AI系勉強会から起業の道へ踏み出す、「若きエンジニア慶大学院生」METRICA株式会社 CTO 幅野莞佑

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第114回目のゲストは慶應義塾大学政策メディア研究科2年生でMETRICA株式会社のCTOを務める幅野莞佑(はばのかんすけ)さんです。

中学時代に複数の卓球団体で練習し、自分の評価は所属する団体で異なることを体感した幅野さん。高校時代の文化祭では動画制作を通じ、同じプロダクトでも異なる評価を受けることに喜びを見つけました。

大学院時代に研究室で出会った仲間と起業に至った幅野さん。現在の活躍の背景には、多様な評価軸を柔軟に吸収する力と専門性を突き詰める姿勢がありました。

大学院生とスタートアップCTOの二足の草鞋

ー自己紹介をお願いします。

幅野莞佑と申します。現在、24歳で、慶應義塾大学の大学院修士2年生です。勉学に励むかたわら、METRICA株式会社でCTOをしています。
METRICA株式会社は、日本の医療問題に取り組む現役慶大生が起業したスタートアップです。腹膜透析管理デバイスとAI見守りカメラデバイスを展開しています。コニカミノルタ株式会社とCREEK & RIVER Co., Ltd.と提携実績があり、2019年に総額8,000万円の資金調達を完了しました。僕は、エンジニアの立場で、開発と在宅サービスのヒアリングを行っています。今年度は大学院を休学していますが、画像認識系AIの高速化や軽量化の研究を主に進めています。

ー大学院生でありながら、CTOとして既に社会人経験も積まれていらっしゃるんですね。

経営者やCTOになりたいと思っていたわけではありませんでした。自分達で会社作りたいところからはじまり、業務委託で開発をして利益を出す予定でした。エンジニアリングの知見があって、たまたまCTOになったので正直びっくりしていたんです。

肩書きをもらった瞬間は経営者の自覚は全くなかったですね。METRICA株式会社は、資金調達をして去年からスタートアップとして新規事業を開始しました。1人のエンジニアとして、CTOであることを強く意識し始めましたね。

環境で相対的な評価は変わることを痛感した中学時代

ー様々なことにチャレンジされていらっしゃる印象を受けますが、幼い頃からそうだったのでしょうか?

僕の経験は中3の頃ぐらいの挫折です。「1つの物事をやる」という精神が強く、幼少期はスポーツ選手やテレビスポーツ番組で競い合いトップに立つ人に憧れていたんです。中学では卓球に熱中しました。僕の通う中学の卓球部は強豪校ではなかったため、強くなるために県大会に出場する強豪チームの休日練習にわざわざ参加していました。

自分の中学の卓球部では、うまいと評されるレベルでした。しかし、強豪チームの中では当然のようにビリ。いくら高い評価を得ていても、その評価は相対的なものであり、環境が変われば評価自体も変わってしまうことに気づきました。スポーツを通して、「上には上がいる」と知ったんです。中学生のときから、自ら違う環境へ身を置くことはいい経験だったと思いますが、挫折を覚えて辛かった記憶もあります。

幅広い分野でいろんなことをやりたい高校時代

ー中学では卓球に注力。高校生ではどんな活動をされていたのでしょうか。

学校の文化祭で動画を作ったことが印象に残っています。文化祭では、各クラスが出店を行いますよね。それを撮影し、CMのような動画を作成したんです。その頃は、パソコンはなんとなく触ったことがある程度のレベル。それでも、動画編集ソフトを購入して、なんとか頑張りました。

東進ハイスクールと半沢直樹のパロディ動画が完成し、披露したときには、周囲から大きな反響をもらったんです。それが、思い出として今も残っています。

それまでは、スポーツの世界で競い合っていたので、ルールも点数の基準も明確です。それが、動画作成というクリエイティブな分野におかれると、観た人ひとりひとりの視点で評価が全く異なる。そのことに衝撃を受けました。パソコンを使って価値を生み出すということの可能性も、このときに気づきました。

起業メンバーとの出会い

ー大学は慶應SFCに進学されたんですね。入学してよかったなと思う点はありますか。

そこに集まっている学生が魅力的なので、「入学してよかったな」と感じました。どの学生もやりたいことを掲げていて、それが多様なんです。他の大学にはないエネルギーだと思います。

授業で学ぶことよりも、友達から学ぶことが多かったですね。大学の勉強以外の分野・領域での個人的な活動や、友人の視点で、学問の文脈の延長線を知るのが面白い。イベントや特別な出来事があったわけではなく、日常の中で自然と起きる学生間での交流に刺激をもらっていました。

METRICA株式会社の起業メンバーとも研究室で出会いました。大学からプログラミングを始めて、情報系の研究室に所属しました。AI系の勉強会に代表の西村宇貴が参加してきたことが出会いでした。彼は慶應の医学部生で、その後、一緒になって医学部でAIを勉強する学生のための勉強会を計画したことが、起業をするまでに至る始まりだったかなと思います。

ーそれまでに医学部の生徒との交流は頻繁にあったのでしょうか?

