”実は僕、ゴルフの楽しさが分からなかったんです”。そんな彼が手がける「従来に囚われないゴルフ場」とは

 

さまざまな経歴を持つ方々が集まり、これまでのキャリアや将来の展望などを語り合うU-29 Career Lounge。第30回目のゲストは株式会社セブンハンドレッド代表・小林忠広さんです。

高校時代までラグビー一筋だった小林さん。さまざまなきっかけを機に、今では 「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」をビジョンに、ゴルフ場を経営しています。

若くして、経営者の道を歩んだ理由とは何か。

実は小林さんは、ゴルフがあまり好きではなかったようです。そんな彼だからこそ手がけられる「従来に囚われないゴルフ場」の仕組みがありました。

▼プロフィール
小林忠広:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。 事業承継により世界最年少のゴルフ場社長としてセブンハンドレッドの経営を行う。 「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」をビジョンとし、 地域とゴルフ場の融合を図る事業の他、 新しい次世代ゴルフ場作りを経営戦略として行っている。2020年にはフットゴルフワールドカップの招致に成功。地域一帯となった取り組みに昇華すべく奮闘中。

カンボジアのボランティアと東日本大震災が教えてくれたこと

ーーまず小林さんの学生時代をお伺いしたくて。今はゴルフ場を経営されていますが、大学時代までラグビー一筋だったんですよね?

小林忠広(以下、小林):そうですね。18歳の時にスタディツアーでカンボジアに行ったんですが、その経験があって方向性がガラッと変わりました。

現地ではスラム街に行ったのですが、母子ともにエイズにかかっている家族に出会って。ただ、稼ぎがないので「私たちは死ぬしかないんです…」と言われて、本当にこんな世界があるんだなとびっくりしたんです。

ーーなるほど…。日本では馴染みのない話なので、衝撃ですよね。

小林:高校生までラグビー一筋だったんですが、「好きなことに没頭できる環境って幸せだ」と再確認できたんです。

一方で「自分は困っている人たちになにができるんだろう…?」と思ったのがターニングポイントだったと思います。

そして、その後に東日本大震災が起こりました。ここでも、すごく衝撃を受けたんですよね。

大学でもラグビーをする選択はあったんですが、「もっとやるべきことがあるはずだ」と思い、被災地ボランティアに出向いたりしていました。

ただ、実際ボランティアをしてみて思ったのが「やっぱり、自分でできるインパクトってものすごく小さいな…」ということでした。

NPO法人の創業をきっかけに大学院へ進学。そこから事業承継の世界へ

ーーそこから「教育」に繋がって、NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでの活動創業に繋がったんですね。

小林:自分でやりたいことを考えた時に、「もっと現場の教育に根差したいな」と思いました。僕がラグビーをやっていた頃、体罰や根拠のない指導を受けてラグビーを嫌いになる瞬間があったんです。

なので、まずは周りの大人たちがしっかりと、子供の可能性を信じられる環境を作る。その先に、子供達が自分たちの可能性を信じられると思ったので、そこから「コーチの教育」に注目しましたね。

ただ、まだ分からないことがたくさんあったので、懇願して、ラグビー協会のコーチングディレクターで当時U20日本代表監督だった、中竹竜二さんという方の補佐でラグビー協会に入りました。

ーーなるほど。そこから、今のゴルフ場の経営に繋がったきっかけは何でしたか?

小林:就活もしていましたが、今後のキャリアを考えた時に「会社員をしながらNPOを続けるって大変そうだな…」と悩んでいたんです。

社会的に意義のあることを掲げておいて、課題が解決しきる途中で降りるのは本意でないし、期待していただいた方々にも裏切りになるので、NPOの活動をやめる気はありませんでした。

せっかく本気でやるなら、大学院に入って視野を広げようと思い、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入ったんです。

そんな折、卒業が迫ってきて頃、はじめて父から「大学院での勉強がそろそろ終わるけど、どうする?」と話しかけてくれて。父と会話を重ねていくうちに「事業承継をしたい」と思い、今に至ります。

ビジョンは「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」になること

ーー家業を引き継ぎ、もう少しで1年が経過すると思いますが、実際にどうですか?

小林:社長継ぐ前は取締役として入っていましたが、代表になると「全然違うな」と実感しています。

「ゴルフ場の事業承継」と言うと、周囲から「優雅で余裕がありそうで、いいね」と言われるんですが、想像以上に大変なんです……。

また、今はほとんどが年上の方で。マネジメントも経営も試行錯誤していかないといけない中で、やはり「ビジョン」が大切だなと思いましたね。

ただ、みんなが向かいたい方向や「こうなったら幸せだよね」という基準を掲げて、そこにどれだけ忠実でい続けるかがむずかしいですけど、僕の仕事だと思っています。ラグビーをやっていた経験から“One for All, All for One”(みんなは一人のために、一人はみんなのために)の考えを大切にすることで、結果的に高い成果を出せると信じています。

一方、まだ未熟なので、時には自分もぶれちゃうこともありますし、「こうした方がいいよね」と気づいて言ってしまうこともある。

でも大切なのは組織として「いかに自分たちで自己学習できるか」だと思っているので、を常に現場のスタッフの方の意見や行動ができるための環境づくりを意識しています。

ーー経営って本当にむずかしいですよね。どんなビジョンを掲げていますか?

