仕事もプライベートも欲張るロールモデル。「働く女子のミカタ」パーソナリティー安彦海咲

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第490回目となる今回は、安彦海咲(通称:アビー)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

バリキャリでもゆるキャリでもない「ポジキャリ」を広めたいと意気込む安彦さん。令和を生きる女性たちがポジティブに働ける世の中について語っていただきました。

音楽を通して触れた、国際交流の原体験。成長と共に養われたのはタフな精神性

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

会社員をしながら「働く女子のミカタ」というウェブラジオのパーソナリティを行っています、安彦海咲と申します。本日は、ラジオで呼ばれている「アビー」のあだ名でお話をさせていただければと思います。

ラジオの他にはオンラインの日韓交流の団体『MOON「문」~ここからはじまる日韓交流~』と「Lean In Japan」という、働く女性が勇気を持って一歩を踏み出そう、がテーマのNPO団体に所属しています。

ーそんなアビーさんはどんな幼少時代を過ごされましたか?

今までの人生を振りかえると、10歳での初めての海外ホームステイがすべての始まりだったと思います。

当時在籍していた児童合唱団の遠征でオースラリアに訪問したのですが、当然ながら英語はまったく話せない状態で。ステイ先のファミリーとは、電子辞書を使って必死にコミュニケーションを取っていました。

音楽を通じた国際交流自体は楽しめましたが、言葉の違いが壁となり自分の気持ちを伝えられない所にもどかしさを感じ、もっと語学を勉強しようと思うきっかけに。また、初めて「違う国の同級生」たちと交流し、文化や生活スタイルの違いに刺激を感じました。

これが、現在も続く国際交流活動に繋がる原体験です。子供ながらに「世界は広いなぁ」と思ったのを覚えています。

ー中学高校での体験を教えてください。

中学受験で第一志望に入れず、人生で初めて挫折を感じました。高校受験では失敗を踏まえ、推薦に近い形で確実に合格できる手段を選びました。

中学では内申点のために生徒会長をやったり優等生キャラで過ごしたりしていたので、高校ははっちゃけよう!と決めていて。

そこで選んだのが、バトン部です。3学年合計で女子生徒が約60人という体育会系の部活で、現在のタフな精神性の基礎はバトン部で身についたと思います。

大学受験失敗で学んだ「自分の限界を自分で決めてはいけない」。現在のチャレンジ精神の源に

ー大学はどのように選びましたか?

高3になる前の春休みにケンブリッジ大学の語学研修に参加しました。全国から多くの生徒が集まり、新鮮な価値観に触れられたのが印象的な体験です。

それまでの私は、高校の付属の大学にそのまま進学するのが当然だと思ってて。しかし彼らと話す中で「もっと外国語を学べる外部の大学に行きたい」と考え、英語での実践的なコミュニケーションや国際関係を学べる大学を調べました。

しかし、第一志望の結果は不合格。大学受験失敗が、私の人生最大の挫折です。今までにも中学受験は失敗しましたが、内心では「本気でやればできる」と思っていたんです。

大学受験失敗を通して、初めて「努力をしても報われないことがある」と学びました。

ー人生最大の挫折である大学受験失敗において反省点はありますか?

あります。当時通っていた予備校の先生に「第一志望はセンターだと合格ラインを超えないと思うから、一般でいこう」と言われ、その言葉を鵜呑みにしたことです。

実際に蓋を開けてみたら、センターの出来がかなり良くて第一志望にB判定が出ていたんです。「もし出願していたら合格したかも」と思ったら、悔しくて悔しくて。

もっと自分のことを信じてあげればよかった。自分の限界を自分で決めずに、挑戦すればよかった。と深く反省しました。この後悔も、今の私のチャレンジ精神に繋がっていると思います。

日韓交流プログラムで得た達成感。英語の世界を広げつづける大学時代

ー大学生活ではどのような活動をしましたか?

