様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第546回目となる今回は、採用コンサルタント・朴常綜(ぱくさんじょん)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
父親の会社の倒産や東日本大震災での被災、24歳高卒での新卒就活と波乱万丈な人生を送ってきた朴さん。教育や進路におけるオリジナルな考え方や、朴さんならではの「自分の価値提供の形」について語っていただきました。
父の会社倒産で感じた「勉強の先の幸せ」への疑問
ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。
フリーランスとして採用コンサルタントを行っております、朴常綜と申します。
「他社(他者)との違いを引き出し、より良く社会へ伝える架け橋となる」と「自分を取り巻く方々の自己実現のお手伝い」を大切にしつつ、仕事をしています。
新卒時代からボランティアで中学校や高校に行き、キャリア教育関係の授業のお手伝いを継続中です。その他、現在は大学の通信課程に在籍しています。
ーそんな朴さんはどんな学生時代を過ごされましたか?
父親が自営業を営んでいたのですが、僕が中学3年生の時に経営が傾いて倒産。経済的に家庭が困窮したことを受け、自分の人生について考え始めました。
高校は進学校で偏差値の高い大学に進学することを重要視していました。しかし、学校から家に帰れば大変な環境が待っている日々で。
勉強や大学進学を重要視する学校と、経済的になかなか大変な状況にある家庭状況との狭間の中で「勉強を頑張ったら本当に幸せになれるのか?」といつも疑問・違和感を感じていた高校時代でした。
相談できる人もおらず、自分にとっての幸せを1人で考える毎日の中で、自然と「自分のように人生に悩んでいるような人の力になりたい」と思うようになり「教育」に興味を持っていきました。そんな中、東日本大震災で被災し家が半壊。自主避難の形で東京に引っ越しました。
学習塾立ち上げを形にできず「24歳高卒」で就職活動。人生の選択肢を与える側へ
ー大学生活や東京での挑戦についてお聞かせください。
東京では被災者免除制度を利用して大学に通っていました。在学中には予備校師のアシスタントや家庭教師など、教育に関わるさまざまなアルバイトも経験しました。
しかし大学3年の時に制度が廃止になり、大学を中退。中退後は友人と共に学習塾の設立を志しましたが、マネタイズができずに全く形になりませんでした。
ー自分で学習塾を設立しようとした理由は何ですか?
教育に関わりたかっただけではなく、起業も志していたからです。父親の倒産の経験を通して、机上の勉強だけではなく「自分で物事を考える力・気持ちを言葉にして伝える力」を与えたいと思いました。この想いは、今でも変わっていません。
ー起業失敗後の就活・就職について教えてください。
僕は2年浪人したこともあり「24歳高卒」として就職活動を始めました。就職活動のやり方が全くわからず、更には大学を中退した自分は新卒と中途ではどちらの採用枠に入るのかもわからず、最初は手探りで就職活動を始めた記憶があります。
エージェントや友人知人に色々と就活について相談を行いながら、就活を始めた頃にちょうど通信制大学にも入学していたので、その身分を活かして新卒で就職できることがわかり、結果としては「18卒・25歳の新卒」として人材会社に入社しました。
人材会社では、求人広告を通した「人生の選択肢を世の中に届ける」という思いの元、ファーストキャリアを積む日々。人材不足に悩んでいる法人を見つけ、「求人広告」という形で学生が見る媒体に掲載することで、一人でも多くの学生に具体的な人生の選択肢(求人情報)を届けたいと思いながら仕事をしていました。
同時に、媒体を使う学生の中には、僕のような経歴に自信がない方もいるかもしれません。それでも、『君が欲しい』と言ってくれる会社は必ずあるはずだ、そんな企業と学生とのより良いマッチングを生み出すきっかけを作りたいと思っていました。
過去からの繋がりが導いてくれた「独立への道」。自分という価値提供の先にあった喜びとは
ー人材会社からの転職について教えてください。
人材会社で2年間勤務後、コスト削減を行う当時は設立6年目のコンサルティング会社へ転職しました。「自分のような家庭を出さない」をセルフミッションに置き、介護系法人を中心としたコスト削減のコンサルティング業務を行いました。
ーコスト削減の業務に転向した理由を教えてください。
転職前に自分の人生を振り返った際に、今回のインタビューの冒頭でもお話をさせていただいた「父親の会社の倒産」が自分の人生にとって大きな分岐点であったと改めて思いました。僕は父の会社が倒産することを体験しています。
会社の経営が傾いてきた時には、まず人件費を削るというパターンが多いですが、元々人材会社で勤めており、人材の重要性を知っているからこそ、その前に「固定費を削る」という方法で、経営を維持・回復できると思いました。
そうして、会社の存続に関わりたい。特に転職直後は新型コロナウイルスの流行が始まり経営が苦しくなった企業もたくさん現れ始めていました。そのような企業に対して、コスト削減を提案していました。
ー現在、フリーランスで採用コンサルティングを行う朴さん。独立に至るまでにはどのような心境の変化がありましたか?
