。料理人以外でsioに貢献できることを探して、自身のSNSやnoteでの発信力を活用できないか考えました。

あるとき、sioの系列店「パーラー大箸」の自家製プリンについてのnoteを書いたんです。すごくおいしいプリンだったんですけど、もっとその美味しさを伝えて、集客まで繋げられないかなあと思って。

サウナ理論を活かした「ととのうぷりん」

sioには美味しいを作るために考えるべき独自の理論があるのですが、このプリンはその中の「サウナ理論」を使っています。強い苦味の中に気持ちのいい甘さを入れるんです。そのギャップがサウナの後の水風呂みたいな感覚で、食べると”ととのう”。だから「ととのうぷりん」だ、というnoteを書きました。それが予想以上に反響をいただけて。

料理を作るだけではなく、言語化して伝えるところに僕にできることがあるんじゃないかと思ったんです。一見、料理人としては意味ないように思えた経験も、僕が培ってきた言語化や伝える力を活かした結果、仕掛け人という役割が僕のユニークネスだと。今はその役割を愚直に突き詰めていこうと思っています。

「ワクワクする未来を想像する」仕掛け人・オリタさんが行動する原動力

ー料理人になると決めてすぐに行動ができる、オリタさんは素晴らしい行動力はどこからきているのでしょうか。

そうですか?!周りに行動力が高い人が多いので、僕自身が行動力があるとは自覚していませんでした(笑)

ひとつ言うなら「未来を想像すること」でしょうか。ワクワクする、やりたい未来を想像して、その未来を実現するために何をするかを考えることが行動につながると思っています。

ー行動をするときって、やっぱり足踏みとかしちゃいませんか?

はい。僕がフリーからsioに入社するときに、関係各社との付き合いなどで踏み留まる要素もたくさんありました。そこで行動できたのは、やっぱり入った後に料理人として成長できる未来があったからでした。

もちろん、僕も転職を3回しているので人に迷惑をかけたり、もやもやすることもありました。なかなか踏み出せないとき、決断できたのはやっぱり「もっと料理がうまくなりたい」という未来へのワクワクですね。

その後は大変かもしれないけど、決断する瞬間は未来のことを明確に描いて、そのためにやるべきことだと自分を納得させることが重要だと思います。

ー今後、どんなことに挑戦したいですか。

sioの「幸せの分母を増やす」という理念のもと、料理や”美味しい思考”を通して笑顔を増やしていく活動をしていく中で、僕は言葉による接客活動をしていきたいです。

僕の発信を通して、お客さんがsioを知ったり理解が深まったり、オンライン上でのコミュニケーションができると思っています。

今はブランドの理念や活動、代表の考え方などを知って、ファンになって来店や購入をしてくれる人が増えてると思います。SNSなどの発信を通じて、sio株式会社を加速させたい。それが今年、来年でのやりたいことです。

長期的には”美味しい”の教育に取り組んでみたいです。レシピを教えるのではなく、美味しいについて考えて美味しいのリテラシーを上げたい。そうすれば幸せの分母が増えるんじゃないかなと。

まだ明確ではないですが、sioが持っている”イズム”をもっと言語化していけば、ゆくゆくは学校が作れるのではないかと思っています。そのためにも、まだまだ仕掛けなきゃです!

ーステキなお話をありがとうございました!sioの仕掛け人、オリタさんの今後の活動を楽しみにしています!

仕掛け人として、sioのイズムを発信するオリタさんのnoteはこちらをチェックしてみてくださいね。

執筆・インタビュー:えるも(Twitter/ブログ
デザイン:五十嵐有沙(Twitter