「これまでの経験と共に前に進み続ける」と語る、立ち飲み屋店主・森貴充が選んできたキャリアとは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第890回目となる今回は、立ち飲み屋『串カツ玩具-GANG-』店主の森 貴充(もり・たかみつ)さんです。

バンドマン、飲食店社員、フリーランスと様々な職種を経験されてきた森さんに、これまでのキャリア選択についてお伺いしました。

バンドマン出身のパラレルワーカー

ーまずは簡単な自己紹介をお願いいたします。

元バンドマンで、現在はフリーランスとして映像制作のお仕事やキャリアスクールの講師のお仕事をしています、森貴充です。現在は夢だった自分の居酒屋、立ち飲み屋『串カツ玩具-GANG-』のオープンに向けて準備中です。

ー複数のお仕事をされているようですが、具体的なお仕事の内容やどういった働き方をされているか教えていただけますか。

映像制作のお仕事はYouTube動画の編集業務などからスタートし、現在は動画制作の監修や企業などのプロモーション動画の制作などを行っています。今までは個人で行っていましたが、今年からはチームで行うことでお仕事の幅を少しずつ広げているところです。

居酒屋に関しては、現在高円寺でお店オープンに向けて動いています。ご縁あって、自分自身が持つ飲食に対する課題意識に共感してくれる仲間を見つけることができたので、スタッフが働きやすいお店を2023年4月末にスタートさせます。

ーパラレルワーカーとして働く中での楽しさや難しさはありますか。

好きで楽しいと思える仕事が全てできるのはパラレルワークのいいところだと思います。飽きやすいタイプでもあるので、複数の仕事を並行してできること、何かがメインの仕事で残りがサブになる副業ではなく全てがメインである複業は自分にあっているかな、と。

一方、複業であるからこそ、スケジュールの調整が難しいことも多いです。片方の仕事で突発的な打ち合わせ依頼が入った際に、もう片方の仕事を理由に調整できないなど、急な対応が難しいことに歯痒さを感じることもあります。

それでも、それぞれの仕事が良い相互作用を生むと思っているので、そのことを忘れずに目の前のことに取り組むようにしています。

バンドと過ごした6年間

ー現在に至るまでを学生生活から振り返ってお伺いできればと思います。どんな学生生活を送っていましたか。

ルールを重んじるタイプの少年でした。こうあるべきに疑問を持たずに、真面目に学校に行き、勉強もしていました。

転機となったのはギターとの出会いです。中学3年でギターにハマり、音楽の高校に行きたいと思ったものの、両親の意向で普通の進学校に進むことになりました。高校進学後、このままでは人生が面白くなってしまうと思い、突如勉強することを一切やめてみました(笑)。

成績が悪くなったら、大学進学せずに音楽の道に進むことができると思ったのです。実際、成績が最下位まで落ちたことで周囲に将来を期待されなくなり、音楽の専門学校に進学することができました。

ー高校生にしてすごいパワープレーですね(笑)。音楽の道に進んでみていかがでしたか。

いざ進学してみると、音楽をやりたい人が集まっているだけあって、自分の実力のなさに絶望しました。しかしそれがきっかけで急に曲が書けるようになったのです。

徐々に技術も上がっていった頃、ありがたいことに先輩方からバンドを一緒に組もうと声をかけてもらい、バンド活動を始めました。そして18歳の時に事務所所属が決まり、全国デビューしました。

ーとても順風満帆だったように聞こえますが……。

デビューできたことはとても幸運なことだったと思いますが、曲を作り続けないといけないプレッシャーなどもあり精神的にはしんどかったです。

そして6年間バンド生活に捧げてきた結果、事務所との金銭トラブルをきっかけにバンドが解散した時はこれからの人生に絶望しました。

毎日がイレギュラーだった居酒屋勤務

ーそこからまた前を進もうと思えたきっかけは何だったのでしょうか。

居酒屋の文化です。当時住んでいた阿佐ヶ谷には飲み屋文化があり、一人で飲み屋に行ったところ、たまたま横に座ったお客さんに声をかけられ、2軒目も一緒に行くことに。そして2軒目でまた新たな人と知り合い、気づいたら1日でたくさんの人と出会いました。その日をきっかけに、街中で挨拶する関係性の人が増え、知り合った方のお店を手伝うことにもなりました。

居酒屋で、ご飯はもちろんですが、周りのお客さんから元気をもらえ、あと少し頑張ってみようと思えたのです。

ーバンド生活には終止符を打ち、次は何に挑戦されることに決めたのですか。

当時バイトしていた居酒屋チェーンにそのまま社員として入社を決めました。何事もすぐに飽きて続けられなかった自分がその居酒屋でのバイトは5年続けられていたので、社員として働いてみることにしたのです。

接客業は楽しく、お客様とのコミュニケーションで試行錯誤するうちに徐々にファンがつくようになり、すぐに新店舗の立ち上げを任せてもらえることに。お客様への魅せ方や堂々とした立ち振る舞いはバンドマン経験が活かされたと思います。

自分自身もバイト経験が長かったことから、バイトメンバーの気持ちもよく分かったので、関係性をうまく築くことができ、気づいたらオープン3ヶ月で業績トップを達成しました。

ー何事にも飽きやすい森さんが接客業を続けてこれた理由は何だったのでしょうか。

居酒屋には様々なポジションがあり、極めるポイントがあったことと、毎日イレギュラーなことがあったことが大きかったと思います。来られるお客様は日々異なり、想定外のことがあっても、その日を乗り越えられた時の達成感も続けられた理由かもしれません。