色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。今回のゲストは、株式会社NOW ROOMのCVOである北野勇樹(きたの・ゆうき)さんです!
運営しているサービス「NOW ROOM」は、ローンチからわずか3ヶ月でアプリダウンロード数1万人を突破したにも関わらず、なんと広告費は0円だったとか! 一体その秘訣は!?
北野さんのこれまでの人生と、得意領域である“お家マーケティング”について掘り下げていきます。
CVO(チーフ“バイブス”オフィサー)の主な役割とは?
ーさっそく色々とお聞きしたいのですが、簡単に自己紹介をお願いします!
株式会社NOW ROOMにて、CVOをしています。
僕はもともと旅人をやってまして。国内外で色々な方と出会う中で、紆余曲折ありましてシェアハウス・ゲストハウス経営事業を起業したのですが、一度撤退しました。
今は「NOW ROOM」という初期費用0円、5秒で家が見つかる賃貸アプリの経営をしています!
ー「NOW ROOM」とは、どのようなサービスなのか知りたいです。
とにかくサクッと家が借りられるアプリです!
僕の原体験として、海外に行ったり起業したり、色々なことにチャレンジしている中でちゃんとお金を稼いでる時期もあったり、本当にコーヒーも買うお金もない時期もあったりしました(笑)でも、チャレンジすればするほど世の中的には”信用”を失って家が借りられないんです。
今の日本で家を借りようとすると、まとまった資金や安定的な収入がないといけなかったり、敷金や礼金で多額な初期費用がかかりますよね。そんな不動産業界の常識に疑問を持ち、もっとフラットに自由に暮らせるような仕組みを作りたいと思い、代表の千葉と立ち上げたサービスが「NOW ROOM」です。
アプリをダウンロードしていれば、不動産会社に行かなくても家が見つかる。オーナーとのチャットで直接家賃交渉ができる仕組みです。
例えば、フリーランスで収入が一定ではない方でも、自分のライフスタイルやその月の収入に合わせて好きな家が借りられることが大事なんじゃないか…と感じるんです。要は、その時に“バイブス”に合わせて拠点を変えられるってことですね!
家を持たずに色々な拠点を渡り歩くアドレスホッパーはもちろん、今後社会に出るZ世代の方々が、新しいライフスタイルとしてもっと自由に住まいや暮らしを選択できるプラットフォームにしていきたい。「家を借りるのってアプリが当たり前じゃないの?」と、そんな世界観を1年くらいで作ってしまおうと思ってます!
ーさっそく出てきた「バイブス」という言葉ですが、北野さんはCVOとしてこのバイブスを扱うお仕事をされているとか。
そうです(笑)「CVO」は、チーフ・“バイブス”・オフィサーの略称なんです。バイブス調整をする責任者という感じですね。何言ってんねん!って感じですが割とガチです!
僕の考えるバイブスとは、“揺れ”です。ちなみにパッションは“熱さ”です(笑)
メインの仕事は、いわゆる“マーケティング”ですが、注意してやってることは会社の皆が楽しく働ける環境整備です。社内の雰囲気やメンバーのモチベーションの調整を行います。調子が下がっている人を無理やり上げたりとかするのではなく、あくまでも働いているメンバーの調子や感情の“揺れ”をキャッチし、それに合わせて声かけしたり、気分転換に遊びに行ったりします。
モチベーションが下がっているメンバーに対し、調子を上げられるような働きかけをすることもあれば、ちゃんと成果を出せていないメンバーがいた時には、めちゃくちゃ厳しい指摘やフィードバックをする時もあります。Slackなどのオンラインコミュニケーションと、対面でのコミュニケーションを通じて、誰もが目の前の仕事にコミットできるようなバイブス調整を意識しています。
CVOとして、社内のバイブス調整のみではなく、メンバーとユーザーさんの間に入ることもあります。メンバーが伝えたいこととユーザーさんが求めていたことや期待値にズレが生じてしまうこともあるのですが、そういった場合にそのズレを理解した上で、双方にとってWin-Winな対応をしていく仕事です。
アジア人で初めて◯◯賞を受賞したり、ウユニ塩湖で“ポテサラ”を売ったり…刺激的な20代前半を過ごす
ー旅人だった北野さん、留学しようと思い立った経緯を知りたいです。
僕の場合、海外で活躍したい!とかではなく、「英語が話せたらモテる」というモテたい願望から海外留学を決意しました(笑)
大学までサッカーを頑張っていたのですが、それを諦めた際に何もやる気が起きず、ただ遊ぶのは好きだったので、友人とクラブなどによく行ってたんですね。そしたら、海外から来ていた金髪の美女とペラペラと話す友人を見て「カッコいい!」と思いまして。
それで、アルバイトで資金を貯めて渡米しました。当時はエージェント経由だったのでかなり高額な海外留学費用を払って行ったんです。そのアメリカ留学で、人生観をぶっ飛ばされましたね!
