オートクチュールとの出会いが今の原動力
フランスの生活に慣れてきたタイミングで、服の製図(図面を書く仕事)の勉強をしようと、専門学校に入りました。
学校に入ってわかったことですが、デザイナーが作成した画をもとに型紙を作るパタンナーという仕事は、実はフランスの方よりも日本の方が世界的にも評判がいいんです。
フランスの大きな会社には、日本人が多くいます。先に日本で勉強してから、フランスにくるという流れが主流みたいです。
フランスで勉強するよりも、実は日本で専門的に勉強した方がいいとわかったんです。せっかくパリへ来たのに、期待はずれとなってしまいました。
ーせっかくパリへ行ったのに思うように行かず……。その後はどうしようと考えましたか?
ちょうど日本に一時帰国していたタイミングで、地元のコンビニにアイヌ刺繡の教室の張り紙があったんです。親からの「おもしろいかもよ。やってみたら?」の一言で、参加しました。
当初は刺繡に興味があったわけではありませんが、気になったので行ってみました。
ーアイヌ刺繡とは?
アイヌ刺繍の特徴は紋様です。魔除けの意味が込められている、棘(トゲ)であるアイウシや、渦巻きのモレウを組み合わせて作られています。
刺繡教室には、年配の方々が多く、皆さんにとてもかわいがってもらえましたね。ちょうどその教室で、北海道のアイヌ民族出身の先生と樺太出身の先生が、アイヌ刺繡というものを教えてくれました。
当時は刺繡の基本すら知らなかったので「なんだこれすごい!」と感激し、とても楽しかったです。興味を持ったあとは1年ほど趣味でアイヌ刺繍をやっていました。
ーその後はパリへ戻られたのですか?
その後フランスのパタンナーの専門学校を卒業したあとに、フランスでしか勉強できないことをやりたいと考えていた時、オートクチュールの刺繡学校を見つけたんです。
刺繡を勉強をしたいと思い、パリ郊外のオートクチュールの学校に足を運びました。そこは正直あまり学校らしくなく、刺繡に使うスパンコールやビーズ等の材料がたくさん引き出しに並べてありました。
最初は「本当にこれが刺繡の学校か」と驚きましたが、実際にやってみると、面白くオートクチュールの刺繍の魅力にすぐに惹きつけられて、続けたいと思うようになっていきました。
その学校では2年間学びながら、一緒に勉強したフランス人の友達が増えたりと。すごく充実したいい経験になりましたね。特に刺繡という、今まで持っていなかった新しい表現力を身につけることができて、本当によかったです。
ーオートクチュールの刺繍の勉強をしたあと、本格的に活動されたのですか?
勉強をしたあと、フランスでそのまま活動したいなという気持ちもありましたが、いろいろ考えて、日本へ帰国しました。
日本で一から活動を始めたのは、とても大変だったのですが、とにかく「やりたいことは、なんでもやってみよう!」と思い、試行錯誤しました。
そして家族の友人のお店や、たまたま食事をしたお店の人が声をかけてくれて、展示会を開かせてくれました。そのあとはきちんと場所を借りて展示会を開催するようになりました。
目指すは、みんなに見てもらうギャラリーを開催する
ー先ほどとは別に、実は高校卒業前に展示会を開催したと伺いました。どういったものを?
高校卒業前に、洋裁教室で製作したものを展示したいと考えていました。自分が今まで本気でやってきたことを披露したかったのが理由です。
当初は「ファッションショーをやりたい」と思っていましたが、開催するためには、お金がかかりますよね。そのため展示会を開くことにしました。
初めての展示会は、小規模で学校の友人に手伝ってもらい、場所代は自分でお金を貯めて借りました。
場所は、札幌のアメリカ領事館の向かいにある展示会を借りて開催。初めてのため大きな宣伝もせずに、友人や知り合いに来てもらいました。
ー当時頑張って展示会を開催した感想は?
当時の自分ができる限りの力を尽くしたと思います。初めてのことだったので、わからないなりにたくさん調べて開催しました。
展示会では、自分色の雰囲気を生み出すためにたくさん作品を作りました。我ながら頑張ったと思います。
ーここ数年、コロナ禍となり展示会はできたのでしょうか?
コロナ禍となってしまった後は、イベントがキャンセルされたり個展がまったく開催できないような状況になってしまい、とても辛く苦しかったです。
最近ようやくコロナも落ち着いてきて、少しずついろいろなことが行動できるようになったと思います。
ー去年、大きなメディアから取材をうけたと聞きました。
そうなんです。地元の北海道新聞に特集をしてもらい、さらにNHKからも取材を受けました。こうやって地道に活動を続けていてよかったです。続けているからこそ、「テレビみました」「記事読みました」という声を多く頂きました。
また、AJCクリエイターズコンテストで内閣総理大臣賞をもらいました。これも地道に活動していったおかげだと思います。
ー小川さんの今後の夢や目指すところは?
今の展示会は仲のよい友人などが来てくれますが、将来的にはより多くの方に自分の作品を観てもらいたいです。またアメリカやフランスなど日本国外で何か企画をしたいと考えています。
今までパフォーマンスアートや、他の人とコラボして作品を創ったりしました。今後は商品デザインをやってみたいなと思っています。あと、皆でいろいろ話し合って作品を創る仲間やチームがほしいですね。
ー最後にU-29をご覧のみなさんにコメントをお願いいたします!
とにかく、なんでもやってみないとわからないということです。
失敗するかもしれないないですが、迷ったら進むことだと思います。迷って考えていても、どうしようもないですから。迷ったら行動!
ーありがとうございました!小川エドワーズ乃亜さんのこれからのご活躍も応援しています!
取材:落合慶太(Instagramr)
執筆:岩本香織(Twitter)
デザイン:高橋りえ(Twitter)