自分の人生を生きたい若者たちへ ー Yahoo!アカデミア学長・伊藤羊一がチャンスを掴むための秘訣について語る【U-29 Career FESレポ】

ユニークな価値観を持つ29歳以下の世代(U-29世代)のためのコミュニティ「U-29.com」が運営する月イチイベント『U-29 Career FES』。

第三回となる今回は、Yahoo!アカデミア学長として次世代のリーダーの育成や全国各地でのプレゼンテーション指導、自身の著書である『1分で話せ』『0秒で動け』などの執筆など、多方面で活躍されている伊藤羊一さんをゲストにお迎えしてオンラインで開催!

伊藤さんが今に至るまでに経験したこと、今の若手に伝えたい想いを伺いました。

 

人生のどん底を経験。20代後半まで「自分の人生を生きていなかった」

ーまず、伊藤さんのこれまでの人生、どのような道のりを歩んで来たのか教えて下さい!

直近では武蔵野大学で新しい学部の創設に携わったり、著書『1分で話せ』に関しては電子書籍なども含むと約40万部を売り上げたり、Yahoo!アカデミア学長として数々の講演やイベント活動をしたり多忙で非常にやりがいのある面白い日々を過ごしています。

ですが、大学時代は社会に向き合うこと・社会と触れ合うことを避け、新卒で入社した会社ではうつ病になるなど“人生最悪の時期”を経験したこともあります。

ちょうどU-29世代の皆さんと同じ20代の頃は、人生グラフにおいてもあまり良くない時期だったんです。

ー20代の頃がグラフでも凹んでいますが、どんな学生・新卒時代だったのでしょうか?

僕は学生時代の思い出と言えば、高校のテニス部をクビになったり、大失恋したり…大学に入ってもバイト・バンド・デートの3つを繰り返すただれた生活を送っていました。要は「無」だったと思います。当時の僕はチャレンジすることが怖いと思い何もやれてなかったんです。その後就活を迎え、新卒で入社した会社でもやる気が出ず、勉強や業務もできない。

研修では160人同期中、4人の不合格に入ってしまった。その後受けた通信教育では8科目中1科目しか終わらず、1人だけ突破できないような状態です。

仕事も上手く行かない、勉強もしたくない、飲み会も馴染めない…社会との関わりを避けてきた学生時代を送った僕が社会に出てもいきなり上手く行くはずもなくやる気レスな日々を過ごしていました。

ーそんな伊藤さんの「人生最悪」の時代には具体的には何があったのでしょうか?

新卒で入社して、26歳になった時にうつになりました。

やる気が出ない・仕事がうまくいかない状態で仕事が終わると、家に帰りたくない…という状態が毎日続くんです。夜遅くまで飲み歩き、朝は起きれない上に、出社する時間になると吐いてしまう日々が数ヶ月続きました。「俺はまだ本気出してないだけ!」とギリギリ働いていたのですが、そんな生活を続けている中で、うつになったんです。

 

20代後半で「うつ」を経験。乗り越えられた背景にはどんなことが…?

写真提供:リクナビNEXTジャーナル

ー「うつ状態」は、なぜ乗り越えられたと感じますか?

日本興業銀行の、仲間の存在が大きかったですね。たまたま配属された支店のメンバーがほんわかした雰囲気で、「会社きてたら良いよ!そこに座ってな!」とか言ってくれるんですよ。こんな自分にも仕事をちゃんと任せてくれていました。

お節介に手取り足取り教えてくれる仲間も多かったのもあって、とある案件が成功し、その経験があって仕事と向き合えるようになったんです。

結局は、自分が苦しんでる時に助けてくれた仲間の存在があったから、抜け出せたと思います。見つめ続けてくれる仲間が居て、自分は変わるキッカケを貰いました。人に向き合い、対話をするってことが非常に大切だと思いましたね。

ー20代の最悪な時期を脱したキッカケ、「とある案件」とは何があったのでしょうか?

それまでは「何のために働くのか」という意味を見いだせず、やる気が全く起きなかったのですが、27歳の時にとあるディベロッパーさんのマンション開発の融資案件を任されたんです。初めて「コレをやりたい!」と思えた仕事に出会えました。

銀行の仕事としては、言ってしまえばよくある普通の案件ではあります。ですが、カッコよくて、頑張っていて、大変思い入れのある大好きなクライアントでした。当時のだめだめな自分でも「これは良いぞ!」という心が騒ぐ感覚があったんです。

1年後、完成したマンションを見て衝撃を受けました。更地だった土地がマンションになっていて、そこに住む人々の顔や姿を見て、「この人たちのために、頑張ろう! 社会ってこうやって動いてるんだ!」と気づき、仕事と向き合えるようになりました。

人生グラフ上だと自分の人生が「盛り上がっている」のはここ10年程ですが、この出来事が働く原点でしたね。27歳の頃に作ったキッカケのお陰で抜け出せました。

ーつらい若手時期を抜け出した後、30歳以降で困ったことや後悔したことはありますか?