ー人生観をぶっ飛ばされた!? アメリカで何があったのですか?
まずアメリカの語学学校の寮に着いたら、ブラジル人・トルコ人・フランス人がいる環境でした。行ったばかりでまだ英語は話せなかったのですが、「日本の漫画に出てきそうな顔だな」と仲間にいじられて仲良くなったり、仲間と一緒にドライブしたら車を大破させたり、一緒にパーティーに行って浴びるように酒を飲んだり…とにかく日々目まぐるしく楽しい毎日でした。
現地でパリピとして認識されるようになったのか、「今日はどこのパーティーに行く?」とメッセージが来るほど、何でもアリな面白い日本人として覚えられていましたね。
たった2ヶ月しかいなかったのに「年間ベストクレイジー賞」をアジア人としてはじめて受賞して帰国しました。(笑)
ーすごい存在感を残して帰国してしまったんですね。
アメリカに行き、1ヶ月半くらいでやっとコミュニケーションが取れるようになってきたのに、今回の滞在の限界が来てしまって…時間が足りなかったです。
語学学校では、南米やヨーロッパの友人がたくさんできました。別れ際、みんなに「絶対、会いに行くから!」と言いまくってたので、またいつか世界一周して、留学先の友人に会いに行く旅をしよう!と決めていました。
ー帰国後は、日本でどのような活動をされたのでしょうか?
世界一周にはやはり資金が必要だったので、友人から勧められた訪問販売のアルバイトを死ぬ気で取り組んでいました。
訪問販売のバイトは週4以上、多いときには大学行きながら毎日やってましたね。結果、400人中2位の成績になり、月70万も稼いだこともあります。ハイになってくるとインターフォンが“乳首”に見えてきて無限ピンポンができるようになるんですよね(笑)
訪問販売のコツは、ピンポンを押したあとの一瞬でいかに気に入ってもらえるかということと、相手が何を提案されたら最も喜ぶか?ということを考えて最適な提案をすることなんです。相手の趣味趣向を家の周りや表情から汲み取り、提案できれば話を聞いてもらえます。もしかしたら、このスキルも“バイブス調整スキル”だったのかもしれません。
ー就職は考えなかったのですか?
当時、僕は教育学部に在籍していたのですが、教員採用試験を受ける気も就職活動をする気もなく、ESをせっせと作る友人と違ってアルバイトばかりしていました!
アメリカ留学に行った時、30歳で大学生の人とか、仕事を辞めてもう一度学び直しだ!って言って英語をABCからやり直してるおっさんがいたんですよね。それを見た時に、「好き勝手やっていいんだ!」って思ったんですよ。
日本の当たり前と、グローバルのスタンダードにはこんなに解離があるんだ!ってかなりのカルチャーショックを受けたことを今でも覚えています。
ー再び訪れた海外では、どのように過ごしたのでしょう?
2年間バックパッカーとして色々な国を訪れました。
ただ、あまり資金も多くなかったため、貯金を崩しながらゲストハウスで掃除する代わりに無料で宿泊させてもらったり、路上パフォーマーを盛り上げてチップ集めなどをしたり、ウユニ塩湖でポテトサラダを売ったりして旅をしました。
ウユニ塩湖でポテサラを売ったのは、ほんとに軽いノリで、当時一緒にいた仲間と「暇やな〜何かしよか〜」みたいなノリでやったらめっちゃ売れたんですよね。「ポテサラ御殿を作るぞ!」とか言ってはしゃいでいました(笑)
ーユニークすぎます(笑)その2年間を終えた後は?
