何度挫けても自分を信じる。スタートアップ伝道師・稲荷田和也が大切にしていること

起業を決意、2度目の挫折。

ー1社目で活躍しつつも、起業に挑戦したのはどのような経緯があるのでしょうか。

もっと新しい挑戦をしたい思いが募っていきました。アーリーフェーズのスタートアップで働くのも魅力的ですが、起業して社長になる選択肢も刺激的だと思うようになったんです。

Web3やNFTなどの新しいテクノロジー領域であれば誰がゲームチェンジャーになるかもわからないですし、どうなるかもわからないところで勝負することに魅力を感じ、独立に進みました。

ー起業するためにどのような活動をしていたのでしょうか。

起業を前提に会社を辞めましたが、全く未経験の業界で起業するのはリスクが高く、家族もいたのでまずは目先のキャッシュが必要でした。

勉強の意味も含めて、2社のスタートアップに業務委託として入りました。1社は今も続けているNFTに関連があるスタートアップで、もう1社はブロックチェーンゲーム会社です。

並行して起業案をブラッシュアップしてVCに壁打ちしたり、地域に根ざした起業をしたいと思っていたので、移住先を探したりしていました。未経験の業界の会社で働くのでインプットしつつ、起業や移住の準備もしていたので、再びオーバーワークになっていました。

ー再びオーバーワークになってしまったとのことですが、このときはどのような状況だったのでしょうか。

起業しようと意気込んだのに現実とのギャップを感じていましたね。起業するどころか目先の仕事で疲弊してしまった結果、病院で「双極性障害」と診断されました。一回休んだ方がいいとアドバイスをもらったので約2ヶ月間、仕事をせずに治療に専念しました。

元々ストイックな人間だったので趣味がなく、治療に専念するといっても何もしないことが治療とされているので、もどかしい2ヶ月間でした。

自分はスタートアップで生きていきたいと思っていましたが、「自分はもうあの業界に戻れないんだろうな」と絶望していました。人並みに働くことさえもできないのではないかと本気で思っていたんです。

ー治療に専念した後、どのようにして現在の働き方ができるようになったのでしょうか。

現実を受け止めたことで症状は回復していきました。今まで理想と現実のギャップに苦しんでいましたが、まずは今の自分を認めて現実を受け止めるようにしましたね。自分を認めた上で頑張りすぎないようにしようと意識しました。

治療に専念した後、復職したタイミングで代表と話したときに、「今のフェーズでは上流の認知獲得をして露出をすることが大事なのでは?」となり、広報にアサインされました。

広報は未経験でしたが元々Twitterをやってましたし、「いいものをとにかく広めたい」「好きなものを広めたい」タイプなので、自分の性格にマッチしていたんです。

営業しかやってこなかった中で広報のキャリアが増え、経営に近いポジションで働けるようになり、代表の代わりにイベントに登壇する機会も多いので自分の強みを生かしていきいきと働けるようになりました。

得意領域なので負荷が少なく、数年前には想像できなかった働き方ができているので充実度が高いです。

強みを生かし、自分を信じてスタートアップの支援をしていく

ー稲荷田さんは広報が自分に合っていると気づきましたが、自分に合う仕事の見つけ方のポイントは何かありますでしょうか。

種蒔きをし続けることですね。元々広報には興味があって、いつかやりたいなと思っていました。社会人になるタイミングからTwitterをしていて、現場の人間にも関わらず、能動的に広報活動に取り組んでいて、その勢いは経営層や広報担当に勝るほどだったと自負しています。

共感したプロジェクトやものには打ち込む性格だとわかっていたので、共感する事業や会社、社長を見つければコミットできると思いました。内省を進め、チャンスが訪れたときにつかみにいける状態を作りあげることが大事だと思います。

ー稲荷田さんが大事にしている価値観を伺えますでしょうか。

誰よりも自分を信じることは大事だと思います。自分のことを信頼できなくなってしまう時期もありましたが、信頼してくれる人たちの顔を思い浮かべて這い上がってきました。

もしかしたらまた沈むタイミングが来るかもしれないと怯えながら毎日過ごしていますが、沈んだ経験があるからこそ、自分だったら乗り越えられるだろうとも思えています。

自分を信じられないときは、自分を信じてくれる人を探すのも大事です。自分の場合は尊敬できる人や師匠を見つけていきました。今コーチングの事業をやっているのも、自分も同じような立場になりたいと思っているからです。

ー将来の展望についてどのように考えていますか。

スタートアップ伝道師と名乗っている通り、スタートアップ界隈の人や事業、組織、個人を多角的な面から支援したいです。これまで培ってきた営業や事業開発、広報PR、組織開発、個人の支援などあらゆる支援をしたいと思っています。

事業開発に関しては、まだ経験が薄い部分があるので、その部分を強化するために修行のような期間を設ける可能性もあります。

人ができないと簡単に言えることも、価値を信じて突き進んで本気になれる人たちはかっこいいと思います。本気になれる人が人の心も動かし、大成していくんですよね。誰よりも会社や個人の可能性を信じて背中を押し、具体的な業務も支援できる人間でありたいと思っています。

ー最後に、10代や20代の読者にアドバイスをお願いします。

心の声を大事にし続けるのは大事だと思います。大人になればなるほど自分の声は見失いがちです。目の前のことだけに一生懸命になることに慣れてしまうと、ふと立ち止まったときに何もない状況に陥ってしまいます。

自分が今働けているのも自分の心の声に従い、興味関心に素直になってきたからです。心の声に従い意思決定したからこそ、しんどいことがあっても頑張り続けられています。

波があってもまたもう1回這い上がれるかが大事だと思うので這い上がってほしいですし、もし助けが必要であればいつでも声をかけてほしいです。

ーありがとうございました!稲荷田さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:戸田光(Twitter
執筆:ひろむ(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter