学歴ゼロ、独学のみでキャリアは築ける?!わずか10ヶ月でTOEIC985点!元折り紙世界チャンピオン・加納宏徳

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第130回のゲストは折紙世界チャンピオンであり、世界へボカン株式会社でコンテンツマーケティングを専門に、コンサルティングと制作を担当されている加納宏徳(かのう・ひろのり)さんです。『彼女と出逢って3ヶ月で婚約した僕は、24年間「年齢=彼女いない歴」だった』というタイトルのnoteがバズり、「キナリ杯」でも賞を受賞されたことでも有名な加納さんに、独学での勉強方法や現在に至るまでのお話をたっぷりお聞きしました!

日本の魅力を海外へ。コンテンツマーケティングとは?

ーまずは現在のお仕事について教えてください。

英語圏の越境ECやBtoBに特化した、世界へボカン株式会社のコンテンツマーケターとして働いています。ボカンではコンサル兼営業チーム・広告運営チーム・コンテンツチームの3チームに分かれており、その中のコンテンツチームに所属しております。記事制作や市場調査はネイティブレベルの英語を必要とされるため、海外メンバーが中心ですが、私はチーム唯一の日本人になります。

主な仕事内容としては、クライアントさんのサイトに掲載する記事の企画とディレクションです。ライターさん向けに英語で指示書や注文書を作成したり、完成記事の品質チェックを行なっています。例えば伝統工芸品の場合、写真だけでは商品の魅力が伝わりにくいので、訴求ポイントを整理して記事やビデオ、SNS投稿など「一番伝わりやすい」形にしてお客さんに届けることで、海外のお客様に商品の魅力を伝える工夫をしています。

ーとても印象的な企業名ですね…!

はい(笑)社名については、社員の僕でも不思議に思っているので、興味あるかたは会社ページをのぞいてみて下さい。「世界へボカン株式会社」はもともととある企業の1事業部だったのですが、越境ECに注力するにあたり会社として独立した経緯があります。私は会社設立後、たまたま無職だったタイミングで声をかけていただき、ジョインしました。はじめはアルバイトとしてのスタートでしたが、現在は正社員として働いています。

 

小学生時代にハマった、奥が深い折り紙の世界。

ーそんな加納さんは実は折り紙が得意と伺いましたが…

最近は仕事が忙しくてあまりできていないのですが、折り紙好きの友人と一緒に、新しいプロジェクトをはじめようと考えています。折り紙の折り方などを掲載しているウェブサイトはあるのですが、それらの多くはかなり昔に作られたサイトが多いんです。また海外でも「ORIGAMI」の知名度が高いにもかかわらず、いろいろな折り方を体系的に説明しているサイトは限られています。その分野アプローチしていければと思っています。

ー確かにそうかもしれませんね。折り紙の世界、奥がとても深そうです…

深いです!複雑な折り方のものだと完成までに5時間以上かかるものもあります。また、折り紙は通常15cm四方のサイズを使用しますが、複雑な作品の場合は50cm、1m四方など大きいサイズを使用することもあります。他にも、通常よりもかなり薄く作られた折り紙も存在します。薄い折り紙は細かい造形がきれいにできるように、アルミホイルを使ったりもします。。

 

折り紙から英語へ。独学でなんでも極めてきた10代

ー折り紙は小さい頃からずっとされてきたんですか。

折り紙に没頭するようになったのは、小学生に入ってからです。家が5人兄弟だったということもあり、財政的におもちゃをたくさん買ってもらえるような状況ではなかったことも実は影響しています。(笑)折り紙は100円でも100枚程入っているので、コスパがいいおもちゃだったんですよね。図書館から借りてきた折り紙の本をみながら片っ端からいろんな折り紙を折っていました。

複雑系の作品を作るようになったきっかけは小学生の頃流行っていたムシキングです。「折り紙でカブトムシを作ったら面白いかな?」と思い作ってみたところ、友達の反響が大きく、カブトムシやクワガタを折り紙で量産するようになりました(笑)そして10歳の時に折り紙カブトムシたちを「日本折紙コンテスト」に応募したところグランプリを頂きました。

ー小学生にして世界チャンピオンはすごいですね…グランプリを受賞して何かご自身に変化はありましたか。

折り紙の世界チャンピオンになったことで、折り紙以外のことを極めたいと思うようになりました。当時親に「将来は自分でお金を稼いで」と言われていたこともあり、どんな仕事をしたいかに合わせてスキルを磨こうと考えました。洋楽や洋画が好きだったので、将来海外の仕事をするためには英語が必要と思い、英検の勉強に没頭するようになりました。英検の次はTOEICやフランス語検定、プログラミングやフォトショップなど、その後もスキルアップにつながりそうなことはガンガン挑戦していました。

ーいずれも独学で取り組まれたのでしょうか。

基本はすべて独学です。勉強自体はきらいではなかったのですが、学校という仕組みが自分には合わず、学校に行かなくなりました。僕は好奇心が人一倍強かったのですが、決まりやルールを重視する先生にあたり「なんで?」と聞くたびに怒られていました。先生との相性が最悪でしたね…

でも学校に行かなくても、テストではきちんと点数が取れたので両親に相談したところ、「家で勉強するなら、学校に行かなくても良い」と言われました。それ以来なんでも独学で勉強するようになり、それを証明するための手段として英検などの資格を受験していました。

