幸福度が低いときに得られる学びこそ、自分にとって貴重な経験になる。モクジヤ代表、鈴木粋

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第999回目となる今回は、株式会社モクジヤ代表、鈴木粋さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

ドキュメンタリーが好きで、創業者オタクでもある鈴木さん。今後の方向性を決めることになった出来事や、事業の軸を奨学金にした経緯についても教えていただきました。

自分の目が届く範囲の人に、手を差し伸べられる人間になろう

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

京都生まれ京都育ちで、現在も京都に住んでいます。同志社大学に在籍しながら、株式会社モクジヤというチームで、奨学金制度と業界の改革に取り組んでいます。

これまでにも、奨学金の図鑑サービス『シュッドリスト』を開発・運営しながら奨学金制度への知見を深めてきました。

現在は、自社製品やサービスの実購買検証をしたい事業者と、学びや体験のために資金や機会を必要とする若者をマッチングする検証プラットフォーム『モクジヤ』を開発検証中です。

応募や取得ハードルを引き下げた新しい給付型奨学金を増やし、貸与型奨学金を普及するとともに、学生たちの学びや体験がお金に左右されない世界を創るべく活動中です。

それから、創業者オタクでもあります。いろいろな創業者の生き方や考え方が書かれた本を読んで、心震わせることを趣味にしています。よろしくお願いいたします。

ーここからは、鈴木さんの過去を振り返ってお伺いします。15歳のときに、人生の目標が見つかる出来事があったそうですね?

僕が行動をおこしていこうと思ったのは、中学3年生、15歳のときです。当時は、「ワンピース」の漫画や「アベンジャーズ」の映画がすごく好きで、ヒーローに憧れる正義感の強い子どもでした。

社会科の先生が、様々なドキュメンタリーを放映する授業をしていて、僕の年はゴミ山に住んでいる子どもたちの生活を追ったものなど、重ための社会課題を取り上げたようなドキュメンタリーが放映されていました。

個人的にNHKのドキュメンタリーが好きなので、見入っちゃうタイプだったのですが、ドキュメンタリーを見た15歳の僕は、何の力もないのに「何とかしなあかんのちゃうかな」と思ったんです。

その授業がきっかけになり、「どうやったら手を差し伸べられるような人間になれるんやろうか」と考え始めました。

ドキュメンタリーの中で、この財団はこの地域を助けているけれど、あの地域は助けられていない。そこを補わないといけないと思いました。まさにアベンジャーズがそうなんですが、補い合っていくところに影響を受けていましたね。

自分の目が届く範囲の人に、手を差し伸べられる人間になろうと思い、財団を持つことを人生の目標に設定しました。初めての転機でしたね。

ーそこから高校に進学されて、どのような学生生活を過ごされていたのでしょうか?

僕の家族は独立主義でしたが、やりたいことや習いごとはさせてくれる家庭でした。当時は、ピアノや書道、テニススクールに通わせてもらっていました。

すでにスケジュールがパンパンなのに、それに加えて高校の男子バレーボール部に入部したことで、訳のわからない忙しさになり、パンクしたなって自分でも分かるぐらいパンクしました。好奇心旺盛な成れの果てですね。

ベッドに横になるだけで涙が流れ、精神的に追い詰められている感じになってしまいました。弱い自分を知った出来事です。

メンタルが急転直下して、時間的な拘束や縛られることに抵抗感の強い僕には、しんどい高校生活の始まりでしたね。

ー精神的に追い詰められてから、どうやって立ち直っていったのか教えてください。

このままだとやばいなと思い、入部3週間目には顧問に相談し始めました。そこからバレーボール部を3ヵ月で円満に辞めて、メンタルがまた上がり始めました。

当時はなんとか精神を維持しなあかんと思って、A4の紙に棒人間を書いて1人ずつ切って筆箱の中に入れていました。今考えるとやばいんですけれど、自分の仲間だと思って登校する。トイストーリーに出てくる緑の兵隊のイメージです。

幸い不登校にもならずに、精神を自分でコントロールできていましたね。

様々なスケジュールがある中で、全てを完璧にこなせるわけもなく、中3で立てた目標に向けて行動する時間も取れない状態でした。

財団を作るためには、お金が必要だということも理解できたため、起業に興味を持つようになります。起業するためにはアイデアが必要だし、高校のうちから身につけておくべきスキルがあると思い、必要なスキルシートを作りました。

大谷翔平選手のドキュメンタリーでやっていてた、これを達成するためにはこのスキルが必要で、このスキルを得るためにはこれが必要みたいな。どんどん枠が広がっていくマンダラチャートを使って、必要なスキルを書き出して、1つずつ行動に移していました。

学びや教育を取り巻くお金事情に課題感を見つける

ーどん底だった高校入学時から、現在も通われている大学に進学されたのですよね?

そうですね。小学校のころから、大学はすごく自由な場所だよと聞いていたので、大学に行きたいなとずっと思っていたんですよね。

今後起業や活動をしていくとしたら、経済のスキルが必要なんじゃないかなと思い、同志社大学の経済学部を選びました。

時間割も自由にカスタマイズできて、みんなと一緒に6時間目まで残らないといけない縛りもない。僕が行っている大学には、クラスのくくりも縛りもないので、開放されまくっていましたね。

とにかく縛られることが嫌なので、部活やサークル、ゼミなどにも入らず、自分の思うままに活動し始めました。

僕の大学の経済学部は、自分でマネジメントができるなら、全て入らなくても問題ない環境でした。他学部の授業も取れるので、経営学部の背景論や、以後使いそうな知識をバイキング形式みたいな感じで取ってこれましたね。

ー大学で意欲的に過ごす中で、今後の方向性を決めるような事件があったそうですね?

はい。まさに現在の事業内容に直結する入り口です。

自己紹介でも軽くお話ししたのですが、創業者の生き方や考え方が書かれた本を読んで、心震わせることを趣味にしているんですね。

大学1年の頃に、1〜2年間分の大学の教科書をたくさん買わないといけないじゃないですか?その教科書代って、5〜6万ぐらいするんですよ。教科書を買うことで、僕が購入したい創業者の本が買えない。僕の中での超大事件が発生しました。

使うための教科書だったらいいと思うんですが、大学の教科書って使われないことが多くて、PDFで配られる。5万円分の教科書は、ほぼ使われずに家に格納されるんです。「学びや教育を取り巻くお金事情に課題感ってあるんやな」と痛感しました。

そこから学生に対して、「学びや教育、実際に大学生活を過ごしている中で、お金の課題はどういうものがありますか?」とヒアリングし始めました。

ー鈴木さんは、いつから創業者オタクになったのですか?

大学からです。高校生のころは、いろいろと挑戦されている方に魅力を感じていましたが、特別に創業者を意識していたわけではありませんでした。

大学に入ってから起業のことを調べ始める中で、経営している人よりも、作った人はおもしろい生き方をされている人が多いなと印象を受けました。

事業を起こそうと思った人たちの幼少期とか学生時代とか、ハチャメチャなエピソードも好きで、ドキュメンタリー好きがそこに通じているなと思います。

私生活部分から、考え方も見えてくるし、こういうところが今の企業のあり方につながっているんだなというところも見える。どちらかというとビジネス書を読むよりも、いろいろな人の私生活や趣味を聞くのが個人的には好きです。

そこから夢中になり始めて、1番の憧れは、ニトリを作られた似鳥昭雄さんですね。今では胸を張れるぐらい、創業者が好きです。