コスト削減の仕事を行う最中に、社会人になってから出会ってきた採用担当者の方に「人材採用支援をやってほしい」と頼まれておりました。最初は1社でしたがだんだんと増えていき、複数社から「お金を出すから来てほしい」と言っていただけるようになりました。
また正直に申し上げて、意気揚々とコスト削減を行うベンチャー企業へ転職したものの、転職後はあまりバリューを発揮できていない状況でもあり……。そのような中で、より自分のバリューを発揮できる「採用支援」の領域で思いきり価値提供したいと思いました。
その気持ちが強まり、採用コンサルティング業務の独立に踏み切ったのです。
相談に乗り、アドバイスを行い、実際に採用が上手くいく。この一連の流れで「お客さんが喜んでる姿」が本当に嬉しいと感じています。今の僕の原動力も、この「喜び」の感情です。
ー朴さんが、今の仕事にやり甲斐を感じる瞬間を教えてください。
採用活動をさせていただいているクライアントが実際に人が採用できると「朴さん、採用できたよ!」とものすごく嬉しそうに報告してくれるんです。
自信が満ち溢れているクライアントの姿を見ると「これこそが、自分が提供する価値だ」と感じます。この笑顔が見たいんだ、と。
僕の仕事は「採用の成功」であると同時に、クライアントの業界や法人、施設の「良い所」を一緒に探していく作業でもあります。
そのため、入職希望者が集まることは、クライアント自身の施設や、ご自身が所属する業界に対する「存在の肯定」にも繋がると考えています。
共に行う採用活動を通して、採用担当の方に自信と自身が所属する業界、会社への可能性を感じてほしい。自信を与えたい、存在を肯定したい。それが僕のモチベーションです。
道を開く鍵は「誠心誠意」。自分ならではのミッションを見つけることが大切
ー現在の朴さんの、採用コンサルティング以外の活動を教えてください。
最近、人事の方々同士の繋がりを作りたいと思い「しくじり人事」というオープンチャットのコミュニティを作りました。業界や企業の垣根を超えた「HRの失敗談」をシェアし合い、人事の方々の輪を広げる活動をしています。
また現在の業務と並行して、中学校・高校で行われるキャリア教育関係のボランティア活動にも参加しています。学生の方々と一緒にワークショップで意見交換をしたり、自身の社会人としての「働く」についての経験や考えを話したりしています。
ー朴さんがこれから挑戦したいことを教えてください。
過去に失敗した「塾の設立」をいつかリベンジしたいです。「考える力」を与えられるような、一般的な受験勉強以外も教えられる塾を作りたいです。
また、実はこれも新卒時代からボランティアで行っていたことがあるのですが、音大生の進路への支援も行いたいと思っています。他には、僕が通信制大学に通いながら新卒採用をされた経歴を活かし、同じ環境の大学生にキャリア支援、就職活動の支援もしたいです。
また現在は個人で人事の採用支援を行っていますが、将来的には法人化し、支援先の幅を増やしていきたいと考えています。採用支援のチームを組み、一体感を持ってクライアントへのサポートを行いたいです。
ー今、働きながら悩んでいる人へのメッセージをお願いします。
会社で働いている中で「はみ出した行為」をしている自覚がある方は、会社の中では無駄な行為だと扱われても、喜んでくれるクライアントがいればそれが「独立のヒント」かもしれません。
ただし、会社に与えられたミッションを100%こなした上であることがやはり大前提になってくると思います。100%こなした上で、会社の業務からはみ出した「あと20%の努力や提案」をすると、「それ、いいね」と自分という人間が指名されるようになっていくと考えています。
まずは会社に与えられた仕事に真面目に取りくみながら、自分だからこそできる「20%」は何かを振り返り、棚卸しをしてみると良いかもしれません。
ー最後に、U-29世代へメッセージをお願いします!
お互いに、常に学び続ける姿勢を忘れずに過ごして参りましょう。
またクライアントに対しては「誠心誠意」の心を忘れずに過ごして参りましょう。
ーありがとうございました!朴さんの今後のご活躍を応援しております!
今回のゲスト・朴さんのTwitterアカウントはこちら。
取材:えるも(Twitter)
執筆:METLOZAPP(Twitter/BLOG)
デザイン:高橋りえ(Twitter)