「起業は2社目」雛菊代表中村将也がTV/VOD業界のイノベーションに懸ける理由

日本に住んでいる20代というだけで価値がある。やりたいことを胸を張ってやろう

ー起業は2社目ということで、最初の事業は難しかった側面もあるのではないかと思うのですが、1社目は何をやられていましたか?

起業した1社目は、タクシーの窓をテレビにする「車窓広告事業」を展開していました。

当時はライドシェアと自動運転が世界的に伸びていて、モビリティに紐づく体験や広告サービスが伸びると考えました。実際にグローバルではシリコンバレーやニューヨーク、中国でライドシェアやタクシー車両の上にサイネージ型の広告を載せる事業が急成長していたので、日本でも需要があるのではないかと考えました。

日本では法規制の観点で、車の上にサイネージを載せることは出来ません。それでも、窓に特殊加工を施し、車内にプロジェクターを搭載して車に組み込むことで、車の窓がテレビのように活用できると考え、事業を展開しました。

しかし、ハードウェアを扱うため初期投資が高い。コロナ禍での屋外広告事業で営業もスムーズに進まない。そして屋外広告最大手のPR会社から僕らの100倍規模で同様のサービスがリリースされ、次の手が無くなります。先行されていた大手PR会社でさえもうまくいっていなかったため、中長期でビジネスモデルが成立しないことが見えてしまい、結果、事業を撤退しました。

ーそんな大変な出来事があったんですね。2社目の事業はどのように始まったのでしょうか?

1社目の撤退を決めてから、いろいろな会社の業務支援を行っていたことがきっかけです。

当時、支援していた会社のひとつにテレビ局や配信アプリのシステム開発事業を展開する「NAXA株式会社」(以下:NAXA)がありました。現在NAXAでは、自分の株を持ち、役員を務めています。

NAXAに関わろうと思った理由はいくつかあります。ひとつは、日本が持っているコンテンツには十分にポテンシャルがあると思ったからです。また配信技術やメディアテクノロジーを掛け合わせることで、今までにないメディア業界、エンタメ体験を作れるのではないかと考えました。

「ポテンシャルはあるが、まだ世の中に届けられていないものを解き放ちたい」、「テクノロジーとエンタメ、クリエイティブの力で世の中を変えたい」との思いから、今の事業に全力を注ぐことに決めました。

そこからは、業界として今後やるべきことと、僕たちができることを整理して、各局の担当者さんに地道に挨拶回りをして、取っ掛かりとなる案件をご一緒し始めたところから展開していったという経緯になります。

ーこれから目指していきたいビジョンはありますか?

本当にありがたいことに、今は大手のテレビ局さんと僕らが一緒にやりたいことにチャレンジできる環境が生まれつつあります。また、テレビ局さんは非常に事業スピードが早いので、作ったアプリがいきなり番組で使ってもらえたり、いきなり来期の広告商品として営業してもらえたりと、大変恵まれた環境にいます。

直近はデジタルプレイスメントという動画内にバーチャル広告を後付けで生成するAIを開発していて、これが実用化できると大量の広告枠を既存の映像コンテンツに埋め込むことが可能になります。

まだ誰も見たことがない動画体験を社会実装していけるよう活動していきたいと思います。

ー最後にU-29世代にメッセージをお願いします!

「やりたいことをやろう」です。

人口構造と社会的に見て、日本に住んでいる20代というだけで、僕たちはかけがえのない価値を持っていると思います。「自分たちが今20代である」ということに関しては、すごく誇りを持つべきだし、自信を持った方がいいと思うんです。

だから、誰かに言われたことや、仕事としてやるべきことだけではなく、「こういうことをやりたい」や「将来的にこういうことをやるんだ」と、自分で意志を持って活動することが大切だと考えています。

「これ」といったやりたいことが決まっていなくても、「なんとなく興味がある」くらいでもいいので、何か言葉にしていくと、自分と周りの熱量が増えます。発信するだけでも価値があると思っています。

逆に言えば、何かやりたいことを言うだけで、いろんな人が応援してくれたり、ついてきてくれたりします!

U-29世代らしく、無邪気にやりたいことをやっていきましょう!

その過程で、この記事を読んでいただいたU-29世代の方とご一緒できる機会があれば、心から嬉しく思います。

ーありがとうございました!中村さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:八巻美穂(Twitter / note
執筆:八巻美穂(Twitter / note
デザイン:安田遥(Twitter