困ったことは多数あります。特に12年前、ハードな仕事をしつつ暴飲暴食や不規則な生活をしている時期に突然、糖尿病になり入院をしました。血糖値は卒倒するレベルの悪さでした。入院後は痩せるために偏った食事をしていたら高血圧に…。

健康な状態になってみると、健康な身体の状態で仕事ができるって素晴らしいと感じました。今では健康が非常に重要だと感じています。

20代の人は、健康な状態が当たり前の方もいるでしょうし、気遣っている人って少ないのかなと思います。でも結局、健康をないがしろにして後悔するのは自分です。

仕事でもプライベートでも失敗はあるだろうが、健康で失敗すると大変なことになりますからね…。経験したからこそ、馬鹿にしてはいけないと思いますよ。

 

やってきたチャンスをものにする、自分の人生を生きるために「自分のリズム」を作ってみる

写真提供:リクナビNEXTジャーナル

ー成功体験には仲間の存在が大きかったと思うのですが、ご自身でも意識的に取り組んでいたことはありますか?成功を勝ち取るために努力していたことを知りたいです!

もちろん、案件たった1つで劇的に変わったわけではなく、他にもたくさんのルーチンワークをやっていましたし、盛大な失敗体験もあります。ただ、成功するにしろ失敗するにしろ、「踏み出す」ことが重要でした。

頑張る・なんとかする・無理をするのはちょっと違う。毎日7時に起きれた・日記をかけたなど、小さなことを繰り返し自分の習慣を作り、その積み重ねが自分を変えるはずです。

自分の好きなこと、小さなことを積み重ね、習慣ができてくると自然と身体が動くようになるはずです。

ー偶然、やってきたチャンスをものにするためのポイントはあるのでしょうか?

そうですね。“地ならし”は必要だと思います!昨日までできなかったことをいきなり伸ばすのは難しいので、日々積み重ねがあることが大切です。

僕の場合は、仲間と良好な関係を築くこと・会社に行くことの2つは日々続けていました。そのため、たまたま成功したのではなく多くの仲間が助けてくれたことが成果に繋がったのです。そして物事が好転した後、起きた後は振り返りをすることが大切です。

どのようなことができたのか、何が良かったのか、振り返りをして「自分のリズム(習慣)」にできるかどうかがポイントです。PDCAを回すってこういうことだと思います。

ー伊藤さんは、具体的にどんな振り返りの方法をしていますか?

僕は毎日の振り返りと、1週間の振り返りの2種類を行っています。

振り返りは小さい範囲で良いので毎日やること。週単位のものはスケッチブックにグラフやイラストを書いたりして思考を整理したり書き出したりしています。

僕の場合は日記と散歩をしていました。日記は、1行でも10行でもいいので毎日付けること。散歩は、頭の中にあるアカ(汚れ)のようなものを落としていく時間でした。日々、リセットすることに集中しています。日記は言語として振り返り頭の中をリセットし、瞑想や散歩は心身をリセットするんです。
毎日「またここに戻ってきた」というような感覚を持つ。そして自分に起きた出来事や感じたことを振り返ることができるようになる。すると自分を客観視できます。

ー最後に、「自分の人生を生きる」には何が必要なのでしょうか?

3つあると思います。

1つ目は、「目指すべき道はなんだ?」「自分は何がしたいんだ?」「天職は何だ?」ととにかく毎日問うこと。僕も今でも習慣としてやっています。

2つ目は、問うだけではなくツッコミを入れること。そのサイクルを作ることです。

3つ目は、他人と比べないこと。他人の良さは自分の肥やしにすれば良いんです。あえて「みんな好き!みんな最高!リスペクト!」と言いまくり、自分を洗脳していくと他人と比べないようになっていきます。つい比べてしまうけどそれは仕方ないこと、まずは繰り返して言いまくってください!

僕は2011年に発生した東日本大震災をキッカケに「自分は人生において何をやりたいんだ?」と本気で考えました。自分の人生を考え、生きることは非常に大切。今からでも遅くないので、ぜひトライしてみてください。

 

終わりに…20代の若者たちへ

自分の人生を生きたいと思うなら、自分は何をしたいのか?何のために生きているのか?などを青臭いかもしれないけど、本音で考え、伝えることを意識して欲しいです。

照れずにこういった感覚を持てること、人との対話の時間を持てることが大切です。こういった講演や質問に回答することでも、僕にとっては振り返る時間になっています。「意識高い系って言われたら嫌だな…」と悩んでいたときもあったけど、今では「伊藤さんってそういう人だよね」と言われるまでになりました。

斜に構えていた20代を過ごしていた僕も、明和地所の案件が終わった時に社長と抱き合って清々しく号泣した瞬間、「心のシールド」を失くすことができました。自分を防御しようとして、シールドを張ったり斜に構えてしまう気持ちもすごく良く分かります!ですが、経験することを恐れないで。

やってみて上手くいこうが失敗しようが、意識的に心のバリアを外し、もっと人生を楽しんだほうが良い!U-29世代の皆さんも、「どう生きるのか?」を考えて色々なことに挑戦してみてください。

Lead the self(自らを導く)」という言葉を、最後に贈ります。

 

伊藤羊一さんのキャリア・人生観についての話をもっと知りたい方はこちら!

著書:
『1分で話せ』(SBクリエイティブ 2018年)
『0秒で動け』(SBクリエイティブ 2019年)
『やりたいことなんて、なくていい。』(PHP研究所 2019年)

今回の講演のグラレコ

取材:西村創一朗
デザイン:矢野拓実
グラレコ:木村あゆみ
文:Moe