ヒッチハイクなどで周っていたのですが、その流れでたまたま知り合った飲み屋のおじさんがいて。偶然、店長のポジションに空きがあったので彼がちょうどオープンする予定だった和食屋さんで雇われ店長になりました。
次々と新規店舗を立ち上げるようなベンチャー企業で、新しい業態の店がどんどん立ち上がる中、僕のやっていたお店もすごく忙しく、8ヶ月ほぼ休みなく店で寝泊まりしたり空き時間はビラ配りをしたり…“死ぬ気稼働”をしていたんです。
22歳〜24歳の2年間は世界一周でめちゃくちゃ遊んでいた時期だったので、ちょうど働きたいという意欲も高まっていたので頑張れました。
その後、店長を辞めることを決めた翌日に、たまたま旅先で出会った日本人の先輩から、「タイのチェンマイで物件を買い取って、一緒にゲストハウス経営をやろう!」と誘いが来たんです。やりたい!と思って飛びつきました。
先輩から「1人最低50万円くらい出して欲しい」と言われましたが「僕、5万円なら出せます!動けますよ!」って言ったら呆れられました(笑)結局先輩が資金をどうにかしてくれて、タイのチェンマイでゲストハウスをスタートしました。
その後、タイでの稼ぎだけでは暮らせないなと思って、色々な仕事にトライしたのですが、何人かで家をシェアすれば安く住める!と考え、シェアハウスを始めました。毎日ホームパーティをしていたら「ココに住みたい!」という方が増えてきて、どんどん家を借りるようになって、2棟…3棟…と増えていったんです。
次第に空き家問題の話や外国人向けのゲストハウスの話も出てきたので、色々な家を借りて事業をやっていました。それが25歳で立ち上げた「株式会社SPACE」の頃ですね。
起業するも失敗…事業撤退&借金まみれに。そして「NOW ROOM」を立ち上げる!
ーしかし株式会社SPACEは、長く続かなかったと?
そうなんです。最初はうまく行ったので天狗になったり、調子に乗ったりしてました。結果、ゲストハウス、シェアハウスなど不動産事業は全部潰してしまいました。
要因はマネジメント不足で、資金の持ち逃げをされたり、苦手なことも共有せずに各自バラバラに頑張っていたり、自分を強く見せようとばかり考えてしまって、突っ走った結果うまくいきませんでした。
立ち上げるのは簡単なのに、終わらせる方が難しかったですね。事業を撤退する時は、物件をすべてキレイにして返したり、不動産の貸し借りで支払わないと行けない資金が積み重なり、1人で全て0にする作業の中で借金も抱えました。初の大きな挑戦はここで終わりました。
ーその後、再度スタートアップ「NOW ROOM」に至った理由は?
最初、ゲストハウス事業が赤字だったので、僕自身もPRの受託やWEBデザインなどの受託仕事をやっていたんです。また、知人の事業立ち上げを手伝ったり、「Solo Language」という英会話のスタートアップを起業したりしてました。常に学びはあり刺激的でしたが…何かこう…”燃える”ものが無かったんですよね。
色々なことに手を出しすぎて、自分は何がしたいのか?と迷う時期も。借金は順調に返済しているけれど燃えるような何かがなく、ただこなしているような感じになってしまったんです。
そんな中、北海道で開催された「B-Dash Camp」というスタートアップのイベントに参加して、たまたま飲みの席が隣だったのが、NOW ROOM代表の千葉さんでした。そこで、”NOW”という事業を立ち上げようと思っているという構想を聞いて、「これだ!!」と感じ、すぐその場で「一緒にやらせてください!」と頼みました。
千葉さんと会話する中で、「この人と一緒にやれば、うまくいくかもしれない。」と内面から湧き上がるものがあって。「もう一回挑戦してみよう!」と思える何かがあったんです。
順調に仕事をしていけば借金は返せそうだったんですが、返すのを一旦諦めて(笑)、もう一度0に戻ろう!と思い、ロマンを求めてゼロイチのスタートアップにシフトチェンジしました。
ーそこからは順風満帆だったのでしょうか?