ありませんでしたね。医学部で医療の勉強とも全力で向き合いながら、僕らと同じくデジタル領域にも挑戦する姿に衝撃を覚えました。それまで、医療の世界と深い関わりはなかったのですが、西村との出会いで、医療現場の実情を知ることになります。

驚いたのは、病院が抱える経営の現実です。実は、日本の病院の約4割は赤字経営になっているんです。ご存知だったでしょうか。その4割の赤字を、病院は国の医療費で補います。黒字化を目指して運営する病院は少ないんです。お医者さんや看護師さんは現場の対応に手一杯で、黒字化や収益化を考える環境ではありません

ユーザーの文脈を一番に考えるサービスを開発する

ー西村さんとの協業ということもあり、医療に寄りそったサービス開発をすることになったんですね。

医療現場に向けたサービス開発のために、最適な機能を、患者さんや医療従事者の方にヒアリングしました。すると、今のシステムの動作に慣れているので、変えられすぎても困ると言われました。問題解決のために自分が最もいいと思ったプロダクトを提案していたのに、現場の回答は「現状維持」だったんです。

サービスは、最終的に現場で使用する方が「使いたい!」と思ってくれなければ意味がありません。僕にとっての最適解が、使う人にとっての最適解ではありませんでした。現状ある課題に対して、どのような問いを立てるべきか、という原点に戻った感覚を強く覚えたんです。

ー新しい視点を持つことができた経験となったんですね。

ユーザーに満足してもらえるプロダクト作りはすごく難しいと感じています。今まではユーザーの課題を見つけ、解決方法を考え、プロダクトを作ることだけを考えていました。しかし、大事なのは「使う人がどう使うか」そこまで考えないといけません。僕にとって視野が広がる経験となりましたね。使う人に寄りそったプロダクト作りは奥深いです。

ー一歩成長し、ユーザーのためのプロダクト作りという視点が加わりましたが、そのために意識しているポイントはありますか。

僕自身の頭の中だけで考えて、サービスを生み出すことが一番よくないと痛感しました。そのため、エンジニアサイド、いわゆる開発側がいかに現場に近づくかが大切です。どういうフローで現場は動いていて、そのフローをなるべく変えないようにサービスをプラスする。その上でどんなプロダクト、それに付随する機能を作ればいいのかを検討し、作ることが一番重要だと思います。

METRICA株式会社では在宅透析のサービスを提供しています。本来、透析はクリニックに週3回通い、4時間ほどの時間をかけて行っているんです。しかし、コロナウイルスの感染によって一番重症化しやすいのは、透析治療を受けるている人、腎臓が弱い人と言われているため、通院自体が患者さんにとってリスクとなっています。在宅透析で、問題を回避できる環境を提供できれば嬉しいです。

METRICA株式会社CTO幅野が抱く、今後の展望とは

ー幅野さんが影響を受けた方はいらっしゃいますか。

フリーランスエンジニアの方から、特に強い影響を受けました。その方は、飲食業界からフリーのエンジニアに転職されました。働き方や生き方から、幅広く挑戦することで経験が広がり、お金を稼いで生活できることを知りました。高校から大学にかけての時期は、大卒で就職し、給料をもらいながら家庭を築くことが正解だと考えていました。けれど、その人と出会ったことから、「もっと自由に生きていい」と思えたんです。

ー挑戦を大事にする一方で、選んでいくことも大事ですよね。取捨選択の方針はありますか。

今は、自分が成長できる道を選ぶように意識しています。事業を成功させ、お金を稼ぐことよりも、いいプロダクトを世に生み出す、それができる人になることのほうが心が惹かれるんです。自分のスキルが向上するであろう挑戦には、特にモチベーションが上がります。

ー成長できる選択を重ねた先の、幅野さんの展望をお聞かせください。

会社も僕もまだ成長期、これからだと思います。数年で、僕自身も会社自身ももっと伸ばそうと考えています。まずMETRICA株式会社をグロースさせたいですね。僕個人としては、いろんな業界でプロダクトを作りたいという想いがあります。これからも変わらずに、プロダクトやサービスを作る立場でいたいです!

ーありがとうございました!

取材者:山崎貴大(Twitter
執筆者:津島菜摘(note/Twitter
編集者:野里和花(ブログ/Twitter
デザイナー:五十嵐有沙(Twitter

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