小林:今は、シンプルに「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」になることです。「みんな」は、お客様・従業員・地域・環境などをまるっと含めています。

「何がそれぞれにとっての幸せか?」を考えて、それを踏まえ、「どんなサービスを提供できるか?」を模索して実行することが、当面のビジョンですね。

ーー若いのに、幅広く考えられていてすごい…。

小林:ビジョンなので、まだこれからな取り組みがほとんどです。そのために、成すべきこととしてのミッションは「世界一何でもできるゴルフ場」と置いています。

制限なく、広いゴルフ場をいかようにも活用して「やりたいことを何でもできるスタンス」を目指して。日本一だと物足りないので、どうせなら「世界一何でもできる環境」にしたいですね。

今お伝えしたビジョンとミッションを作ったのは、会社として長くビジョンやミッション、理念などがなかった中で大きな出来事でした。広く、そして深く浸透するにはまだ時間がかかると思っていますが、目指していかない限り到達しないので大きな一歩です。

ゴルフの楽しさが分からなかったからこそ作れる「従来に囚われないゴルフ場」。2020年はフットゴルフの誘致への挑戦

ーー実際にビジョンとミッションを掲げて、今年1年間でアクションを起こしたんですよね。例えば、どんなことをされましたか?

小林:僕の圧倒的なアドバンテージとして、「ゴルフの楽しさが分かっていなかった」ことにあると思っています。

あ…ちなみに、日本でゴルフが好きなゴルフ場経営者はいても、ゴルフの楽しさが分かってなかった経営者は僕を除いていないと思います(笑)。興味がなかっただけに、ゴルフ未経験者の気持ちが理解できて、どうしたら興味を持って貰えるか、試して貰えるか、従来とは違うゴルフの展開に活かしていきます。「ゴルフ場でのキャンプ」を企画して、好きなところにテントを張って寝ましたね。他にも、サッカーと掛け合わせた「フットゴルフ」もしました。

ーーあら…(笑)。だからこそ「従来に囚われないゴルフ場」を目指せるのではないですか?

小林:そうなんです。生粋のゴルフ好きだと、「ゴルフをよりよくしたい」や「ゴルフファンのために」だけが目的になり、ゴルファーファーストになってしまうんです。嫌いでも好きでもない、という僕のスタンスがちょうどいいのかなと(笑)。

もちろんゴルファーの方にも思いっきり楽しんでいただくのは前提で、ノンゴルファーの方にも楽しんでいただく。「みんな」が楽しめ、幸せを感じられるために何ができるか、という視点から考えています。

ーー話が変わりますが、フットゴルフのワールドカップを開催されるんですよね?

小林:そうです。まだ日本だとフットゴルフがまだまだ浸透されていないんですが、実は世界では熱くて。モロッコでの前大会はフランス政府が全面的にバックアップしていて…!アルゼンチンでは既に国策としてフットゴルフに力を入れ始めています。

2020年夏は東京オリンピックやパラリンピックがあるので、その直後の9月末(大会としては9月25日~10月4日まで)にフットゴルフワールドカップを開催します。いまは着々と準備を進め、ゴルフ場の新しい可能性の発信として仕掛けられたらと思っています。

もっと積極的に認知を広げる活動をし、業界全体を盛り上げたい

ーーでは最後に、今後チャレンジしたいことを教えてください。

小林:引き続き「ワクワクするゴルフ場」は作っていきたいです。それこそゴルフ場の新しい姿を発信して、ゴルフにイノベーションを起こす気概です。昭和時代のゴルフのイメージを刷新し、今に求めら、未来に必要とされているゴルフ場へと変革していきます。

ただ「さまざまなゴルフ場の在り方を作りたい」となった時、ファイナンス面や経営面での懸念点や問題点は、まだまだ山積みです

信頼をしてもらうために、売上目標の達成や地域連携、メディアを使って認知していけるように頑張っていきたいです。

本当はメディアに乗るのが苦手で怖いんですよ…逃げれなくなるので。

ただ会社の力になれたり、認知が広がることで業界全体が明るくなるのなら、自分の名前と「世界一若いゴルフ場経営者」という肩書きを使おうと。積極的に頑張りたいなと思っています。

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取材:西村創一朗
文:ヌイ
写真:山崎貴大
デザイン:矢野拓実