神田外語大学に入学し、当初求めていた実践的な英語の習得について学びました。その中で「もっと色々な国の人たちと会いたい」と思い「日韓学生フォーラム」という日韓交流を行う学生団体にジョイン。直接対話を大切にしている背景から日韓だけど公用語が英語という珍しい学生団体なのですが、とにかく英語を使って何かを成しとげたかったんです。初年度に初めて韓国に行き、日韓の歴史問題に触れ、学生を通して韓国を知るたびに世界が広がって。英語だけではなく、韓国という国や日韓関係についてもっと学びたいと思いました。

翌年は団体代表として、日本開催の日韓学生交流プログラムを企画し、長崎の原爆の式典に韓国の学生と一緒に参加もしました。

日韓学生交流プログラムは、私が人生で初めて「ゼロからイチを作り上げたもの」です。お互いに第二言語である英語でコミュニケーションを行うので大変なことも多かったですが、メンバーの関係の質を高めるために奔走したことも今の自分の力になっています。

ー日韓交流以外でも英語力を伸ばす機会はありましたか?

高校の頃から「大学では絶対に留学したい」と思っていて、その夢が叶いました。念願だったアメリカの学部留学を行い、シアトルのカレッジで半年間学びました。

現地の大学では広告やHR系を中心に幅広く学び、大変ながらもとても楽しかった思い出です。今までの数週間のホームステイと違い、第二言語を用いて「生活」をしなければならないので。この長期留学も、私が大学で成しとげたことのひとつです。

転職を重ねて見つけた「本当に大切にしたいこと」。英語を使って叶えたい「理想」への気づき

ー就活はどのような視点で行いましたか?

就職先でも英語を活かしたいと思っていたので、グローバルな社風・活動の企業に絞りました。また元々SNSやインターネットへの興味が強く、IT系のメガベンチャーで就活を行いました。

私自身が、SNSを通して世界を超えて誰かのきっかけになれたり、役に立てたりするのが嬉しくて。ここでも人生を振りかえると「グローバル」はキーワードになっています。

その結果、楽天グループ株式会社から内定をいただき入社をしました。

ー入社後はどのような仕事を?

第一志望だった広告の事業部に配属となり、デジタル広告の営業を行いましたが、2年目で大阪に転勤に。これまで東京以外の地方には縁もゆかりもなかったので、とにかく不安が大きくて、辞令が出た時は上司の前で号泣してしまいました。

「どうして私が?」と。しかし大阪支社は東京と比べて営業の人数も少なく、挑戦できる領域が広くなり大手の広告代理店やクライアントを担当することができました。今思えば、地方でしかできない経験を積むことでキャリアのプラスにもなると気持ちを切り替えたことが自己成長に大きく繋がりました。

自分のバリューをスモールグループで発揮するための葛藤もありましたが、結果的には大きな案件で社内MVPも受賞することができ、人にも恵まれた期間でした。ゆかりが無い地だったからこそ、東京以外の場所で働くのは良い経験になったと思います。

楽天で3年間の国内営業後に「もっと英語を使って広告の仕事がしたい」と思い、外資系のメディア企業に転職をしました。

そこではグローバルチームに入り、英語で働く目的自体は達成できましたが、業務内容はフロントに立たないプランニングが主でした。

その時に「もっとお客さんに近い距離で、フロントに立ってプロジェクトを進行したい」という気持ちが大きくなり、1年の早期退職をして現在の企業への入社に至ります。

ー2度の転職を経て感じたことは何ですか?

改めて「自分のやりたいこと」や「仕事をする上で1番大切にしたいこと」が分かりました。

最初は「英語を使いたい」という気持ちが強かったのですが、英語はあくまで目的を叶えるためのツールだと仕事を通して改めて気づいて。頭ではわかっていたのですが、実践したことでそれを痛感しました。私にとっての1番は「主体的に挑戦できる環境にいたい」だったんです。

決められた仕事をするよりも、自分で考えてアイデアを形にしていく仕事がしたい。この気持ちに気づけたからこそ、今までの挑戦や挫折、転職も、無駄ではなかったと思います。

自分がロールモデルになって「働く女子のミカタ」になる。ポジキャリという新しいキャリアスタイルを提唱

ー現在、ウェブラジオ「働く女子のミカタ」を配信中のアビーさん。ラジオを始めようと思ったきっかけは何ですか?