いや〜、最初はめちゃくちゃ辛かったです。
やろうとしていることはわかるけど、需要がない・本当にやれるのか不明・市場の話が刺さらない・実績もなく口だけと言われ続けたり…最初の立ち上げはかなりしんどいことも多々言われましたね。
その悔しさをバネに頑張りました。と同時に、「何でこの良さがわからんの?めっちゃチャンスやん!」とポジティブに捉え、とにかく良いと思うことを好き勝手やりまくってましたね〜。
結果、サービスとして少しずつですが、形になってきて周りからも応援してもらえるようになってきました!
ー現在は沖縄に移住!その理由は?
1週間ほど、ゆっくりしたいなと思ってふらっと片道チケットを買って沖縄に行ったんです。そしたらとても気に入ったんです。
そのまま住み、沖縄支社を立ち上げたい!と一念発起してインターン生や仲間を集め、沖縄で“NOW ROOM生活”をしているんです。今は海まで徒歩1分オーシャンビューの3LDKの家を「NOW ROOM」で借りて住んでいます。自分のサービスのいい面・悪い面を自分で感じながら、使いながら気づいたこともあるので、やって良かったですね!
なんか順調に行き過ぎて、本当に自分の人生か?と疑ってますが。(笑)
また、沖縄県はめちゃくちゃ特殊でチャンスがある拠点だと思います。沖縄本来の魅力は、島特有のカルチャーや天気の不安定さによる多面性にあります。これは決して短期的な観光や旅行では知ることができません。
まだあんまりみんな気づいてないですが、リモートワークをするにも最高です!
沖縄は、お財布の紐を緩めた短期の観光客向けにしかツーリズムがデザインされていないため、これから主流になる”中長期滞在のツーリズム需要”にはまだ対応できていません。そこに無限の可能性を感じでいて、どんどん住まいからレンタカーやアクティビティーなどの中長期むけプランを作って行きたいと思っています。
ーそんな北野さんが、マーケターとして広告費を使わずに順調にアプリユーザーを増やしていますよね。この秘訣って何かあるのでしょうか?
僕の考えるマーケティングの本質とは、「売らなくとも売れる」「ユーザー同士がオススメしあって勝手に広まっていく状態」だと考えます。費用をかけて広告を回したり数値を追いかけたりというマーケティングの仕事とは全然別物です。
マーケティングの責任者をしてますが、横文字にはめっぽう弱く、顧客獲得単価とか全く追ってません!常に、ユーザーが楽しい体験をして人に伝えたくなるか!だけを意識しています。
実際に僕が昔やっていた「お家(おうち)マーケティング」も地道な施策の企画やバイブス調整を行った結果、盛り上がった施策なのですが「NOW ROOM」で施設利用を体験してくれた方の口コミやTwitterなどでサービスの良さが広がっていき、ここまで話題づくりができました!
「人に伝えたくなる体験」でファンを増やせた。これは一種のマーケティングの勝ちパターンなのではないかと思います!
ー最近実施されたお試し施策も非常にユニークですよね。
「お試しNOW ROOM」という施策が今は人気ですね!1週間、たった1万円でゲストハウスに住めるという施策です。
今の家は手放せない…いきなり住むのはハードルが高い…そんな方に、お試しで1週間1万円から気軽に新しい暮らしを体験できるのがお試しNOWROOMです。毎月住むところを変えられる、家賃も変えられる。それってめちゃくちゃ最高ですよね?
実際に住んでみて、よかったらファンになってリピーターになってくれる。これがすごく嬉しいです。Twitterで「#お試しNOWROOM」と調べてみれば、どんな感じか伝わると思います!
ー最後に、今後北野さんが目指すものを伺いたいです!
現在、住まい・家探しにかかる費用を下げて、「暮らしを自由に」というコンセプトや仕組みはできてきていると思います。とはいえ、今後は「暮らしを豊かに」するというのも大事だと思っています。
暮らしのトータルデザインをする上で欠かせない、豊かな暮らしのレコメンドをしていくことで、新たな発見をしてもらいたいなと思ってますし、我々も新しい発見を求めています。
暮らしのデザインは、自分の永遠の研究テーマですね。目指すは「暮らしのDJ」です!
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ーわくわくするようなお話、ありがとうございました!「NOW ROOM」と北野さんの今後が非常に楽しみです!
写真:北野さんご提供
執筆:Moe
デザイン:五十嵐有沙