様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第896回目となる今回は、一般社団法人ここてらすの代表理事を務める入江 航(いりえ・わたる)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
社会との接点がなかったことに不安を持っていた入江さん。「とりあえず」の気持ちで大学へ進学し、さまざまな人の生き方を見てみようと多くのイベントに参加します。時間の使い方への考えや、今後の展望についてお伺いしました。
大きな目的はないが、とりあえず大学へ進学
ーかんたんに自己紹介をお願いいたします
佐賀県基山町(きやまちょう)で「一般社団法人ここてらす」という団体を運営している入江航です。「ここてらす」は、子どもの居場所・子ども食堂をメインに運営しています。2019年12月からはじまり、2021年1月に法人化しました。
ー「ここてらす」では具体的には何をされていますか?
「ここてらす」では午後5時半から8時までを子どもの居場所として提供し、それ以外の時間はお茶会利用や間借り店舗スペースなど誰もが使える空間を提供しています。
子どもの居場所では授業のようなプログラムは作らずに、子どもたちが好きなように過ごせるよう運営しています。「ここてらす」には本やおもちゃを用意しているので自由に過ごしてもらい、6時半からみんなでご飯を食べます。
ー入江さんは子どもの頃はどんな子でしたか?
周りの友人からは「小学校の頃が一番面白かったよ」といわれます。僕の中では変わっていないつもりですが、ギャグセンスが小学校から上がっていないので相対的に面白さが下がったのかなと思います(笑)。
福岡で生まれたのですが、両親の仕事の都合で生後半年で香港に行きました。その後韓国に行き、幼稚園の年中あたりで日本へ戻ってきました。
幼稚園の頃はバイリンガルで、英語と日本語を使い分けていたようです。友人に英語で話しかけると「なんやそれ」と異物扱いをされました。幼いながらに「英語は使わないほうがいいのだな」と思い喋らなくなったため、現在では日本語しか話せません。
ー小学校から高校まで野球をされていたとお伺いしました
はい、12年間野球に明け暮れていました。父と2つ上の兄が野球をしていたので、小学校1年生で「僕もやりたい」といってはじめました。
セカンドやセンターポジションで野球をしていましたが「野球部です」というと信じてもらえないほど体が細いです。
ー最初の転機は大学入学の時にあったとお伺いしました
同級生の多くが就職を選択していましたが、私は社会に馴染める気がしなかったです。早起きも苦手で、上司との人間関係も大変そうでついていける自信がありませんでした。そのため就職ではなく、大学に逃げるように進学しました。
大学を選んだもうひとつの理由は、12年間野球漬けで生きてきて社会との接点が少なかったため、社会の仕組みを知らないまま就職することが怖かったからです。はっきりとした目的を持たずに進学しました。
ー大学に進学してどのように過ごされていましたか
大学外の興味があるイベントに積極的に参加していました。時間に縛られずに、自分の好きなように動いてみようと考え、大学のサークルには入らなかったです。友人はできましたが、大学内で大きな思い出はないですね。
ーイベントへの参加頻度はどのくらいでしたか?
月に1・2回程度で頻度は決めていませんでした。ネットで見つけたイベントに行くよりも、友人やイベントで知り合った方に呼ばれて参加することが多かったです。時間に余裕を持っていたので、場所に関わらず参加しました。
遠いところでは、埼玉県へ行ったこともあります。廃校を使って大学生だけで文化祭を運営するイベントでした。
イベントでの出会いから「ここてらす」が動き出す
ー入江さんがイベントに参加しようと思ったきっかけやモチベーションをお伺いしたいです。
「社会でどういう生き方があるのか」を実際に“人”を見て知りたかったからです。
現在の社会では個人で働く方も多いですよね。会社や団体で働いている方と個人で働いている方を見ながら、自分にはどういう生き方があっているのかを探していました。
ー自分にあっている生き方は見つかりましたか?
自分の軸を持って楽しそうに生きている方に出会うことができ、自分もそう生きたいと思いました。
ガツガツした資本主義のような、営業のような雰囲気がなく、世間の目を気にせずに自分が試したいと思うことを試している方です。とても居心地がよかったので、この人の考え方を吸収してみたいと思い、一緒に動くようになりました。
ーその方と出会って「ここてらす」の活動に繋がったということですか?
はい、そうです。自分の軸を持っていた方はシングルファザーで、息子がいました。息子が家に帰ってきて「1人で寂しい」と言っていることや、もともと子育て支援に興味があったことから「ここてらす」の活動がはじまりました。
放課後に子どもがみんなでご飯を食べたり、好きなことをしたりする居場所・空間を作りたい。子育て支援の想いに共感し、家が近かったこともあり空いている日は常に手伝っていました。
私は「子ども」というキーワードに最初から興味があったわけではありません。活動を手伝っているうちに自然に興味が湧いてきました。
ー「ここてらす」の立ち上げの話を詳しくお伺いしてもよろしいですか?
「ここてらす」という名前は「今ここ」という言葉から「ここ(場所)」「個々(個人)」を照らすという意味を込めて「ここてらす」です。「平仮名だったら小さい子どももみんな読めるよね」とアドバイスもあり、ひらがなで表記をしています。
もともとスナックだったところを自分達の手で改装。タバコ臭が残っていたので、苦労しました。2019年の12月1日に開催したキックオフイベントには15〜20人ほどの方が来てくれました。
ーご飯の時間があるということですが、ご飯は運営の方が作っていますか?
はい、運営のメンバーで作っています。その日にきた寄付の食材をみて、調理をします。決まったメニューはなく、当日に決めることが多いですね。
ー寄付はどのように集めていますか?
食材の寄付はフードバンクや、フードドライブという仕組みを利用しています。
フードバンクは企業の試供品や賞味期限が近いもの、傷ついたものを預かり、子ども食堂や団体・個人に再分配する仕組みです。
フードドライブはファミリーマートさんが行っている取り組みです。コンビニに置いてあるボックスに、利用者が保存の長い食材やいらないものをいれてくれるので、私たちのように必要としている人がもらいに行きます。他には近所の農家さんに野菜をいただくこともありますね。
お金の寄付としては「ここてらす」の活動に賛同してくれる方に、賛助会員の登録をお願いしています。一般社団法人にすることで会員制度が導入できるようになりました。