大阪にいた時に、就活生向けのOBOG訪問アプリで出会った女子大生たちと話す機会があって。彼女たちは「やりたいことがあるのに勇気が出ない」「地方在住で親が安心する職業に就かなくてはいけない」など、就活における多くの悩みを抱えていました。

それを聞いて、すごくもったいないと感じたんです。自分より下の世代のキャリアを後押ししたい、と思いました。また、私と同世代の女性は「仕事もプライベートも両方大事にしたい」という意見が多いものの、同じ価値観を持つ人同士が繋がれていない感覚がありました。

これらのニーズを叶える手段を考えた結果、私が選択した方法がラジオです。子供の頃はアナウンサーになりたい夢を持っていたのもあり、自分で配信ができるならやってしまおう!と。当時から、人前で話すことが好きだったんです。

ーアビーさんがラジオのテーマにしている「ポジキャリ」についてお聞かせください。

今の日本の女性のキャリアは「バリキャリ」か「ゆるキャリ」に区別されがちです。

しかし私個人としては、バリキャリという言葉はプライベートを切り捨てているようで、あまり良い印象がありません。対してゆるキャリは、仕事よりはプライベートを優先して充実させたい、というニュアンスですよね。

私はこの2つのどちらでもなくて。仕事やキャリアも頑張りたいし、プライベートも楽しみたい。そこで、令和で働く女性の3つ目のライフスタイルとして提唱したのが「ポジキャリ」です。

女性はどちらかを諦めなきゃいけない、なんてことはない。「仕事もプライベートも、両方欲張っていいじゃん!」というテーマでラジオを配信しています。

ーアビーさんにとっての「挑戦し続ける」ためのモチベーションは何ですか?

私自身が「3ヵ月後、1年後どうなっているか分からない」という「未知」が好きなんです。

大学受験もですが、自分の知らない世界に踏み出すと絶対何か変わりますよね。自分の視野が広がること自体が楽しいです。

また、私は「自分の機嫌は自分で取る」はとても大事だと思っていて。

特にリモートの今の時代、自分をポジティブに保つのが難しい時も多いです。私は人と話すことが大好きなので、会社以外のコミュニティの人とも「会話」をするようにしています。

「自分自身を保っていられる方法」を知っていて、実践できている点も、私の挑戦のモチベーションになっていると思います。

ーアビーさんがこれから挑戦したいことを教えてください。

「働く女子のミカタ」は現在はラジオ番組として配信しているのですが、将来的にはコミュニティを作り拡大させたいです。

色んな世代の女性がポジティブに働ける世界観を作るための情報発信は続けながらも、コミュニティ活動は自分自身で旗振りをしながら進めていきたい。ポジキャリを世に広めていけたらいいなと思っています。

私個人としては、少しおこがましいかもしれませんが「身近なロールモデル」になりたいです。

”ロールモデル”というと、特別な偉業を成しとげている人ばかりなイメージがあるかと思いますが、中には私のように「どこにでもいる普通の女性」のロールモデルがあってもいいと思うんです。

私は「隣にいるお姉さん」のようなポジションで、太陽のように明るくポジティブなパワーを持ちながら、さまざまな人にとってのロールモデルになりたいと思っています。

ー最後に、U-29世代へメッセージをお願いします!

女性だって、仕事もプライベートも欲張っていいんです!両方をポジティブに選択して両立できる「ポジキャリ」の考え方も、数ある選択肢に入れていただければと思います。

スターやエリートではなくても、私のような普通の女性でも、色々なキャリアや人生の楽しみ方があります。自分で自分の限界を決めないように、迷ったらとにかく「やってみる」が大切です。

ーありがとうございました!アビーさんこと安彦海咲さんの今後のご活躍を応援しております!

今回のゲスト・安彦さんがパーソナリティを務める「働く女子のミカタ」の詳細はこちら。

取材:山崎貴大(Twitter
執筆:METLOZAPP(Twitter/BLOG
デザイン:高橋りえ(Twitter