 

学歴:ゼロからはじめる就職生活

ーつまりその後、進学はされなかったのでしょうか。

高校卒認定(高等学校卒業程度認定試験、旧大検)を取ったので大学に行くことも考えました。が、どうせ行くなら海外の大学に行きたかったのでお金が貯めてから行こうと思い、大学には進学しませんでした。

ー現時点で大学に行くことを検討されていたりしますか。

実際に大学に進学した人・大学を卒業した人の話を聞いてみたところ、「大学では遊んでいた」という回答が圧倒的に多かったので、今はもう日本の大学への進学は考えていません。勉強するために海外の大学へ進学を検討していましたが、勉強は独学でも十分できるかなと思っています。

ーそうなんですね。大学へ進学せずに働きはじめるのに抵抗や苦労などはありましたか。

学歴がないことによって苦労した点は2点あります。1つは大学生が経験する部活動やサークルの話などについていけないというカルチャー面での苦労。もう1つはやはり就職面です。「学歴がない」というだけで応募できない仕事もやはりあるので、学歴はあるにこしたことはないと思います。ただ、一度働き始めれば学歴がなくても実務経験やスキルで採用してもらえることもわかりました。今は特別、学歴がないことで苦労していません。

ー最初のお仕事はなんでしたか。

独学で英語を習得できていたので、翻訳の仕事に就くことを考えましたが、その時点ですでに独学生活をはじめて10年。自分には明らかに「コミュニケーション能力」が欠けているという自覚があったので、まずはコミュ力が求められる職場で働くことを考え、飲食店でアルバイトを始めました。

ーコミュ力は鍛えられましたか。

「コミュ障」が言い訳にはならない職場で、コミュニケーション能力を磨くには最適の場所だったと思います。宴会や立食パーティなどもできる大きいレストランだったので、レストラン内の仕事も幅広く担当させてもらいました。毎日のようにシフトを入れ、約1年半ほど働きました。

ー飲食店のアルバイト卒業後は、何のお仕事をされていたのでしょうか。

コミュニケーション能力はある程度磨けたので「今度こそ翻訳の仕事を」、と思い探したところ「学歴・経験なし」でも面接してくれる伝統工芸品のECサイトの翻訳の仕事を見つけました。アルバイトでの採用でしたが、飲食店バイトよりも時給が上がり、体力的にも楽でした。そして翻訳スキル以外にも独学で勉強してきたプログラミングなどの知識を活用して、ウェブサイトのデザインや画像編集でも貢献することができた結果、半年後に「正社員にならないか?」とお誘いいただけました。

そのプロジェクトでは3年程お世話になりました。ウェブマーケティングについてもっと学べる環境を求めていたタイミングで、お声がけいただいた不動産テックのスタートアップ企業に転職しました。しかし入社してみると、まだ商品すらできていない状況で、秘書業務や法務関連の仕事が中心となったため、再び転職をし、現在に至ります。

独学の秘訣はマーケティングにも通ずる?

ー20歳の時に独学でTOEIC985点を取得されたと伺いました、どのように勉強されたのでしょうか。

基礎の勉強はカッチリやった上で、海外ドラマを見て勉強することが多かったです。大抵の海外ドラマは「ドラマタイトル名 + エピソード番号 + transcript」と検索すると英文で「台本」を見ることができます。その台詞内のわからない単語を出てきた順番にメモし、話の流れで覚えながら勉強していました。
この勉強方法だと、ただの単語帳から暗記するよりも、エピソードの各場面とセットで単語を覚えられるので楽しく暗記が進められます。また会話の流れで単語を覚えられたので、より実用的な英語(イディオム)を習得できました。

ー英語以外も独学で習得されたとのことですが独学のコツはありますか。

独学で1番大事なポイントはまず「現状把握する」ことだと思います。自分の能力をテストし、「なんとなく知っている」という状態から「何を知っていて何がわからないか」という状態になること。そうすることで「わからない部分」を分析し、それを学ぶための方法を自分で考えることができます。何が分からないかが分かることで、学びの質は格段と上がります。

これはマーケターの仕事にも共通すると思います。マーケティングでもまずはデータ収集し、ゴールと照らし合わせた問題点を抽出してから、対策案をリストにし、順番に取り組みます。独学する際に意識していたことが、今の仕事にも生きているなと気づきました。

ーなるほど…とても参考になります!最後に今後の目標等があればぜひ教えてください。

あまり長期目標はたてないタイプですが、自分のスキルを今後も増やしていき、様々な状況や業務にスマートに対応できる人になりたいと思っています。自分の市場価値を引き続き高めていきたいです。

直近の方向性としては、英語や折り紙を極めたように、仕事においても何か賞を受賞することを目標に努力をしたいなと思っています。最近はマーケティングだけではなく「クリエイティブ・ディレクション」にも興味があり、独学で勉強をしています。世界最大級の広告賞「カンヌ・ライオンズ」のような賞も将来狙えたら良いなと思っています。

ーそれはすごい楽しみですね!今後のご活躍も応援しております。
取材:西村創一朗(Twitter
執筆:松本佳恋(ブログ/Twitter